相談

智恵実からの連絡

コンテストが終わり私は家でゆっくりしていた。

プルル、プルルとスマホが鳴る。誰だろうとスマホを見ると智恵実から電話がかかってきた。

智恵実から?どうしたのかなと電話に出た。

あ、もしもし花蓮久しぶり。今大丈夫?

大丈夫だよ。七川蓮実先生、をお電話なんでしょうか?

ちょっと花蓮、やめてよ。智恵実でいいよ。ちょっと花蓮に相談しようかなと思って電話したの。

相談ってなに?私でよければ聞くよ。

今ね、次の作品に向けて話を考えていてアイデアが思いつかなくて花蓮だったらどんな小説読みたい?

どんな小説か〜。ひとことに小説って言っても恋愛ものやファンタジー、ミステリー小説とかあるからな〜。私は恋愛小説読みたいかな。

なるほどね。ねぇ花蓮、七川蓮実の由来って覚えている?

覚えているよ。小学生の時に部活が全然なくて部活を作ろうってなってライトノベルクラブ作ってね。

顧問の先生に意見をもらいつつ2人で主人公を考えて男の子がたしか西園寺龍真で女の子が下水流華凛っていう子で龍真がいい人かなと思いきやとんでもない人だったって話だよね。懐かしいな〜。あの短編小説を作った時に2人の名前をとって七川蓮実って付けたけれどその名前を今でも使ってくれているって思うと有難いなって思うよ。

花蓮が頑張っているから私も頑張ろうって鼓舞するためにも七川蓮実の名前で書こうって思ってさ。私は小説家、花蓮はカフェを開くとそれぞれ夢は違うけれどもお互いに夢を叶えようと思っていてさ。

話が逸れてゴメンね。すぐに思い浮かばないから1回部活の人にも聞いてみるからまた連絡するね。LINEの方がいい?また電話かけた方がいい?

じゃあまた電話かけてくれる?花蓮の話を聞いて恋愛小説書こうかなって思うから聞いてもらっていい?恋愛経験でも創作でもいいからさ。

うん、分かったよ。忙しいと思うから聞くね。

恋愛か〜、中学生の時に1度付き合っていたが浮気されて闇に葬るっていたが連絡取っているわけでも顔を合わすわけでもないから関係ないと思い寝床についた。

翌日、莉菜と電車に乗って学校に向かっていた。

調理科の子にも聞けば多くの意見を聞けると考えたが花蓮好きな人いるのか、どんな人が好きなのかずっと答えるまで聞かれそうと恐れ、教室では話さず調理部の人たちだけでいいかなと思った。

放課後、莉菜とともに調理室に向かうと部長の紗綾から今日はみんなでキャラメルプリンを作ろうとなって1人ずつキャラメルプリンを作った。

プリンを食べている時に私はみんなにきいた。

ちょっと相談があってみんなって恋愛経験ある?

紗綾は藪から棒にどうしたの?花蓮、好きな人出来たの?えっ、どんな人知りたい。

残念だけど私の話じゃあなくてこの前、コンテストで七川蓮実にあったじゃん。そこで恋愛小説書こうと思っているみたくて恋愛経験や創作でもいいから意見を伺いたいって言っていてさ。

香苗はな〜んだ花蓮の恋愛話聞けると思ったのにな。ホントに好きな人とか気になる人が出来たら私たち、いつでも相談に乗るからね。

もう分かったってば。とりあえず考えよう。

美波はよくある恋愛は運動部のキャプテンとマネージャーが付き合う話とかあるけれどそれだとどこでも見れるしってなるよね。

莉菜は何かある?

そうだね……。今の運動部のキャプテンとマネージャーが付き合っていうのはだいたいが同級生か男の子が歳上のことが多いでしょ?だから男の子が入った部活の先輩に一目惚れして部活のこと以外は話せずずっと目で追いかけているって感じ。

後は小学生の男の子が近所に住む中学生の高嶺の花と呼ばれる女の子に恋をして男の子はその女の子を見ると恥ずかしくて顔を赤くなって何も話せずにいるの。でもその女の子は男の子が目を合わしてくれなくて困りつつも弟のようにいつも気にかけているうちに女の子の方が歳下の男の子を気になって好きになっちゃう話とか。どうかな?

