第15話

 1年間のことを喋りながら、新幹線の時間を過ごした。

 自分は、ずっと可もなく不可もない日々だった。官邸に頼まれて、内偵をいくつかこなしただけ。未来が見えるので、そこまで難しい仕事でもなかった。


「わたしの未来とかも、見えるんですか?」


「いえ。見えるのは私個人が関連した未来だけです。なので、自分から事件に首突っ込んでいくような感じで内偵をした1年でした」


「へえ。そうなんだ。全然知らなかった」


「あなたとは、関連していないから、未来は見えません」


「元恋人なのに」


「恋人のときは、未来、見えてましたよ。あなたが海外に行くところまで、でしたけど」


「そうなんだ。なんかずるい」


「あなたのほうは?」


 彼女。急に、口だけを動かして喋りはじめる。


 彼女は、1年間ずっと、歌に明け暮れる日々だったらしい。

 ようやく1年経って仕事が軌道に乗ったから、街に指輪を返しに行くのだと、声なき声が伝えてくる。


「そうですか」


 彼女。にこっと笑った。そこには、最初の切なげな面影は消えて、いつもの、彼女の明るさがあった。

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