アリとキリギリス

Dr.パンツ

プロローグ

ここは、アリとキリギリスが住む国。

この国は海で囲まれており、北の島、東の島、西の島、南の島の4つの島から成り立っている。海の向こう側には、キリギリスに似たバッタが住んでいる国や、アリたちが恐れるカブトムシが住んでいる大きな国がある。

アリとキリギリスの国は、もともとアリたちが住んでいた。

遠い昔のある夏の日、どこからか大勢のキリギリスがアリたちが住む国にやって来た。

お人好しのアリたちは、ヴァイオリンを弾き、歌を歌って暮らすキリギリスたちを追い払う事なく一緒に暮らし始めた。

しかし、冬に備えてエサを蓄えようとせっせと働くアリに対して、キリギリスたちは音楽を奏でてて楽しそうに歌うばかりであった。

ひとりのアリが訪ねた。

「キリギリスさん、今は夏だから働かなくても沢山エサがあっていいけど、冬になると食べるものがなくなり飢え死にしちゃうよ」

キリギリスは歌うように答えました。

「心配は無用だよ、アリさん。せっかくこの世に生まれてきたんだ。ボクたちは楽しく生きて行きたい。アリさんたちみたいに毎日毎日働いてばかりじゃぁ人生つまらないよ」

アリの心配をよそに、仲間たちと楽しく音楽を奏でて歌い続けるキリギリスたち。

そんなキリギリスたちを横目に、困った表情を浮かべながらもアリたちは冬に向けてエサを蓄えようと今日も働き続けた。

季節は夏から秋へと、そしてついに冬が来た。

外は寒くて、歌を歌っている場合ではないキリギリスたちは、どこか暖かい場所で過ごそうとアリたちが住む家を訪ねた。

アリたちは、キリギリスたちが歌っていた夏、冬に備えて家を作りエサを蓄えていたのだ。

「アリさん、外は寒くて凍えそうだ。そしてお腹も空いた。どうか、君たちと一緒に暖かいお家で過ごさてくれないか。そして、少しでいいので食料を分けておくれ」

アリたちは、家の窓から外で凍えるキリギリスを眺めながらこう言った。

「もし君が、これからはボクたちと一緒に働いて暮らすと約束してくれるなら、ボクたちの家へ招き食べ物もあげましょう。約束、してくれますか?」

アリの暖かい言葉に、キリギリスたちは涙を流して働くことを約束した。

こうして、キリギリスは4つの島からなるアリの国で、一緒に働き平和に暮らすようになった。


ーーキリギリスのミツが現れるまでは…。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る