第6話  私のお仕事

 ぺし!!


「痛ぇなぁ、そのフェティーってさぁ、いっつも言葉より手ぇ早くないっ!?」


 人の机の上で胡坐あぐらを掻いているサムは、ビンタされた太腿ふとももをさも痛そうに擦りながらゆっくりと降りていく。


「そんなに強く叩いてないし、それに誰がこの机の上で胡坐を掻いていろと言ったの?」


 何を言ってんだか……。

 私は腰に手を当て仁王立ち状態で以ってサムを睨みながら問い質す。


「…………」


 バツの悪そうな表情はするけれどれもサムは何も答えない。

 それに業を煮やした私はドンっと大きく一歩踏み込んで更に問い掛ける。


 逃がさないよ。


「――――んで、学校はどうしたの? まさかだなんて聞いてないわよっ」

「…………」


 都合が悪くなったら直ぐ黙る。

 これは出会った頃よりサムの悪い癖だ。

 でも黙ったままでこのフェティー様お母様が何もしないと思うてかっっ!!


 私はそっと心の中で自分自身へ呪文を唱える。


  小さく上昇せよパルウァエ・ベンナ


 ふわ~り


 私自身の身体が静かに上昇する。

 そう丁度サムの顔のど真ん前辺りへ私は自身の身体を維持すれば、両手を伸ばし彼の頬肉ほおにくをむんずと、そしてしっかり強く掴んでやるっっ!!

 ふん、年下の癖に背丈だけはひょろひょろと高いんだもん。

 もう180cmはあるんじゃないかな?


 に気づいたサムはめっちゃ慌てるけれども結局何も逃げ出せないまま、それにバタバタと暴れたとしても頬肉たとしてもだけは絶対に放してやらないっ。


ほ、ほえあけはそ、それだけはっ、ゆうひて許してっ、おえがいあかやお願いだから〰〰〰〰っっ⁉⁇」


 あっと言う間に涙目となりめっちゃ悲壮な表情でサムは懇願する。

 一方私はと言えばそれはもう得も言われぬ快感……いやいや、これはれっきとしたですっ。


 でもぉ~これって楽しいからさ、表情筋が緩みそう……いやいや緩んじゃうっ。


「ふふん、許す訳ないわよぉ、サム。さあ覚悟しなさいっっ。た―てた―てよーこよーこまぁる書いて……ちょ~ん――――っっ!!!」


 ふっふっふ、思いっきり頬肉を引っ張ってから放す!!


「んぎゃあああああああ¥○▲□¥〰〰〰〰っっ!!!!」


 きっとこの建物中へ響いたのに違いないくらい、サムは涙をピピっと飛ばしながら叫んでいた。


 あははは~マンガかよっ。

 ああ、愉しいねぇ。


 サムは真っ赤に腫れただろう頬肉を優しく何度も擦りながら、その反面涙目で私の事をじっと恨めしそうに睨んでいる。

 だけどそんな事なんて知った事かっ。

 学校をサボる方が悪いのだ!!


こえこれ……めちゃくちゃじんじんするんだよ。よくもこんな酷い事が出来るもんだね。お、お姫様で賢者マギ様なのに……」

「ふんっ、こんな事くらい他の誰でもやっているわよ」


 ふわふわと浮かんだまま私は自分の席へとそのまま座る。


 そう、何を隠そう私はこのラインフェルトの当代賢者マギ……それが私の大切なお仕事なのである。

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