第7話「ランチタイム」


 昼休み。それは学校生活の中でも、学生にとってはかなり重要な時間帯だ。


 この時間をどう過ごすかによって、その生徒の学内ヒエラルキーが決定してしまうと言ってもいいだろう。


 ある生徒は自分のクラス内でグループを作りお弁当を食べたり、またある先生はクラスの垣根を超えて学食などでまとまって食べたりもする。


 そういう生徒は往々にして『陽の者』=『陽キャ』として、高いクラス地位を手に入れているのだろう。


 しかし、それはとは正反対に一緒にご飯を食べる相手のいない『陰の者』=『陰キャ』みたいなクラス地位の低い生徒もいるわけで――、



「まぁ、俺のことなんですけどね……」



 そういうわけで、俺は学食の購買で昼飯用のパンなどを買い終わり自分の教室へ戻る所だ。

 ああ、もちろんぼっち飯ですが?


 そもそも、ご飯は皆で食べた方が美味しいと言うがあれは真っ赤な嘘だ。いや、だってそうだろう?

 そうじゃなきゃ、全世界の一人暮らししている奴らは毎日まずい飯を一人でせっせと自炊していることになっちまう。


 川口先生とか、可哀そうだろうが!


 なので飯の美味さに人数は比例しない。むしろ、大人数になるほど気を使わなきゃいけなくなるから飯がまずくなるまである。

 目上の人より先に箸に手を付けちゃいけません! とか、お酒を注がなきゃいけなかったり、唐揚げにレモンをかけたら死刑とか、社会に出ると学校では習わない隠しルールがあるのだ。


 多分、陽キャの奴らが好んでグループを作って飯を食うのはそう言う隠しルールを今のうちに勉強しているのだろう。


 だとしたら、やっぱり『友達』というのは面倒な存在だ。


 そんな風に飯の時間でさえ気を使わないといけないとか、休めるわけがないだろう。

 つまり、要約すると『ぼっち飯』が最強なのである。


 だって、皆『孤独のグ●メ』とか大好きじゃん。


「一人で食う飯は美味いから、あんなシーズン8とかまで続くんだよな」


 そんなことを思いながら、教室への帰り道で演劇部の部室を通り過ぎた俺はあることに気付いてしまった。


「……ん? 今、部室の電気付いてなかった?」


 普段、使用していない教室と言うのは基本的に鍵がかけられているはずだ。

 それは演劇部の部室も例外ではなく、演劇部の場合は部長の黒川が職員室から鍵を取ってきて鍵の管理をしているはずなのだが……。


「つまり、昼休みに部室が開いているのはおかしいんだよなぁ……」


 薄々、犯人とその犯行動機には察しがついているのだが、念のために俺は部室のドアを軽く開けて中の様子をそっと確認した。


「…………」


 そして、俺が見たのは――、



「今日はアスパラのベーコン巻きをおかずにしてお弁当を作ってきたの♪ え、食べたい? ダーメよ。だって、これは私のお弁当なんですもの! もう、プー太郎さんってば食いしん坊さんね? フフフ……♪」



 クマのぬいぐるみに話かけながら、お弁当を食べる黒川の姿だった。


「や、やべぇものを見てしまった……」







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 YouTubeにて執筆風景を配信中!



【今回の作業アーカイブ】

https://www.youtube.com/watch?v=kOQQsq9TjAQ&list=PLKAk6rC5z4mR39sRFDtVHqVqlPwt0WcHB&index=6



 詳しくは出井愛のYouTubeチャンネルで!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る