紗綾はよくそこまで話を考えられるね。もう莉菜がそのまま小説を書けそうな感じだね。今言ったのは現実であった話?それとも創作?

莉菜はもちろん創作だよ。でもさ、歳下の男の子がお姉ちゃんって擦り寄ってれたら絶対かわいいよね。まるで子犬みたいで。撫でたくなるよね。

みんなでそれはかわいい。歳下ってだけでとかわいいのに話せずずっと目で追いかけたりずっと追いかけられたらもうかわいがりたくなるよね。こんな創作とか妄想だけど恋バナするの楽しいね。

花蓮、好きな人が出来たらちゃんと伝えてね。

なんで私だけなの?紗綾、香苗、美波、莉菜も好きな人出来たらちゃんと教えてよ。いつも私ばかり言うの。そんなにいじって酷いな。

香苗はゴメンゴメン、みんなそれだけ花蓮のことをかわいくてしょうがなくて。参考までに芽衣にも聞いてみたら?私たちよりも華の女子大生だから恋愛とかもしているかもよ。

そうだね香苗の言う通り1度芽衣に聞いてみるよ。

私は家に帰り芽衣に電話をかけた。

もしもし芽衣?花蓮だけど今大丈夫?

うん大丈夫だよ。突然電話かけてきて何かあった?

ちょっと芽衣に相談したくて電話してさ。

どうしたの花蓮?恋の悩みかな?悩める子羊ちゃんだな。いつでも恋愛相談乗ってあげるよ。

なんでみんな私をいじるかな?相談って言っているだけで誰も私が好きな人いるなんて言ってないよ。

ところで花蓮、相談ってなに?

友達で高校生作家の七川蓮実っていう子がいて恋愛小説書きたいけれどアイデアが思いつかなくて私のところに連絡来てさ。部活でも話をしていくつか案が出たけれど香苗から華の女子大生でもある芽衣なら恋愛経験あると思ってさ。

そういうことね。華の女子大生だけどそんな浮いた話なくてね。創作でもよかったら話すよ。

友達も創作でもいいって言っていたから是非とも。

部活動で学校帰りに運動部のキャプテンとマネージャーが夕陽の中で手を繋いで歩くっていうのはどうかな?

芽衣、ありがとう。とても参考になったよと電話を切った。

とりあえず今まで挙がった案を智恵実に伝えようと電話をかけた。あれ?話し中か、また後で電話かけよう。その間先にお風呂に入ろうかな。

お風呂から上がると智恵実から電話がかかってきていてタイミングが悪かったなとおもった。午後11時、さすがに夜も遅く申し訳ないと思いつつも智恵実に電話をかけた。

もしもし花蓮だけど夜遅くゴメンね。寝てた?

ううん大丈夫だよ。さっき編集者の人と会っていて電話に出れなくてゴメンね。折り返し電話ありがとう。花蓮が電話かけてきたってことはみんなに聞いてくれたってことだよね?早く聞かせてよ。

案として挙がったのは運動部のキャプテンとマネージャーが付き合っていて部活帰りに夕陽の中で手を繋いで歩いて帰るっていうのが1つ。もう1つは歳下の小学生の男の子が近所に住む中学生の高嶺の花といわれる女の子に恋をしているけれど男の子はその女の子に会っても恥ずかしくて目をあわせることが出来ずにいて女の子は弟のように気にかけていくうちに高嶺の花と呼ばれる女の子の方が歳下の男の子のことを好きになる話とかかな。

