【ソシャゲ】をテーマにした小説

「”雫”2杯ちょーだい」

「あいよー」


超国家特務組織<カルネアデス>一階、職員用酒場。

新人エクスキュータの私は先輩に連れられてここに来ていた。


「”雫”ってなんですか?」

「知らないの? 黄金蜥蜴の雫。結晶化した黄金蜥蜴ゴールデン・デミドラコの尿なんだけどね」

「うえっ、おしっこ?」

「これが栄養価高くてね、筋トレ後に良く効くんだ。軽く砕けばお薬みたいなもんだから、一粒飲んどくきなって。これ飲まないとエクスキュータなんてやってけないよー?」


お通しがごとく席に出されたそれは、小指の爪程度の大きさの黄金色の結晶体で、照明をキラキラと反射して綺麗にも見える。しかし言われてみればなるほど確かに、これはおしっこの色だった。

言われた通り砕いてから、勇気を出して口に入れてみれば、思っていたより臭みはないし、味はお酒に合いそうなしょっぱさで、おしっこであるという情報さえ気にしなければ問題ないくらいだった。


「で、えーっと、君の支給装備はなんだっけ?」

青精サファイアの槍ですね」

「青精かぁ~~~……」

「え、なんですかその溜息は」

「いやね、必要な素材を鍛冶部門に持ってけば打ち直してくれるんだけどさ。青精の場合はアレ倒さないとなのよ」

「アレって?」

海青魔サファギン。気持ち悪いんだよねぇ~あれ……」


海青魔サファギン。海に潜む生物で、魚の頭に魚の鱗を全身纏いながら、しかし人間のような二足歩行をするという奇怪なものである。


「同期の青精使いはアレよ、深海青魔アビシャル・サファギンののどちんこを集めてたからさ」

「うあ……」

「あと槍なら、虹彩鳥ロックの爪も必要だね。こっちは気持ち悪くないけど強いよ」

「先輩はどうなんです?」

「私は黄精シトリンだからね。戴冠鶏コカトリス……自体は気が楽なんだけど」

「けど? けど、なんです?」

「アレの巣には毒大蛙グロックがいるんだよ……なんか共生関係にあるらしくてさ。猛毒大蛙リャグロックなんて頭が二つあるんだよ? 二つも! 気持ち悪すぎない?」


毒大蛙グロックというのは全身から有毒な体液を分泌している蛙で、しかも人間を丸呑みできるほどの大きさ、そしてなにより卵が見つかっていないため生殖方法が不明という奇妙な生き物である。

主に沼地に生息しており、戴冠鶏コカトリスの巣の周囲に毒大蛙グロックがいる、というよりは毒大蛙グロックの巣に戴冠鶏コカトリスが卵を産みに来る、という方が正確である。


「ぐえっ」

「まぁ紫精アメジストの素材になるから恩売れるんだけどさぁ……」

「う~~~、気持ち悪い話はやめましょうよ。お酒が不味くなっちゃいますよ」

「うん、そうだね、そうだそうだ。たいしょー! 新入りのお祝いだから深紅泡酒ルージュビール!」

「おっ、今日からお前も先輩か? 奢ってやんな奢ってやんな、マケてやらないけど」

「え~~~、ケチー」


なんだかんだで奢ってもらえた深紅泡酒ルージュビールは今まで飲んだことのない酒だったが、ここでは祝いの一杯といえばこれらしく、とても美味だった。


後でこの酒が深紅であるのは半屍人グールの血が原料になっているからであることを知り、思わずえずいたことは言うまでもあるまい。

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