猫と犬の物語

猫は嘘を知らない

犬だって知らない

なぜならば

彼らには物語がないから


あるがままよりももっと狭く小さい

生きていく大切さだけを知っている

そのことが美しい

けれど悲しい


彼らにとって雨は

濡れるものでしかなく

五月の薔薇に光る雨上がりの雫など

目にとめる術も持たないから


月に遠吠えする犬は

その訳を知らず悲しい

己の声が遠く響いて

どこかの眠れぬ少年の

暗部と共鳴して鳴いていることを

その野良犬は死ぬまで思いもしないから

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