食い気味で智恵実は話を聞いていた。それでその後その2人は付き合うの?女の子は付き合わないの?なんて言っていた?ねぇ、花蓮教えてよ。

あくまでも案だからそこからどうするかは決めてないよ。続きは智恵実が決めて。何か参考になれば嬉しいな。

もうめっちゃ参考になったよ。前に江戸川ドーム行った時に小学生くらいの男の子いたよね?花蓮のことをお姉ちゃんって言って慕っていてかわいかったね。大智君でしょ?花蓮お姉ちゃんって懐いてくれてまるでかわいい弟みたいな感じだよ。案を出してあげたから小説かけたら10冊七川蓮実のサインを入れて私の家に送ってね。莉菜にも智恵実元気しているって伝えるね。

いくらでも書いて送ってあげるよ。もう日にち超えちゃったね。花蓮も忙しいのに案を出してくれてありがとう。参考になったよ。じゃあまた電話かけるね。

私たちが出した案がどのように形になるのか楽しみで仕方なかった。


出張訪問

私と莉菜はいつものように調理室に向かっていた。

すると市本先生がいてみんな集まったら話があると私たちに告げた。

学級委員を務めている紗綾をみんなで待っている間、私と莉菜、香苗、美波の4人で喋っていた。

15分後、紗綾が遅れて調理室にやって来た。すみません委員長の仕事で遅くなりました、

市本先生は石川さんが来たことだしある話がきていると話した。まず1つに地元の中学に調理部があって是非とも合同交流会として週に1回中学生と一緒に部活をやる。行う場所は交互の調理室でする。

もう1つは近くの小学校で来月の土曜日に授業参観があるから親子給食があるからそこで年に1回みんなで献立を考えてその決まったデザートをみんなに作ってもらおう。

今のところ2つの依頼が来ているけれどどうする?

美波は小学生の時にお楽しみ給食が出た時は嬉しかったな。紗綾も香苗も嬉しくなかった?

紗綾、香苗ともメニューを考える日が近づくとみんなでワクワクしていたよね。花蓮と莉菜もそうだったでしょ?

私はそんな洒落たことなかったよ。私と莉菜の住む下村市は小学校も中学校も1校しかなくて1クラスしかないような街だからね。今はどうか分からないけれどね。だから自分たちで考えた給食が出るって羨ましいし小学生にとっては楽しみだなって感じたよ。小学生や中学生と交流して私たちも学ぶことあると思うからみんなやろうよ。2つとも。

紗綾は市本先生、両方の話を受けます。是非とも交流させていただきたいです。

そうなったら先生が学校に連絡入れておくね。

数日後、那古野総合高校から程近い那古野北中学校が決まった。


中学校訪問

私たちは那古野北中学校の調理室に行くと中学生たちはあの那古野総合高校の方々に会える日が来るとは思いませんでした。この前のコンテストみんなで全国大会をテレビで観ていて感動していました。

私はこちらこそテレビで観てくれてありがとう。中学生の皆さんと一緒にやって楽しかったな、来てもらってよかったなと思ってもらえたら嬉しいです。一緒に何か1つのものを作れたらいいなと思いますが今日は何を作りますか?

顧問の先生はそうですね、最近はクッキーからプリンをよく作っているのでどちらかだと生徒たちも作りやすいかなと思います。

紗綾はじゃあそれならクッキー作りましょう。幸い那古野総合高校にはクッキーの名人ともいえる七瀬花蓮がいるので1人ずつ付いてやりますが花蓮には人数分作ってもらうようにするので皆さん是非とも1度クッキー食べてみてください。

私は紗綾にちょんちょんして話があると言った。全員分作るのは全然いいけれどそれならみんな全員分作ればよくない?どうして私だけなの?

