私、24歳OLです! 男の子飼ってます!

皮以祝

第1話 でんしゃにゆられてかえりましょ~

 今、私、痴漢されてます。

 いえ、勘違いではないですよ?

 誰かの鞄が当たってるだけーとか、手だと思ったら大根だったーとか、そういうのじゃないです。

 明らかに、人間の手が、私のお尻を撫でてます。


「……」

「はぁ、はぁ」


 後ろを見れば、まぁ、案の定、おっさん。

 暇なんですかね。

 元気ですね~。


「おい! あんた何やってんだ!」

「な、なにを!?」


 手が離れた。

 誰かが気づいて止めたみたい。


「大丈夫でしたか?」

「あー、大丈夫です」


 もう降りる駅なので。

 後数秒だったから放っておこうと思ったのに。

 さっさと降りる。


「ありがとうございましたー」

「え、ちょっと!」


 なにか言おうとしてたみたいだけど、電車の扉が閉じて発車する。

 さようなら~。



###



「24歳永野明日香! ただいまかえりましたよーっと」


 ポチポチと電気をつけて。


「ごはんごはん~」


 今日は半額シールの張られた惣菜が残ってた。

 しかもカツ。

 この時間はいっつも無くなってるのに。らっきー。


「ごはんもあっためてー」


 買ってきたサラダをお皿に移してっと。

 ケトルケトルけっとるけっとる……

 お茶漬けの素。


「まぜまぜ~」


 サラダにカツにご飯。

 お湯でふやかしてぐちゃぐちゃにする。

 お茶漬けの素も入れてっと。


「かんせい!」


 うん、まずそう!

 カツの衣も剥げてるし。

 でも、逆に?

 逆に美味しそうに見える感じかも?


「うん。おっけー」


 最後に青汁少し入れて。

 あっつい。

 器の端をもって急ぐ。


「あ」


 スプーン忘れた。

 あっついから、一旦置いて、スプーン差して……


「おっけーおっけー」


 リビングを出て、一つの部屋の扉を開ける。

 中には一人の男の子。


「餌だよー」

「……」


 反応なし。


「はいたべてー」


 少しすくって目の前に出す。

 無視。


「あーあっついかー」


 やけどしたら嫌だもんね。

 わかるわかる。

 次の日に変な感じになるもんね。


「ふぅー! はい」

「……」


 また無視。

 仕方ない。

 片手で口を開けて、中に入れた。


「たべてー」

「……」


 吐き出した。


「んー……」

「……」

「それ!」

「っ!?」

「あーごめんごめん」


 無理やり入れたら咳き込んじゃった。

 しゃーないしゃーない。


「ばいばーい」

「……」


 部屋を出て。

 私もご飯にしよっと。



###



「これー朝の餌ねー」

「……」


 会社行かなきゃ!



###



「ここ、桁間違ってる」

「あ、すっ、すいません」

「謝ってる時間があるならさっさと直しなさい」

「はい……」


 紙を突っ返す。

 つっかえないな~。

 何回似たミスすんのって。

 まあ、やさしいやさしい私様は、許してあげますよっ!

 あ~、帰りたいな~。



###



「はい。……はい。では、その方向でお願いします。はい。よろしくお願いいたします」


 取引先との電話を切る。

 おーしまいっ!


「お疲れさまでした」


 ぴゅー!



###



「たーらーいーまー」


 今日は昨日より早いからお惣菜の種類も多かった。

 混ぜて混ぜてと。


「餌……」


 部屋が汚れて、男の子が寝っ転がってる。

 ……


「こら!」

「っ」


 ぱちん。

 ぱちん?

 どっちかと言えばバシンかな。


「っ……」

「あー泣かない泣かない」


 ほっぺをおさえて涙目でこちらを見えてくるので拭いてあげる。


「まっててね。すぐ戻ってくるから」



###



「ん~……」


 おはようございます。

 カーテン空けて、太陽を見る。

 目がちかちかする。


 でも、なんか健康にいいって聞いたことあるし。

 見る必要はなかったんだっけ?

 ま、いっか。


「おなかすいた~」


 ご飯食べて用意しないと。

 今日はお休み!

 でも行くとこがある。


 パンを焼いて、お茶漬け?

