コンテスト

2つの選択肢

私と莉菜は部活に行くと部長の紗綾が来ていなかった。莉菜は紗綾さんまだ来られていないみたいですがどうされたんですか?

廊下をすたすたの歩く音が聞こえて紗綾は部室に入った。みんな遅くなってゴメンね。ちょっとパソコン室であるものを印刷しようとしたら紙がつまってて中々印刷出来なくて印刷するのに時間かかって。

私はそれで印刷してきたあるものってなんですか?

みんな見てこれ?10月に行われるコンテストなにかあるか調べてみたらあったの。

「全国高校生お菓子・スイーツコンテスト」

このコンテストはお菓子部門とスイーツ部門がありどちらも県予選、地区大会を勝ち抜き全国大会出場となる。そして全国大会出場すればテレビ中継もされるみたいだよ。みんなどうかな?

私はお菓子部門、スイーツ部門それぞれ何人出られて何校が全国大会出場出来ますか?

それぞれ1人または2人で各地区2校で全国大会に出場出来るのは8校だよ。だから地区によっては同県から2校出ることも有り得るってことだね。

莉菜は出場する人ってどうやって決めますか?私や花蓮、先輩方も出場したいと思いますが。

紗綾はここは公平にジャンケンで勝った人がどっちの部門にエントリーして誰を選ぶか決めればいいんじゃないかな?それなら恨みっこなしだと思うよ。

すかさず私は反論した。紗綾さん、さすがにその決め方はどうなのかなって思います。公平にするならば全員で同じものを作って評価してもらった方がいいと思います。どちらもいいってなった場合、1人でも多く出られるように片方選び片方を譲るという形にしたらどうでしょうか?

それはいい案だと思うけれどその評価って誰にしてもらうの?私たち調理部だけでやったら公平じゃないと思うよ。他の第三者に食べてもらわないと。

そうなると多くの人と学校の許可がいりますよね……。何かいい方法ないですかね?

話し合いの末、顧問の市本先生に相談することにした。

紗綾はコンテストの紙を見せて出場する人を決めるために私たちがお菓子とスイーツを作ってそれを第三者に評価してもらいたいのですが何かいい案ありませんか?

そして1つの提案がされた。

この学校は部活が盛んだからその部活の人たちにアンケート取るっていうのはどうかな?どれだけの部活が協力してくれるか分からないけれど。分かり次第、部長の石川さんに伝えるね。

紗綾はありがとうございます、そうとなればみんな部室に戻るよ。

部室に戻り何を作るか考えていた。

色々な案が出てきてお菓子は塩バタークッキー、チーズケーキをそれぞれ作ることで一致した。

調理室の冷蔵庫を見るとチーズケーキの材料が無いため、みんなでクッキーを作るがいつもとは違いみんな真剣な眼差しで不穏な空気が流れた。

私はコンテストが始まると今と同じ、いや当日はもっと緊張して空気が重たいと思うから慣れておかなければと冷静を装いクッキーを作っていた。

それぞれの焼き上げてテーブルに並べた。それぞれのクッキーを食べているとサクッとしている、なんだかパサパサしている等コンテストに出場に向けて改善出来る所はどこなのか考えていた。

紗綾から明日はみんなでチーズケーキ作ろう。片付けをして莉菜と共に学校を出て家に向かった。

家でチーズケーキについて調べて短時間でより効率よく出来るのか考えていた。家の冷蔵庫を見るとチーズケーキを作る材料があった。始めてチーズケーキを作ることもありクッキングアプリを参考にして作ることにした。だが冷蔵庫で1日寝かすと書いてある。どれかないものかスマホをスクロールするだけで10分が経っていた。

やっと見つけた。1日寝かさなくても出来るチーズケーキ、私は早速取りかかった。

出来上がったチーズケーキを食べてみるとまずくはないが自分の思っていた味とは違いどんな感じでいくのか悩んでいた。そもそも何人分作ればいいのか分からないことには……。

夜に紗綾からグループLINEが届いた。

「人数が多くても大変だと思うから陸上部20人に賞味してもらうことになりました」

確かに分母が多ければ作るのが大変だけど沢山の人の意見も聞いた方がいいとも思うし、なんだか矛盾していると思っていた。

私は少ない時間だが土日で短時間でかつ美味しいチーズケーキを追求することを決めた。だがクッキーに時間を割かないわけにはいかない。時間がある限りチーズケーキとクッキーの時間と質を求めた。