そんなの決まっているじゃん。この高校でクッキーを作らせたら花蓮の右に出る人はいないからだよ。

せっかくなら私だけじゃなくてみんな人数分作ろうよ。私も中学生の作るクッキー食べたいし。中学生のみんなに先に言っておくけれどこのお姉さん名人とか言っているけれど盛っているだけだから。みんなと同じ材料で作るからそんな差異はないよ。

高校生8人、中学生8人なのでそれぞれ1人付いてクッキーを作った。

私の隣に付いた女の子は手際がよく当時中学だった時の私よりも作るのが早くてすごいなぁと感心していた。クッキーを焼いて出来上がるのを待った。

みんなでクッキーを1つずつ食べていて中学生のクッキー美味しいねと高校生の私たちは口を揃えて言っていた。それに対して中学生はみんなそんなことないですよ。高校生の皆さんのクッキーどれも美味しくて学ぶところが沢山あります。

梨紗はそんなことないよ。実際に全国大会、お菓子部門に出たのはさっき名人って言った花蓮と香苗の2人でスイーツ部門は莉菜と紗綾の2人、全国大会に出たのは8人中4人で私を含め大会には出場していないから大したことないよ。

那古野総合高校の皆さんレベルが高いってことですね。その上謙虚な姿、こんな高校生になりたいです。

美紅はそうやって言ってくれるの嬉しいね。是非また機会があれば一緒にしましょうと私たちは中学校を後にした。帰りに莉菜が次は小学校のスイーツ作りだね。小学生のみんな喜んでくれたら嬉しいね。すると紗綾のスマホが鳴った。

石川です。いまから学校に戻った方がよろしいですか?このままみんなで戻ります。

香苗は今の電話誰から?学校に戻るって言っていたよね?

市本先生から電話で話があるから戻ってきてって。至急ではないらしいけど高校までそんなに遠くないから戻りますって言っちゃった。よかった?

美波は思わずよかったも何も市本先生に戻るって言ったのなら学校に行かなきゃダメじゃん。普通私たちに聞いてからことを進めない?

美波、ゴメン。じゃあかけ直して断る?

いや、そんなことしなくていいよ。とりあえずみんなで学校に戻ろう。私は紗綾って意外とそそかしいところね。才色兼備なお姉さんって思っていたからそういう一面があるってかわいいね。すると紗綾も寝顔や背中ちょんちょんして小声で話しかける花蓮には勝てないけれどねと言い合いをしている間に学校に着いた。みんなで話ってなんだろうねと調理室に入った。

みんなお疲れ様。疲れているところゴメンね。依頼のあった那古野中部小学校の先生から電話があって当日作るだけでなくてクラスに入って一緒に給食を食べないかって打診があってさ。どうする?

梨紗は授業参観で親子給食なのに高校生の私たちが入って大丈夫ですかね?浮かないですか?

美紅は向こうの先生から打診があったのならいいと思うよ。華の女子校生が行けばみんな喜ぶと思うよ。みんなで普通自分ののとを華の女子校生とか言わないでしょと総ツッコミをしていた。

紗綾はせっかく食べないかって打診してくれているのなら私たちも給食いただこうよ。小学生と食べたら気持ちだけでも小学生に戻れるかもよ。市本先生、給食いただきますとお伝えください。お願いします。

一旦学校に戻り給食のスイーツ作りと親子給食に混ざって食べることが決まった。

後日給食のメニュー一覧がファックスで送られてきて市本先生から1人ずつ渡された。


小学生訪問

土曜日の午前9時、1度高校に集まってから那古野中部小学校に向かった。私たちは特に弟や妹いるわけではないが教室を見て回っていた。授業での問題に元気に答えていて家族にいいところを見せようと健気な姿がかわいいなと横目で見ていた。教頭先生に案内されて私たちは調理室に向かった。

今回のデザートはプリンか。美華は小学生の時、よくプリン食べていたな。給食の日にプリンが出るって日は嬉しかったな。きっとお楽しみ給食考える時楽しくて仕方なかったと思うな。どうせなら小学生の子たちをもっと喜ばせたいと思う。

紗綾は美華、そうは言うけれどどうするの?

少し手間がかかるけれどプリンにハートを描くのはどうかな?手間だからやっぱりイヤ?

紗綾はプリンにハート描くってかわいい。特に女の子は喜んでくれそう。でもさ、時間はあるの?