 まあ、混ぜて、青汁入れて。


「餌ー」

「っ」

「あー、ほどいちゃだめだよー」


 暴れるから縛ってたけど。


「はい、食べる」

「っ」

「はやくたべてねー」

「……」


 部屋を出る。

 わたしもごはんー。

 食パンに卵割って焼く。

 終わり。


「いただきまーす」


 さっさと食べて外出る準備しないと。



###



「いくよー」

「……」

「逃げてもダメー」


 手首のあたりを掴んで引く。


「はいいくよー」



###



「いい天気だねー」

「……」


 近くだから歩いてるけど周りから見られてるなー。

 ま、しゃあないしゃあない。

 だって髪ボサボサで服とかもボロボロだもん。

 でも、人の好みはそれぞれだから。

 私にどうこうできないしねー。

 今、私が何か芸をすれば一躍時の人じゃん。

 ま、ないけど、芸。



###



「では、優しくしてあげてください」

「はは……わかっていますよ」


 目の前には禿げたおっさん。


「この人のいうこと聞いてね」

「……」

「いいね?」


 無視かー。

 ま、いっか。


「では」


 何処で時間潰そうかなー。

 4時間くらいだもんなー。


「ん?」


 子供の声が聞こえると思ったら公園かー。

 暇だしねー。


 お、結構広いじゃん。

 私の小さい頃はー、どうだっけ?

 わすれた。

 年かなー?


 ジャングルジムとかなつかしー。

 誰も使ってないし久しぶりに登ろっかなー。

 あ、使用禁止にされてる。

 えー、危険だから禁止ってかわいそー。

 そこらへんに落ちてる石とかの方が危険でしょ。

 転んだ時に頭に当たったら死んじゃうよ?


 でも、禁止されてるなら仕方ないか。

 ブランコしよー。

 あ、ちょっと濡れてる。

 まー、いっか。


「よいしょー」


 あー、この感覚久しぶりぃ……

 なついなつい。


 でも、いい年した大人がブランコって。

 仕事辞めたのに仕事行ってる風な人みたいな?

 あ、でもあれってブランコに座ってるだけか。

 ベンチ座れよ。


「……」

「ん?」


 小さい女の子が近くにいた。

 全然気づかなかった。


「どうしたのー?」

「ぶらんこ……」

「んー?」


 隣空いてるけど。

 あー、なるなる。


「おいでー」

「あっ!」


 抱えてる人形ごと膝にのせる。

 ちっちゃいとこげないもんねー。

 ……



###



 女の子は女の人に連れてかれた。

 母親かな。

 まだ、子供はたくさん。

 男の子たちが走り回ってる。

 小さいころからゲームってニュースで言ってたような?

 デマだったのかー。


 んー。

 あきたけん。

 「けん」ってどこの方言かな?



###



「おー」


 これがタピオカ?

 ちょっと前に若い子たちの中で、はやってたって言う。

 今は、なんだっけ?

 どっかのおっさんが、次はバナナジュースとか言ってたか。

 ばかか。

 若い子はカロリー求めてんじゃないの?


 バナナダイエットって、あれ?

 ぼでぃーびるだーってバナナ食べるんじゃなかった?

 ん?

 どっちだろ。


 ま、今はタピオカ。

 タピるタピる。

 タピるって上の飲み物だけ飲んだ時もタピるなのかな?

 なんかの芋でできてるんだっけ。

 キャッサバ?

 キャッサバるでいいんじゃない?

 もしくは芋る。


 あー、焼きいも食べたい。

 どっかで買おっかな。



###



「あ」


 あの音が聞こえてきた。

 そこらへんのスーパーで売ってるかと思ったんだけど。

 音の聞こえてくる方に近づいてく。


「一つください」

「らっしゃい。一つ250円だよ」


 焼き芋を受け取った。

 値段的にどうなんだろ。

 こういう、屋台?から買ったことないからわかんない。

 でも、まー、高くてもね。

 雰囲気代?

 許せる許せる。


「あっついからきをつけてな」

「ありがとうございます」


 あちち。



###



「はい」


 ハゲオジ……イケオジみたいでやだな。

 はげおっさんから、うけとるものうけとって。


「いくよー」

「……」



###



「どうだったー?」

「……」


 焼き芋たべよー。

 もぐもぐ。

 少し冷めて、ちょうどいいかんじ。

 わ、とろとろしてる。


「たべるー?」

「……」


 どろどろの部分に指入れて。


「そい」

「っ」


 口に突っ込んで舌につけた。


「たべてねー」

「……」

「よしよし」


 いいんだっけ?

 ま、いっか。


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る