月曜日の放課後、コンテストに出場するための戦いが始まった。みんな朝早くに学校に来てクッキーとチーズケーキを作り冷蔵庫で冷やしていた物を取り出した。

陸上部の人たちが調理室に入ってきてみんな自分の皿を取ってもらえるかドキドキしていた。部長の紗綾は自分の作ったチーズケーキとクッキーを気にしつつも誰のチーズケーキとクッキーが何人食べたのか数えた。

陸上部の20人は食べ終えてこれで失礼しますと調理室を後にした。

紗綾は黒板に書き始めた。

お菓子部門は七瀬花蓮、星野香苗

スイーツ部門は鈴本莉菜、石川紗綾

今回のコンテストはこの4人で行くことします。

緊張感が解き放たれて一気に疲れが出てみんな疲労困憊でこの日の部活は終えた。残ったクッキーとチーズケーキは持って帰る人も入れば冷蔵庫に冷やして別の日に食べる部員もいた。

莉菜は紗綾に改めて挨拶、私は香苗さんに挨拶をすると堅苦しいのは無しで名前で呼び合おうとなり私は香苗のLINEを追加した。

帰りに莉菜と一緒に電車に乗ったが2人とも疲れ切って口を開けて寝ていた。


きっかけ

コンテストで1年生の私と莉菜は3年生の紗綾、香苗と共に戦うことが決まった。私たちはコンテストが初めてのうえに先輩方を差しおいて出ていいのか悩んでいた。

部活で調理室に残っていたチーズケーキとクッキーを食べつつ私は話していた。

すると香苗に怒られた。

花蓮は他の人に認められてコンテストに出場するのに1年生だから同情するようなら必死に戦った仲間に失礼だよ。もっと自分に自信を持ちなよ。それじゃあコンテストに出ても勝てないよ。

花蓮のクッキー美味しいよ。花蓮ならきっと勝てるよ。不安そうな顔をしていた私を見て莉菜は手を握った。

大丈夫、花蓮のクッキーならコンテスト勝ち上がれる。私も不安だけど選ばれたからには一緒に頑張ろう。花蓮は1人じゃあないよ。私やここにいるみんな花蓮の味方だよ。もっと笑顔でいないと。

その話を聞いて莉菜、ありがとうと涙を流した。

部活後に香苗は花蓮が調理科や調理部に入ろうと思ったきっかけって何かあるの?

香苗、今日時間ある?私と莉菜の地元に来たら意味が分かるよ。莉菜は私の顔を見て不思議そうな顔をしていた。

香苗はせっかくなら紗綾も一緒に行かない?何かきっかけになるかもしれないよ。

私はそんな期待しないで、ビックリする程何もなくて1回行ったら2度目はいいかなって客観的に思うもん。

花蓮、長話してたら紗綾や香苗の帰りが遅くなっちゃうから早く行かないと。

4人で那古野総合公園駅で電車に乗って1時間かけて下村駅に向かった。平日の黄昏時、駅前は閑散としていた。香苗はここに花蓮が調理部に入ったルーツがあるのか。なんだろう……。

花蓮、平日の黄昏時に紗綾と香苗をどこに案内するの?あんまり暗くなると灯りが消えて危ないよ。

私はバスの時刻表を見た。次は10分後か、駅前に周遊バスが来るからそれに乗ろう。理由はそこで話すね。

バスを待っている間、紗綾は2人には申し訳ないけど下村に初めて来た。香苗は来たことある?

私も初めて来た。2人とも1時間かけてよく通っているね。

莉菜はそんなことないよ。実はこの駅が出来たの今年の2月でそれまで駅がなくて電車に乗るには隣街まで行かなきゃ行けなかったの。それは不便だってことで「陸の孤島」って呼ばれていて駅が出来るってなった時には街全体が盛り上がったよ。ねぇ花蓮。

駅出来るまでは那古野市に行くのに2時間かかっていてそれにこの下村市は小学校と中学校が1校ずつで高校はないから中学校卒業したら他の街まで通わなきゃ行けないからそれもあって電車が開通したと思うな。

香苗はもし電車が開通してなかったら2人はどうやって通うつもりだったの?

私と莉菜は顔を見合わせて言葉を失った。莉菜は寮のある私立に通っていたかな?花蓮はどうしてた?