みんなでかけ時計を見た。時刻は午前10時を指していて私はちょっと教頭先生に聞いてくるからみんなはプリン作りに取りかかって。

早歩きで職員室に行き教頭先生を探した。教頭先生に何時までに給食室に持っていけばよろしいですか?4時間目が終わるのが12時半なので1時間前、いや遅くとも正午までには給食室に届けてください。

その話を聞いて私は早歩きで再び調理室に戻った。

みんな、遅くても正午までには給食室に届けてくださいって言われたよ。現状どんな感じ?

莉菜はまだ30個しか作れてないよ。1個ハート描いたプリン作ってみたから花蓮見てくれる?

私は莉菜に言われたとおりプリンを見た。プリンに描かれたプリンを見てかわいい〜1枚写真撮ろう。

花蓮、写真撮ってないで手伝ってよと香苗に怒られた。写真撮ったやつグループLINEに送っておいて。

生徒600人、両親2人と学校の先生たちと私たち余りも含めて1500個を作ろうとしていた。

残り1時間となり後50個となっていてみんなでラストスパートとして作り午前11時55分、なんとか目標の1500個のプリンを完成させて給食室に届けた。

私も含めてやっと終わったね。梨紗は作り終わったけれど今から片付けする?それとも給食食べてからにする?

紗綾は先に片付けてから私たちも給食を食べよう。あくまでも作ったのは私たちなのに片付けは小学生にさせるのはおかしいよ。みんな疲れていると思うけれど片付けて元に戻して教室で食べよう。

私は手を挙げて1つ気になったけれど誰がどこのクラスに行くの?全員が同じクラスに押しかけたら迷惑にならない?

たしかに花蓮の言うとおりだね。片付け終わったら1回職員室に行って先生たちに聞こうか。

私たちは準備、調理、片付けの全てを終えて全員で職員室に向かった。教頭先生から8人いらっしゃるから1年生から6年生まで1人ずつで後のお2人はどこかの学年で別のクラスに行くようにお願いします。

ねぇ、紗綾どうやって決める?教頭先生に無作為に決めてもらうっていうのもどうかなって思うからここは私たちでパッと決めようよ。早くしないと授業終わって給食の準備にも成るだろうし……。

そうだね。じゃあ1年生から3年生は私、紗綾、美波で4年生から6年生は梨紗、美華、美紅で花蓮は5年生の別のクラス、莉菜は6年生の別のクラスで行こう。後は教頭先生の指示にそれぞれ従って。

私は5年2組に行くことになった。

給食を運ぶ小学生を見てみんな目が輝いていた。女の子はプリンにハート描かれていてかわいい〜。このクラスではプリンが3個多く配分されていて先に食べ終わった男の子、女の子がプリンをかけてじゃんけん争奪戦が行われていた。その姿を見て今も昔もじゃんけんで勝ったらもらえるというシステムは変わっていないな。男の子3人、女の子1人がプリン争奪戦に参戦していた。最後、残り1つをかけて男の子と女の子の戦いの末、女の子は負けた。

男の子は残り1つを勝ち取りガッツポーズ、その傍らで女の子は涙を堪えて自分の席に戻ろうとしていた。その姿を見て私はプリン美味しかった?よかったらお姉ちゃんのプリンあげるからさ。

見た目かわいいし、とっても美味しかったよ。でもさ、このプリンお姉ちゃんのでしょ?そんな人のものをもらってまで食べるなんて出来ないよ。

このプリン作ったのお姉ちゃんだからいつでも食べられるから食べて。美味しいって言って食べてくれたことの方が嬉しいから受け取って。

うん、じゃあプリンもらうね。お姉ちゃんありがとう。小学生の笑顔を見て私も嬉しかった。

給食が食べ終わり担任の先生からせっかくならみんなで写真を取りましょうということになり私はスマホを渡して小学生たちと一緒に写真を撮った。

私はクラスを出て教頭先生に挨拶をして小学校の外で話していた。紗綾はみんなクラスどうだったかとそれぞれ話していた。花蓮のクラスはどうだった?

