第28話 願いの代価。その4

「話は終わったよな?いい加減、美羽を元の姿に戻してくれ」

「あぁ、すっかり忘れていたよ。でもね、元の姿に戻すとは約束していないよ。無条件で王子達を元の世界に戻してやると約束はしたけどね」


「何!?」


それじゃ、このまま連れて帰れというのか?

金色の髪の少女の姿のままで、元の世界で暮らせというのか?

美羽は魔女の魔法にかかったままで、意見も言えない状態なんだぞ!?


「魔女様、どうか美羽を元の姿に戻してくださいませ」

「嫌だね。どうしてもというなら、代価を払いな」


「そんな……」


代価を支払う以外に、魔法を解く方法は無いのか?

やっと美羽と帰れると思ったのに、一難去ってまた一難かよ。



「そうまでして俺と暮らしたいのか?」


「はい、そうです。手にしたチャンスは逃したくありませんから」


「そんなに愛されていたなんて、俺も罪深いな……」


そんな冗談を言ってはいたが、心の中では絶望という風が吹いていた。

元の世界へ戻って一緒に暮らすならば、美羽は姿を変えたまま。

美羽を元の姿に戻すと、俺はもう別世界の住人になり、一緒に暮らせなくなる。

どっちにしても、俺は美羽を失うことになる。

俺は、美羽をこれ以上犠牲には出来ない。

美羽の人生に比べたら、俺のささやかな夢を諦めよう。

自分の身をかけてまで、俺に力を戻すことを願ってくれたのだから。



「わかった、俺がこの家で暮らしてやる。だから、美羽を元の姿に戻してくれ」


「クロノ様、正気ですか!?美羽の為に、犠牲になるのですか!?美羽、貴女が誘拐なんてされるから……クロノ様がこんな事に……」


「俺の為だ。だから、美羽を責めるな」


そう、俺の為だ。

ここまでしてくれた恩を返すだけだ。

決して、犠牲ではない。


「そうかい、やっと決心したかい。これは嬉しいね」

「魔女様、おめでとうございます」


魔女とのサファイアは、満面の笑みで喜んでいる。

しかし、隣にいる金色の髪の少女……美羽は、無言で俯いていた。



発言は出来ずとも、美羽の気持ちは読み取れた。

自分の為にこんな事をして欲しくないと言いたいのだろう。


「美羽、心配するな。この魔女の願いを叶えるのだから、俺に害するような事はして来ないだろう」


「本当ですか?クロノ様に無理強いとかしませんか?」

「当たり前だ。提示した代価は、王子がこの家に私と住むことなのだ。他に望んだらいけないんだよ」


「そうなのですか?もしそれ以上望んだら……?」

「契約違反で、約束した事が破棄される」


ローズが俺の分まで魔女に質問してくれた。

約束事が破棄されるのならば、やはり無理強いはしてこないな……。

隙を見て何か策を練って脱出するかと考えたいところだが、魔女はヘマをしないだろう。

無駄な努力をせず、俺はここで快適な生活をさせてもらうとするか。

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