夜の珈琲

【ルビ芸】をテーマにした小説

「右舷より接近する物体アリ――――来ますッ！」

　ズゴーンッ！　と激しい音と共に揺れる船内。姿勢維持用支柱（セーフティ・ポール）にしがみついてそれをやり過ごす。

「何が来た！？」

「解析中（アナライジング）――――合致（ビンゴ）、反応類型（タイプ）：晴天（ブルー）！　太陽の騎士団（ゼウスマキナ）の爆針（フレアシード）です！」

「チッ、侵食体（イデアの波）か……独立性保護結界（ウーシアプロテクタ）、出力上昇（あげ）！　呑まれるんじゃねぇぞ！！」

　再びの爆発音。それは爆針（フレアシード）が真装融合界（イデアの波）を放った音であり、これから真装（イデア）を独立性保護結界（ウーシアプロテクタ）が守っていることで行き場の拡散されたエネルギーによるものである。

　まさか第二十三星間航行路（マッターホルン運河）にまで太陽の騎士団（ゼウスマキナ）の尖兵（仕込み）があるとは予想だにしていなかった。こうなれば、いくら煮込み田楽の（オーディンズ）飛空戦艦（ホットポット）といえどもいつまでもつかわからない。

　可及的速やかに第二十三星間航行路（マッターホルン運河）を抜け、無風の孤島（スイス）に一時的な保護を求めなければならない。

「備蓄殿源（バッファ）はどれくらいある」

「四足エンジン（ローカル）で大体4地月（ベースレンジ）くらいは……あー、イケますね。八足共振（フルスロットル）まで入れてカっ飛ばせば（エクスプレス）で無風の孤島（スイス）領空までは」

「なら、やれ（ゴー）」

「了解ッ！　全船員（ワルキューレ）に告ぐ！　武装（エインヘリャル）格納、本艦はこれより全速力（エクスプレス）で第二十三星間航行路（マッターホルン運河）を駆け抜ける！　総員、早急に体勢に着け！」