う〜ん、元々私は那古野総合高校に行くことを決めていたから毎日パパかママに送り迎えお願いしていたかな。

あ、バスが来た。4人はバスに乗った。

この時間誰も乗っていないだろうと私は思っていたら案の定誰も乗っていなかった。よし、これなら気兼ねなく喋れる。

紗綾、香苗2人ともバスの外見てみて?ビックリする程何もないでしょ?商店街はシャッター街だしコンビニもここ数年で何軒か出来たけれど日にち超える時間には閉まるから真っ暗で「眠る街」って他の街から引越ししてきた人から揶揄(やゆ)されることもあるよ。

紗綾はいや、そんなことないよ。だって自然が豊かで子どもを育てるにはうってつけの環境じゃん。そんなことよりもここに来たら花蓮が調理部に入ったきっかけが分かるんでしょ?

そうだったね。理由は見ての通り私と莉菜の故郷でも下村市は何もなくて駅やコンビニもここ数年出来た感じで市町村合併のウワサを聞いてこの街を洋菓子屋で活性化させたい。甘い物が苦手な人でもここのケーキやクッキーなら少し遠くても食べたいって思ったのが1番の要因かな。合併が先なのか私がお店を出すのが先なのか分からないけどね。

周遊バスは再び下村駅に戻ってきた。

紗綾、香苗今日はわざわざこんな所まで来てくれてありがとう。じゃあまた明日会おうねと2人を見送った。

じゃあ莉菜、帰ろうか。

莉菜はちょっと公園で話そうと誘った。

花蓮はスゴいね。将来のことを考えていて調理科や調理部に入ったんだから。それに比べて私は調理がしてみたいから調理科に進んで部活を選んだのは同じ中学校の花蓮に誘われたから調理部に入ってさ。そもそもの志が違うなって改めて思ったよ。

私は別に莉菜が調理が好きだから調理科を選んだっていうのはいいと思うよ。それに調理室で私にコンテストに選ばれたからには一緒に頑張ろうって言ってくれたの莉菜じゃん。始めたきっかけが違うだけで目指す目標は同じだと思うよ。一緒にコンテスト勝ってアベック優勝しようよ。

花蓮……ありがとう。ずっと友達でいてね。

私は莉菜を抱きしめて頭を撫でると莉菜は笑顔で公園を後にした。


エントリー、県予選

部長の紗綾はパソコン室に行って応募用紙を印刷した。紗綾は調理室に行って私と莉菜、香苗は呼ばれた。応募用紙に名前を書いて監督印をもらわなくてはならず市本先生に監督印をもらいに行った。

市本先生は印鑑と県予選で行われる来週土曜日、那古野総合会館まで引率するから午前8時に集合して。

莉菜はスマホで間に合うか調べた。花蓮、始発で間に合うからこれで一緒に行こう。

それと顧問なのにあまり部活に顔を出せなくてゴメンなさい。言い訳する訳ではないけれど出張や次の授業の用意等忙しくて部長の石川さんに任せる形になってしまいすみません。

紗綾は先生大丈夫ですよ。火元を使う時には細心の注意を払っていますし先生のいない日な極力使わないようにしています。コンテスト当日、宜しくお願いします。後、応募用紙も提出お願いします。

市本先生は職員会議が入っていることもありこの日の部活はなく部員全員で近くのカフェに行くことにした。みんなでクッキーとチーズケーキを頼み参考になればなと思っていた。

土曜日、私と莉菜は始発の電車で学校に向かった。

私は莉菜の手を握った。いつも平然を装っているけれどホントはスゴく緊張して気にしちゃう性格なの。駅着くまでずっと手を握っていてもいい?

莉菜はうん、いいよ。でも花蓮が緊張や気にしやすいって意外だったな。私から見て花蓮は何でも出来て完璧な美少女だと思っていたからそういう所見られてよかった。

そんなことないよ。この前数学が分からなくて莉菜に聞いたじゃん。莉菜説明上手いなって感激したよ。

授業中に私の背中をちょんちょんつついて小声で聞いてきた時は花蓮かわいいなって思ったよ。中学校の時からもっと仲良くなっておけばよかったって今さらながら後悔しているよ。駅に着いたよ。

