栗色の一枚

南野月奈

モデルの彼女

 同じ写真部である彼女が歩を進めるたびゆらゆら揺れる栗色、高い位置で結ったポニーテール、秋の日差しがその絹糸のように美しい髪に反射して一緒に揺れる。

その輝きは人形のように美しすぎてある種生々しさのようなものが抜け落ちたように見える。


「コレ、山って言っていいのかな?ほとんど丘じゃない?というか見る人が見ればわかるんじゃないの?古墳跡だって」

「一応木もあるし、大丈夫だよ撮り方さえ工夫すれば、ゲーム部に頼まれた素材はフリーゲームの止め絵用なんだし編集もするでしょ」

「そ、じゃあ、何枚か撮って終わらせよう、自分達の風景写真撮る時間が欲しいの」


 彼女自身も写真部の一員であり、自分で写真を撮る身として部費の穴埋めだとしてもモデルを引き受けたのは本意ではなかったらしい。


「何枚かじゃ無理、いっぱい撮ってゲーム部の人たちに選んでもらうんだ」

「めんどくさ~い」


 後ろ姿や逆光の顔がわからない角度になるように彼女をモデルにゲームの立ち絵素材用の写真を撮る。


「終わったよ」

「やっと終わった~!じゃあ一緒にツーショッ撮ろう!自撮りで」

「いや、あの、俺はいいよ」

「なに照れてんの?ただの記念写真だよ?はい、ピース!」

「わかったって」


 二人で収まった写真は満面の笑みを浮かべた彼女とぎこちない笑顔の俺、写真から冷たさしか感じられなかったモデルの彼女とは別人のようだった。



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栗色の一枚 南野月奈 @tukina

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