私の行ったクラスは女の子がプリンかわいい〜って盛り上がっていてプリン争奪戦が行われていてじゃんけんで勝ったらもらえるというシステムは今も昔も変わらないなって思ったよ。最後に男の子と女の子がじゃんけんの戦いになって男の子が勝ってね。男の子がガッツポーズ、女の子に涙を堪えていたから私のプリンをあげたよ。

紗綾はさすが花蓮、優しいね。

だって私たちが作ったプリンだしいつでも食べれるじゃん。それに美味しいって食べてくれてまた食べたいと思ってくれた方が嬉しいし寧ろそのために私たちは調理部として活動しているわけでしょ?

拍手喝采で莉菜は今の言葉、感動した。言われてみれば自分が食べて美味しいっていうのも大事だけれど人に食べてもらって喜んでもらうことが私たちの意義だなって改めて気づいたよ。ありがとう花蓮。

帰りの会が終わった小学生たちが続々と出てきた。

すると1人の女の子が私のもとにやって来た。クラスに来てくれたお姉ちゃん〜と私を呼んでいた。

あ、さっきのプリンをあげた女の子だ。何か言い忘れたのかなとしばらく待っていた。

お姉ちゃん、さっきはプリンをくれてありがとう。

私はどういたしまして。お姉ちゃんもプリンを2つも笑顔で美味しいって食べてくれて嬉しかったよ。これからも色んな人に笑顔で食べてくれるように頑張るね。

バイバイ〜、また機会があればまたお姉ちゃんのプリン食べたいなと言い残して女の子は校門を出た。

香苗はさっきの女の子笑顔でホントにおいしかったのかね。スゴい花蓮感謝していたね。なんか私まで感動して涙が出てきそう。食べる人に笑顔を届けるという初心に戻れた気がするね。さっきの女の子も言っていたけれどまた機会があればまたお楽しみ給食のデザート作れたらいいねと喋りつつ私たちも小学校の校門を出た。


交換条件

ある日私は電車に乗っているとスマホが鳴った。誰だろうと思いLINEを見ると智恵実からで今日は予定ないから時間ある時に電話しようときていた。智恵実が電話したいってなんだろう?小説書くのに何か悩んでいるのかなと思いつつ下村駅を降りた。

晩御飯を食べてお風呂に入りいつでも寝れるようにしておいた方がいいかなと思っていた。次の日の用意を済ませて智恵実に電話をかけた。

もしもし花蓮、忙しいのにゴメンね。

七川蓮実先生どうされましたか?何か行き詰まっているなら私でよければいつでも相談に乗りますよ。

ちょっとやめてよ花蓮。智恵実でいいよってこの前も話したじゃん。若干いじっているよね。

智恵実ゴメンね。それでわざわざ電話しようって何かあった?小説での悩み?

小説の方は花蓮の話を聞いてたいぶ進展しているよ。花蓮に相談があって電話したって感じかな。

智恵実が私に相談って相当だね。何かあった?

そんなこと?って言われるかもしれないけれどこの前江戸川ドームに応援に行ったの覚えている?

莉菜と3人で写真撮った時でしょ?もちろん覚えているよ。智恵実の学校の制服かわいいって莉菜や他の調理部の子たちと話をしていてさ。

それで優勝した那古野総合高校の人と仲良くしているねって話になってお菓子部門の1年生の子と仲がいいのって聞かれて花蓮と中学校の時からの仲良しですって言ったら是非とも1度花蓮のクッキーを食べてみたいって話になってさ。それで作って私の家に送ってもらうこととか出来ないかな?

クッキーなら冷めてもいいけど何枚必要なの?

実はその話が調理部だけじゃなくて学校中に広まったみたいで200枚焼いてもらうこと出来ないかな?