私は莉菜の言葉を聞いて中学校の間にもっと話しておけばよかったなと思っていた。

私たちが調理室に行くと市本先生、紗綾、香苗が既に来ていて部員8人で簡単なミーティングを行い会場の那古野総合会館に向かった。

莉菜は意地悪なことに歩いている時に私が電車で緊張して手を握っていたことを話していた。もう莉菜、みんなにそんなこと言わないでよ。恥ずかしいじゃんと顔を赤くした。

一同は花蓮かわいい〜、紗綾はもうこれは芽依さんに言わないと。芽依さんかわいい女の子大好きだから頭を撫でてハグすると思うよ。全国大会出場出来れば芽依さんにも見てもらえるよ。

私はその前にまず今日の県予選勝たないと全国大会に行けないので目の前の戦いに全力で挑もうと思います。

会場に着いたよ。出場する4人は調理室に向かい美波、美華、美紅、梨紗の4人は試合まで廊下の椅子に座っていて時間になったら4人の応援をしてあげてね。

私、香苗、莉菜、紗綾の4人は調理室に向かいつつどちらが作るか話していた。

紗綾は私たちがサポートするからこの試合は花蓮、莉菜がメインでやって。負けていいとは思っていないけれど経験を積むことが大事だからさ。

私と香苗、莉菜と紗綾はそれぞれどのようなクッキーとチーズケーキを作るか話し合っていた。見た目も重要な査定ポイントになるために色々と構想を練っていた。

那古野総合高校を含めて県予選は8校、この中で地区大会に出場出来るのはたったの2校ずつと決して容易(たやす)くはない。

午前10時、審査員の「開始」の言葉で始まった。

私と莉菜はクッキーとチーズケーキをそれぞれ作り始めて香苗と紗綾に焼き時間を見てもらったりボウルをかき混ぜてもらうなどしてもらい完成させた。

紗綾はチーズケーキを切り分けて皿にそれぞれ乗せた。クッキーは香苗、チーズケーキは紗綾が審査員の席に持っていった。

私は緊張して気が気じゃなかった。香苗は手を握り花蓮大丈夫だよ、心配なら私の手を握っていていいよ。不安で仕方なかったので香苗の手を握った。

集計結果が終わりホワイトボードに書き始めた。お菓子部門、スイーツ部門共に票が多く入っていて那古野総合高校は両部門で1位通過をした。

その結果に私は嬉しかったが他の学校の手前があるためホントは香苗、莉菜、紗綾を抱きしめたかった。

市本先生は4人とも地区大会進出おめでとう、疲れたと思うからみんなゆっくり休んでね。

紗綾の提案で近くのカフェに行こう。最近新しくカフェ出来たみたいだからさ。

歩いて10分、新しいカフェがどんな所なのかワクワクしながら歩いていた。お店に着くと丸いオレンジ色の佇まいにかわいいとみんなでお店を撮っていた。

お店の中に入り1番のオススメと書いてあったプリンを注文して席をくっつけて喋っていた。

莉菜は次の地区大会はどんな感じですか?

紗綾は地区大会について説明した。

私たちが住む愛知県は中部地方になるでしょ?中部地方は愛知県の他に岐阜県、静岡県、長野県、山梨県、石川県、富山県、新潟県の9県を勝ち上がった各2校が予選で9校が選ばれて決勝進出した2校が全国大会に出場出来る感じだよ。

私は会場ってどこになりますか?

それがまだ詳細が来ていないからまた連絡するね。それにしてもこのプリン美味しいね。シュークリーム食べるけどみんなどうする?

香苗はじゃあ人数分買ってきて。

みんなでシュークリームを食べて解散をした。


地区大会

県予選から3日後、紗綾からグループLINEが届いた。

地区大会は2週間後の日曜日、会場は長野県の丘弥文化会館で普段はミュージカルやオペラをするような会場で観客ありで行うみたい。お菓子部門はチョコレートでスイーツ部門はプリンと決まりました。

私はそうと決まればチョコレート作りに励んだ。

万人受けするものを作るべきなのか、そうではなく独創的なチョコレートを作るべきなのか考えていた。まずホワイトチョコレートを作ることにした。

パパとママに意見を聞くことにした。

ここをこうした方がいいとかあればどんどん意見が欲しい。いや寧ろどこを改善した方がいいと思う?

