第3話

 彼女。駅前のビル。プラネタリウム前。

 立ち尽くしている。走るだけ走って、それでも彼女の体力は、ありあまっている。


途架みちか


 呼ばれた彼女が、こちらを振り向く。

 走ってきて。抱きつく。そのままの勢いで、口を動かす。せわしなく。


「待って待って。そんな勢いで喋ろうとしたら」


 彼女が、ちょっとだけ血を吐いた。


「ゆっくり息をして」


 彼女は、喋れない。声を出せない。無理に喋ろうとすると、喉の奥のほうで声を出す部分のところが擦れて、少しだけ出血してしまう。


 彼女の背中をさすって、ゆっくりと、落ち着かせる。


 彼女。歌が上手かった。話すのではなく、歌詞に沿って発生することはできる。感情や伝えたいことを声に乗せて伝えようとすることができない。


 彼女は、神様があんまり喋るなと注意していると言っていた。ただの思い込みで、実際は感情と声帯を繋げる心の部分に不具合がある。それでも、神様のせいにするほうが、都合がよかった。


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