別に問題ないよ。でもクッキー200枚焼くの智恵実が思っている以上に大変でさ……。

下村に戻ってきた時には花蓮の奴隷として働きます。何でも言ってください。

智恵実そんなことしなくていいよ。その代わりに私から条件出してもいいかな?

条件?私に出来ることであれば条件呑むよ。

この前電話でサイン入り小説を10冊って話していたけれど100冊でお願い。それと……。

それと?まだ何かあるの?花蓮、欲張りだな。

それで次の小説ってどんな感じ?断片的でもいいから私に教えてよ。内容はまだ決まっていないならタイトルだけでも教えて。これが条件、どうする?

ホントはこういうの出版する前に言うのはどうかなって思うけれど昔からの仲でもある花蓮なら仕方ないかな。絶対に他言しないでね。

もちろん、絶対にしないって約束する。

タイトルは「星空の煌(きめらき)」

「内容は主人公の男の子が中学1年生で2つ歳上の容姿端麗でみんなから高嶺の花って呼ばれている2人がいてね、男の子は歳上の女の子とは小学校のときから通学団で一緒だからみんなでいる時は喋れるけれど2人になったら喋れないシャイな男の子で女の子はどうして2人の時は喋ってくれないのか聞くけれど男の子は恥ずかしくて顔を真っ赤にして何も喋れない。女の子は男の子のことをかわいい弟のように気にかけていて好きだけれど男の子は女の子が好きだってことが分かっていなくて一緒に帰っていてももどかしい気持ちで2人はいる」

今言えるのはここまでかな。

星空の煌ってキレイなタイトルだね。聞いていて私はもどかしい気持ちになった。

ねぇ、この後その男の子と女の子はどうなるの?智恵実の中では展開決まっているの?

だから言えるのはここまでだって。展開も決まっていなければ男の子と女の子の名前もまだ考えていなくてさ。

もう早く読みたい。私も智恵実に負けないように頑張らなきゃ。微力だけどいつも応援しているよ。

ありがとう。私も花蓮がお菓子作って全国大会に出場するって聞いて頑張っているなって奮起しているよ。

智恵実って何を考えて小説書いている?

どういうことか〜。自分が好きだから、拙(つたな)い小説かもしれないけれどお金を出して買ってくれる読者やお客さんのためかな。花蓮はどういうことを考えてお菓子やスイーツを作っている?

智恵実、よくぞ聞いてくれました。

この前ね、近くの小学校で親子給食それもお楽しみ給食で私たち調理部がデザートのプリンを作りに行ってさ。普通のプリン作るよりも手を加えようって 話になってプリンにハートを描いたらかわいいってなると思って私を含めて8人で1500個作ったよ。

花蓮、ちなみにそれって時間間に合ったの?

時間ギリギリで終わって片付けして私も含めてみんな疲労困憊(ひろうこんぱい)だったね。でもねいざ給食になったら大人も子供もみんな美味しそうにプリンを食べてくれて女の子はプリンかわいい〜って喜んでくれてさ。それがスゴく嬉しくて。

大人も子供も喜んでくれるってうれしいよね。

それにね、食べ終わった子たちが余ったプリンをかけてじゃんけん争奪戦が行われていてそこは今も昔も変わらないなって思っていてさ。プリン4つあって男の子3人、女の子1人いて最後に男の子1人と女の子1人の戦いになって男の子が勝ってあまりにも嬉しかったのか女の子の前でガッツポーズしていて女の子は涙を堪えて席に戻ろうとしていたよ。

プリンを勝ち取って嬉しいとはいえ女の子の前でガッツポーズするのはその男の子酷いと思うな。勝っても譲るぐらいの優しさほしいよね。それでその女の子はプリンを食べられなかったわけでしょ?なんかかわいそう。

私もそう思ってまだ食べていなかった自分のプリンを女の子に渡したよ。

えっ、なんで?それって元々花蓮の食べるはずのプリンだったわけでしょ?どうして渡したの?

