ロビーから


部屋の電話が鳴った。ロビーからだった。チェックインを対応した女の声。山下さまからお電話が入っております。お繋ぎいたしますか。電話の予定も、山下という知り合いもない。そう言うとやや沈黙があって、女が息をのみ、部屋番号を間違えておりました、大変申し訳ございません、と謝罪する。構いませんと答える。受話器を置く。ベッドに横になる。電話の前となにも変わっていない部屋が、深い静謐の底に沈んでいるように感じられる。誰かの電話を待つ心地になっている。


         222 characters , 14:20

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

半透明の散文 しゃくさんしん @tanibayashi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