パパとママはこのチョコレート美味しいから下手にいじるよりもこのままの方がいいよ。

1度学校にホワイトチョコレートを持っていき感想を聞こうと考えた。

月曜日、調理部の人たちにホワイトチョコレートを持っていき食べてもらった。満場一致で美味しいと評判がよかった。

地区大会進出を決めた4人はチョコレートとプリン作りのイメージを考えていた。どんなチョコレートがいいのかどんなプリンが食べたくなるのかみんなで意見を出し合っていた。

莉菜はボソッとどうせなら地元の食材を使った方が宣伝にもなるしいいよね。

私はスマホで「愛知 果物 有名」と検索してみた。

いちじく、温州みかん、メロン等色々と出てきた。他にチョコレートやプリンに出来るものを探していると抹茶という意見が出た。

案が出た中でどれが1番美味しくて見た目がいいか試してみることにした。1日1つずつ食べてみて当日作るものを模索する日々が続く。

市本先生にも意見をもらいつつも中々決まらずに地区大会5日前に迫っていた。ホワイトチョコレート、抹茶プリン、みかんチョコ、メロンプリンの4つでいくことを決めた。

地区大会前日、市本先生はレンタカーを借りてきて車で部員全員を乗せて食材を買って保冷バックにしまっていざ長野県に向かった。民宿に行くと明日戦う各県を勝ち上がってきた選りすぐりの高校も同じ旅館に泊まることになっていた。私はなるべく手の内を見せないようにしないといけないと考えた。

私たちは部屋でゆっくりしていた。するとトントンと扉が鳴ると部長の紗綾が扉を開けた。

始めまして同じ愛知県予選を勝ち抜いた海部(かいふ)女子高校部長の朝比奈朋香(あさひなともか)です。那古野総合高校さんの活躍には敵ながらスゴいなと思いました。

紗綾はこちらこそ海部女子高校さんはスゴいなと見ていました。明日はお互いに全国大会出場出来るように頑張りましょうと言い合った。

晩御飯を食べてお風呂に入り明日に備えた。

翌日、会場でもある丘弥文化会館に向かい出場する4人は準備を進め、出場しない4人は椅子に座り時間になるまで今かと待っていた。

午前10時予選が始まった。私がホワイトチョコレート、莉菜が抹茶プリンを作り始めた。香苗、紗綾のサポートもあり私たちはスムーズに作ることが出来て審査員に持っていった。

那古野総合高校はお菓子部門、スイーツ部門共に1位通過を果たしてお昼ご飯を食べに行くことにした。近くの飲食店をスマホで調べて歩いてすぐのファミレスでお昼を食べた。みんなはゆっくりしていていいよと告げて私と莉菜、香苗、紗綾は市民会館先に戻った。

全国大会出場に向けて私は香苗、莉菜は紗綾のサポートに回った。これで2位以上になれば全国大会出場出来る。全力でフォローしないとな。みかんチョコもメロンプリンも美味しかったし絶対にいける、ここまで来たなら絶対に全国に行きたい気持ちが強かった。

香苗、紗綾共に出来上がり私と莉菜は審査員に運んだ。4人、いや椅子に座っている8人全員が那古野総合高校が全国大会進出を祈っていた。

そして結果発表がされて2位愛知県代表那古野総合高校とアナウンスされた。私は嬉しくも1位になれず悔しい気持ちもあった。なによりも1位になったのが同じ愛知県代表の海部女子高校だったことが何とも言えなかった。帰りに名物のソースカツ丼をみんなで食べて愛知に戻ってきた。ひとまず全国大会出場を決めて私を含めてみんな車の中で爆睡していた。


報告

全国大会出場決めたからテレビ中継もあるだろうから東京に住む智恵実にも来て欲しいって考えていた。

プルル、プルルと私のスマホが鳴った。連絡してきたのは今電話をしようとしていた智恵実だった。

もしもし花蓮、久しぶり。ネットニュースで見たけれど全国高校生お菓子・スイーツコンテストに出ていてそれで全国大会出場決めたってスゴいね。

ありがとう。智恵実、いや七川蓮実さんとお呼びするべきかな。

やだな花蓮、今まで智恵実でいいよ。会場は私の住んでいるところの近くだから見に行くね。

智恵実も七川蓮実として忙しいと思うから来られるようなら来てくれたら嬉しいな。というよりなんで智恵実が会場知っているの?

