13

 24作目の、リリースが終わった。

 ひさしぶりの、お休み。ここまでずっと、唄い通し。自分の夢に向き合う日々だった。


 ようやく。

 街に向かう決心がついた。


 彼が守った街。

 彼との思い出が詰まって。


 彼が死んだと知ったときは、二度とあの街には戻れないと、思った。それほどの喪失感だったのに、1年も時が経てば。その喪失感にすら慣れてしまう。


 婚約指輪。ようやく、捨てる気になったから。彼のいた街に返そうと思っていた。指輪を、あるべきところに戻すための、最後の街への旅。


 新幹線を待つ。


 近くで、若者がわたしの歌について雑談している。そういう知らないひとの思い出の中にも、わたしの曲が息づいている。それが、なんだか嬉しかった。彼のために唄った歌が、彼を飛び越えて、いろんなところに思い出を繋げている。


 携帯端末。みんなからの連絡。おやすみ中に、会う約束。返信しておかないと。街に帰ったら、どれぐらい滞在するのか、まだ分からなかった。自分の心に整理がつくまでと思っていたけど。もう、ほとんど整理はついている。


 新幹線。


 乗った。


 向かいの席。


 彼がいる。

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