「高校」という大人が夢見るファンタジー・幻想空間

「面白いキャラクター」という事について、少し気を付けるべき事もあります。

それは、大賞作品の書評を見ても「キャラ自体は、あまり面白そうじゃないな…」

…って感じてしまう事。まあ、それを書いてる人の文章があまり上手くない可能性もあるけど。


作者の年齢について、若い人を特別優遇するつもりはなく、むしろ幅広い年代の人からの応募を求めていると言いますが、

少なくとも「キャラクター」については、明らかに若いキャラを優遇してますね。

例えば高校生とか。しかし、扱いが難しいと言うか、出版社サイドが何考えてるんだか、まだいまいち見えない。高校生主人公を仮に優遇しているとしても、だからといてライトノベルを求めているのではないのは確実。もうちょっと純文学に近い要素も持った、高校生主人公の話、みたいな。


まあ、私は現代社会においての「高校」って、好きじゃないんですけどね。

スポーツやってる子の中のトップクラスの選手などの例外を除いて、知識も能力も住む世界も中途半端で、面白くない。金や職がないから行動も制限されるし、女子は身体的には子供を産めるけど「産んだらアウト」みたいなわけのわからない制限が課される世代。

しかも、それがその年代に固有の性質っていうよりは、現代日本社会っていうすごい狭い枠組みの大人達が何の目的もなくただ何となく作り上げた3年間の枠組みなんですよね。

現在の高校生を見下してるとかそういう事じゃなくて、私が高校生の頃もきっとそうだったはずだと思います。

要は、現代の大人が用意している「高校」という制限された舞台が、非常に面白くない場所に思えるという事です。

高校生が面白くないんじゃなくて、高校が面白くない。


中学生だと、まだちょっと子供らしさが残ると思うんですが。


考察すると、「ちょっと大人向けの児童書」を求めているのかもしれませんね。

相手もはっきり言葉で言わないから推測するしかないんですけど、「高校生くらいの年齢の子の視点の『ファンタジー的な現実世界』」を求めてるのかもしれない。

要するに、現実世界を、普通の大人の視点から見た作品は、求めていない。

この可能性は、ありますね。

それくらいの年齢の子が見ている、「必ずしも現実を直視してはいない世界」ですね。その意味で、ファンタジックと言いますか。

その視点を求めているのであれば、高校生主人公が優遇されるのは理解可能です。

児童書であれば、キャラの年齢が小学生とかになりますが、それだと本当の子供向けになってしまうので、その姿が「高校生」という事はあり得ます。

大学生だと、もう垢がついてるっていう考え方かな;

本来は大学生も大学生らしい視点というものを持つと思うんですけど、最近の大学生は肝心の学業を疎かにするから、キャラにするとどうもクズになっちゃうみたいなところだと思います。

実際の所は、大学生の一番良いところを多くの人は描写できないし理解もできない、当の大学生一般までも実際劣化しているものだから「つまらないキャラ」のたまり場みたいになってしまっている。そんな所でしょう。最近の大人というのも馬鹿が多くて学問とかそういうものを軽視する傾向がありますから、そういう人達が、本来学問的な視点や教養を持つという事が一番の強みである大学生を面白いキャラとして描写できるはずがないのです。

せいぜい、東大だのなんだの、そういう権威を肩書きに被せるための小道具くらいにしか捉えていない、あるいはそのようにしか捉える事ができない大人は非常に多いと思います。だから、大学生というのは主人公キャラとしては非常に難しい部類のものなのでしょう。


さてそうなると、いつまでも子供ではいられないんだけど、汚い大人の視点にまみれたくない最後のファンタジックな世界観の砦が「高校生」なのだと、そう捉えると、再び見えてくるものがあるように思います。

そこには大学のような面倒くさい学問から自由だし(思考放棄でもありますが)、会社勤めからも自由だ(働かなくていい(!)という理想郷)!

そこは、一般的な大人の目から見ればしょうもない3年間、大人が無駄に作り上げた虚構の舞台という事にもなりますが、

汚い大人の視点の世界から逃れて「ファンタジックな夢の大人の世界」を構築する為には欠かせない舞台なのかもしれません。


高校生という設定で、個人的に数少ない好感の持てるところは、恋愛や友情に関して、相手の肩書とか裕福さが影響しにくいというところです。

大学生だとランク付けが発生しますし、カネを持ってるかどうかも影響し始める。社会人になれば、職業なんて身分みたいなものですよ。士農工商っていう身分制度だって、職業で分けてるわけでしょ。

で、そういう汚いのがなくて、「高校生」という夢のような「同じ身分」のものとで恋愛や友情を育めるという点では、私は「高校生」という肩書のキャラに好感を持ち得ます。

もちろん、そこまで深堀して「高校生」という事にこだわって書いてる人って、ほとんどいないだろうと思いますけど…。


それで、そこまで考察すると、主人公が高校生でないとアウトかというと、そうではなくて要は「まだ汚れていない若者の独自の視点から見た世界」が構築されていればよいのではないか…とも推測できます。

そういう意味では、いまどき珍しい純真な大学生なんかは、意外と求められているキャラなのではないかと想像もできます。

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