なんでってネットに載ってるよ。スクショして送信するね。

私は送られた写真を見て驚いた。全国大会の審査員は当日来たお客さん!?作るものは後日発表。何を作るか分からないとどうやって準備するの。

ねぇ花蓮、高校に入ってからの出来事何かあれば教えてよ。丸々使うわけじゃなくて名前とかは変えるから七川蓮実の話に使わせて欲しいなって思って。

高校に入ってからか〜。

同じ中学校の莉菜と仲良くなったことかな。

後、雨の中いた大智君の話を聞いてクッキーを食べさせて明富市のお祭りに行った話を話した。参考になれば。

その男の子花蓮にゾッコンだね。お姉ちゃんって懐いてくれる感じがかわいい。当日応援に行くね。私、今から原稿書くから電話切るね。またお互いに近況報告しようね。莉菜にも宜しく伝えておいて。

私は智恵実から送られてきたスクショの写真を見た。

11月3日、会場江戸川ドーム予選午前10時から決勝午後2時から審査員は当日来たお客さんの中から無作為に選出する。

翌日、パパから花蓮ちょっと来てと呼ばれた。何事かと思い向かうと朝刊に全国高校生お菓子・スイーツコンテストのことについて記されており出場メンバーも併せて載っていた。

私はその記事を写真を撮って昨日智恵実から送られてきたスクショと一緒に調理部のグループLINEに写真を送信した。

下村駅で莉菜と会うと小さな記事とはいえ新聞に載るってスゴいね。SNSで調べたら結構盛り上がっていたよ。見に来ていた人が投稿してくれたみたいで見た目がかわいいとか美味しそうとか色々書かれていて嬉しかったよ。

そんな感じなんだ。昨日智恵実から電話がかかってきて当日応援に合間をぬって来てくれるみたいだよ。

合間をぬって?智恵実何かしているの?

あれ莉菜に話さなかったっけ?七川蓮実の話。

花蓮と智恵実が小学生の時にしてた話は聞いたよ。

智恵実そのペンネームで高校生小説家として頑張っていてね。

虹色の空改めて読んだけれど面白かった。次の小説も早く読みたいな。

現地来た時それ言ってあげなよ。きっと喜ぶと思うよ。莉菜にも宜しく伝えておいてって言っていたよ。

放課後、私と莉菜は調理室に行って智恵実のスクショについて話し合っていた。紗綾はまだ何を作るか分からないとなると困るから何になってもいいように色んなもの作ってみよう。まだ期間があるし。

しばらくは作って食べてカフェで研究しての日々だね。いやそれしかない。

香苗はいやただ紗綾がスイーツ食べたいだけしょとツッコミを入れると調理室は笑いに包まれた。

大福、どら焼き、チョコレート、クッキー、プリン、クレープ、バウムクーヘン、ワッフル、ガトーショコラ等思い当たるものを食べてこの中で何が作れるか再び話し合った。

1週間前、部長の紗綾に大会事務局からメールが届いた。今回の全国大会での作品はお菓子部門はクッキー、スイーツ部門はグループにする。

みんなで作るものが決まってよかった。後はどのようにするのかそれだけだね。

香苗からクッキーは私よりも花蓮の方が見た目も美味しさも長けているから全国大会では花蓮に一任するね。全力でサポートするよ。

そうなると後はクレープか……。紗綾はみんなならどんなクレープを食べたい?まずそこからだよ。

チョコバナナ、イチゴ、ツナマヨ、キャラメル、抹茶、ブルーベリーと意見を出し合った。

どれも美味しいと埒(らち)が明かず11月になりクレープは複数用意して当日の審査員を見て決めることにした。宿泊用の身支度を旅館に送った。

前日、放課後に市本先生と調理部部員全員でいざ東京に向けて那古野駅から新幹線で東京へ向かった。


全国大会

旅館で1泊して会場の江戸川ドームに向かった。普段はプロ野球東京マリンファルコンズの本拠地で使われているだけあって大きさには圧倒された。

準備するにはまだ早いしみんなでドームを散策していた。

花蓮、莉菜久しぶり〜。元気そうだね〜。

私たちのことを知っている人は1人しかいない。声の主はやはり智恵実だった。

莉菜は智恵実久しぶり。水色のパステルカラーで襟に星が付いていてセーラー服めっちゃかわいいじゃん。元気にしていた?

でしょ?私はめっちゃ元気だよ。この制服がかわいくてこの学校にしてさ。

私は今日は忙しいのに来てくれてありがとう。

智恵実はなに水臭いこと言ってるの。だいいち電話で行くって言ったでしょ。私の学校も出るみたいだし戦うってなったらどっち応援しよう。

紗綾は智恵実さんすみません高校ってどちらですか?

