第5話 残り5時間。





「ここに居たか。探したぞ妹よ」

「げっ、お兄様。何の御用ですか?」


 メイドの次は同じ城に住む王女であり、俺の妹でもあるマブシイーネの元にやって来た。

 部屋に入ると妹は俺を嫌そうな顔で見ている。


「実は前にお前に話していた婚約破棄についてなんだが……アレは無しになった」

「それは本当ですの!?」


 そう言った瞬間にマブシイーネは目を輝かせて俺には近づいて来た。


「あぁ。やっぱり幼馴染みでもあるエリシアを捨てて別の女を選ぶなんて間違っていると気づいたんだ」

「そうでしょ!いや〜、やっとお兄様が正気に戻ってマブシイーネは嬉しいですわ」


 私の方が正しかったと自慢げに頷く妹。

 兄をバカにしたその態度が気に入らないが、懐かしい気持ちになる。

 未来ではマブシイーネは俺が死ぬ原因の革命を煽った女だからな。


 俺とエリシアが幼馴染みの婚約者なので、付き合いの長いマブシイーネはエリシアを実の姉のように慕っていた。

 それはもう、エリシアお姉ちゃんと呼んで後ろをベッタリだ。

 そして、俺がエリシアの事を邪魔で嫌いだと妹に言うと態度が急変。兄に対して冷たい奴になった。


 エリシアを罠に嵌めて婚約破棄をした後は烈火の如く怒り狂い、兄妹仲は絶縁状態。

 同じ城にいて顔を合わせるのも嫌になった俺は国王になってすぐにマブシイーネを他国に嫁に出した。

 ウザい妹が消えて清々した俺だったが、王家の信頼が失墜した時にコイツは自分こそが正当な王位継承者だと名乗り上げたのだ。

 おかげで国民は盛り上がって、ついでにマブシイーネが嫁いだ国からの資金援助もあって革命は大成功という流れだった。

 そんな不安の種を少しでも和らげておくために俺は兄妹仲の改善を図る。


「今日のパーティーでその事を正直に話すからお前は黙って聞いておくんだぞ」

「承知しましたわお兄様」


 機嫌が元に戻って笑顔で言う事を素直に聞いてくれるマブシイーネ。

 そうだ、昔はこうやって俺とも仲が良かったというのに俺のせいで……。

 もうあんな兄妹で殺し合うような未来にはさせないからな。


 さて、次。


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