その女の子はこのプリンは私のだから受け取れないって1度断ってさ。でもそのプリンを作ったのは私だし食べようと思えばいつでも食べられるじゃん。そんなことよりも見た目もあったかもしれないけれど笑顔で美味しいって食べてくれた上にもう1個食べたいと思ってじゃんけん争奪戦に参加してくれた姿を見てお姉ちゃんはいつでも食べられるからって渡したよ。女の子の嬉しそうな顔を見て私も嬉しくてさ。

相変わらず花蓮は優しいね。きっとその女の子はプリンもらったことも嬉しかったと思うけれどそれ以上に自分の分を分けてくれたってことの方が嬉しかったと思うよ。

私ね、改めて気がついたことがあってさ。今までは自分が楽しくお菓子やスイーツを作れたらよかったなって思うことが多かったけれど女の子や小学生の笑顔を見てただ作るだけでなく人の笑顔をみたい、人を幸せにするようなものを作りたいって思ってさ。

今の花蓮が言った人の笑顔、人の幸せにする。何よりも大事なことだね。自分が好きだからとか読者が待っているからっていうことも大事だけれど七川蓮実の小説を読んでこの小説よかったと笑顔や感動を与えられるものじゃないといけない。

これから自分がどうしていくべきなのか改めて分かったよ。なんかいつも花蓮からヒントをもらっているような気がするな。いつもありがとう。

私は何もしていないよ。智恵実が気づきこうしようって思ってくれたのならそれだけで嬉しいかな。

窓の外を見ると月が沈み太陽が顔を出そうとしていた。智恵実、8時間も喋ってゴメンね。

とんでもない。花蓮と喋ったことによって創造力がまた広がったよ。こっちこそ学校遠いのにゴメンね。じゃあ電話切るね。

LINE電話があってよかった。もしLINE電話がなくて普通に電話していたら電話代どうなるのかと思いつつ制服に着替えて家を出た。

いつものように莉菜と一緒に登校して私は電車の手すりに凭(もた)れて寝ていた。莉菜が駅に着いて起こしてくれたが一睡もせず智恵実と喋っていて参考になったと言ってもらえてよかったな、これからも智恵実とはそれぞれの道で頑張ろうと思った。

後日、私はクッキーを200枚焼いて智恵実の住所に送った。LINEでクッキー送ったけれどレンジで温めた方が美味しいからどうするかはみんなに任せるよと送信した。

数ヶ月後、私の家にダンボールの荷物が届いた。

宛先は智恵実からで中身はきっとサイン入りの星空の煌だろうなと思いダンボールを開けた。

私は小説の上にあった手紙が気になったが新作の小説が気になり後手紙を読もうと考えた。

小説を読み進めると感情移入して思わず涙が溢れた。小説を読み終わり手紙は何を書いているのか気になり封を開けた。

「花蓮へ

忙しいのに無理言ってクッキー200枚焼いてくれてありがとう。調理部や他の子達もからも好評で機会があればまた食べてみたいって言っていたよ。

この前、電話で花蓮が自分たちが楽しく作れればいいって言っていたけれど小学生みんなが食べる姿を見て人の笑顔をみたい、人の幸せになって欲しいっていう言葉には感銘を受けました。私は自分の書いた作品が売れて周りから天才高校作家といつしか自惚れていたかもしれない。自分やお金を払ってくれる読者のことを考えていなかったわけではないけれど心のどこかで売れたら印税が入るって邪念があったなと改めて実感しました。私も花蓮のように人に幸せな気持ちにしたい。読者に笑顔や感動を与えられる作品を作ろうと思いました。

電話で言ったことと重複するけれどいつも花蓮は私にヒントや答えをくれてホントに助かっています。これからも作家七川蓮実として茅川智恵実としてこれからも仲良くしてください。私にとって花蓮はかけがえのない友達です。これからも宜しくお願いいたします」

その手紙を読んで私は智恵実がそこまで思っていてくれていることに嬉しく思いつつ戦う舞台は違えど智恵実の頑張りを見て私も頑張らなきゃいけないと実感した。

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