江戸川カナリア女学院高校です。

私と莉菜以外は顔を青ざめていた。先輩たちどうされたんですか?

香苗は江戸川カナリア女学院高校ってパティシエを多く輩出している学校で有名で今回の優勝最有力候補の1つだよ。花蓮知らなかったの?まさか智恵実さん助っ人で出るってことはないですよね?

智恵実は出ないですよ。今日は同じ中学校だった花蓮と莉菜の応援に来ました。私の学校と戦うことになったら複雑ですが。

それに私、七川蓮実というペンネームで高校生小説家として活動しているのでみなさんよければ小説読んでもらえると嬉しいです。

時間が近づいてきて私、莉菜、香苗、紗綾は会場入りして他の部員はスタンドへ向かった。

審査員を見ると50代男性、20代男性、10代女性、40代女性の4人が座っていた。

私はチョコレートクッキーでいくことを決めた。紗綾はチョコバナナクレープに決めてそれぞれ作り始めた。

人数分作り香苗と莉菜は審査員に運んだ。

お菓子部門、スイーツ部門共に那古野総合高校は1位通過を果たした。

4人でスタンドに向かい予選2組目を見ていた。智恵実とその姿を見ていて本命の江戸川カナリア女学院高校は圧倒的な出来栄えで予選通過をした、

私は決勝でこんな相手と戦うのか、でもここまで来たら勝っても負けても今の実力を尽くすだけだ。

お昼ご飯は江戸川カナリア女学院高校の人たちと一緒に食べることにして智恵実と同じ中学校で色んな話で盛り上がった。互いにここまで来たら勝ち負け関係なく楽しみましょうと握手をして再び会場に戻った。

決勝で私は1番自信のある塩バタークッキーでいこう。莉菜は審査員は甘いものばかり食べているだろうからツナマヨクレープでいこうと決めた。

私と莉菜は勝っても負けてもこれで最後、負けたら相手か上だったと割り切ろうと先輩たちのサポートをしてもらいつつ作り上げた。

審査員が食べ終わって集計が始まった。

お菓子部門

3位 愛知県代表海部女子高校

2位 東京都代表江戸川カナリア女学院高校

1位 愛知県代表市立那古野総合高校


スイーツ部門

3位 東京都代表江戸川カナリア女学院高校

2位 愛知県代表海部女子高校

1位 愛知県代表市立那古野総合高校

私と香苗、莉菜と紗綾は涙を流して抱き合った。

そして表彰式に臨み表彰状とメダルがかけられた。

私たちはそれぞれの高校と握手をして健闘を称えあった。

私はスマホを取り出して記念写真を撮りたいと申し出て12人で写真を撮った。

各校は江戸川ドームを出ると智恵実から声をかけられた。花蓮、莉菜写真を撮ろうよ。

私はうんいいよと3人で写真撮影をした。

市本先生はじゃあ明日も学校あるから帰ろうかと告げた。

ハァハァ、あれ?もしかして大会って終わっちゃった?大智君じゃん。どうしたのそんなに顔に泥を付けて。私は1度ハンカチで泥を拭った。

花蓮に話あるみたいだから私たち壁にいるね。

大智はううん、大丈夫。花蓮お姉ちゃんに渡したいものがあって来たの。

私に渡したいものってなに?

大智は4つ葉のクローバーと1つ花を差し出した。

大智君わざわざありがとう。この花キレイ。

これは蓮の花だよ。新聞で見たけれど花蓮お姉ちゃんの漢字って蓮の花でしょ?だから蓮の花を持っていこうと思っいてさ。花言葉は「清らかな心」とか「神聖」っていう意味があるよ。

それより大智くん東京まで1人で来たの?

うんそうだよ。帰りも1人で帰ろうかなって。

市本先生にすみません私、大智君と帰るので先に帰ってもらってもよろしいですか?小学生の男の子1人で帰らせる訳にはいかないので。

七瀬さん大智くんのことがかわいくて仕方ないって思っているね。2人とも気をつけて帰ってね。

大智君は新幹線の中で植物が好きで科学部に入り休みの日は山や川に行って植物観察をしていると話してくれた。私はうんうんと頷いて聞いていると疲れたのか寝てしまった。なんかホントかわいい弟のようだなと思って家に送り届けた。

家を帰るとパパとママから優勝おめでとうございます。またパーティしようねと言ってくれた。

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