ホ茶クラブ

青山えむ

第1話 ホ茶倶楽部

 ホちゃクラブの事を知ったのは、友人のみなみが常連客だったから。


 ホ茶とは……お茶を間違って言ったのかと思った。ホストとお茶。

 要はホストクラブとカフェが合体したようなお店。営業時間は午後一時から夜九時まで。仕事帰りや休日に行く人が多いそう。

 私は色々な事情で女子力アップがしたいと南に言ったら「ホ茶クラブがいい」と強く勧められた。


 土曜日、南に連れられてホ茶クラブに来た。

 重厚な扉に【ホ茶倶楽部クラブ】と書かれていた。一部ガラス張りで店内が少し見える。ちょっとお洒落しゃれなカフェにしか見えない。

 初めての私はお店の説明を受けた。

 指名は永久指名制で、一度指名をした人を変えることは出来ない。

 指名を決める前のお試しが来店四回まで。五回目の来店時は必ず指名を決める事。


 南は指名ホストがいるけれど私は初めてなのでランダムに一人付けて貰いスタッフに案内されて席に着いた。


「メニューをお選びになってお待ちください」

 丁寧ていねいに頭を下げてスタッフは立ち去る。

 メニューの表紙がベロア素材で高級感。紅茶や珈琲コーヒー、緑茶等が名前を連ねる。

 フードはお茶のお供、ケーキや和菓子やチョコレートのジャンルに分かれている。

 私は紅茶とチョコレートを注文した。

 待っている間に店内を見渡してみた。席の間隔はそんなに近くない。奥には大人数で座れる席もある。

 ホストは私服だったのでカップルがお茶をしているようにしか見えない。


「初めまして本日こちらに付かせて頂きます、神栖かみすと申します」

 頭の上から声がした。やばいイケメン。スタイルの良い体に白いシャツと黒いジャケットををサラリと着こなしている。

 夜の店の照明じゃない、昼の自然光しぜんこうで見ても綺麗な顔をしていた。端正たんせいな顔立ちをしているけれどどこか色っぽい。


「失礼します」

 私が見惚みとれていると神栖くんは椅子に座った。座り方まで綺麗。


「お名前聞いてもよろしいですか?」

小川おがわ夢子ゆめこです。初めてなので何もわかりませんがどうぞよろしくです」

 私はあわてて挨拶をした。


「夢子さんか、素敵な名前ですね。今日は僕にどんな夢を見せてくれるのかな。あっ、僕が夢を見せなきゃなんですけどね」

 口元に手を当てそんな事を言う神栖くんは王子様みたいだった。


「失礼します、ご注文の紅茶です。おれしてよろしいでしょうか」

 スタッフがティーポットからカップへ紅茶を注ぐ。上品な香りが一気に広がる。

 メリーゴーランドと花が描かれているぷっくりとふくらんだカップは夢の国を思わせる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る