時代の変化

ある日一変

数10年前、まだ私が産まれる前はこの街は県内でも有数の製紙で繁栄しており「東洋一の製紙街」と世界でも轟ような街で県内、いや県外からもこの街に集まるような活気のあるような街で誰もが知るような憧れの街だった。

私のパパもこの街に出向することになり、家族もこれで安泰だね。これから先は今までよりもいい暮らしが出来るねと誰もがその事を疑わなかった。

しかしそんな日々は長くは続かなかった。それは那古野市から程近い明富町(あけとみまち)に同業会社が出来て電車は特急が止まり、車は高速道路から降りて会社からもスーパーやアウトレットモールといった商圏からも近いと私の暮らす街とは雲泥の差があった。

すると人は見て分かるように人が下村市からどんどん明富町に転出していった。全盛期には1万人を超える人が住んでいたこの街だがたった数年で全人口が1000人まで人が減ってしまった。

パパは家族のためにこの街に残るべきなのか、転職して利便性のいい明富町に移るべきなのか岐路に立たされていた。ママは花蓮のことを考えたら住み慣れた街に留まる方がいい。もうすぐ小学校に上がるのに別の街に引越しをすると慣れるまでに時間がかかるし馴染めずに孤立したり、イジメにあうくらいならここにいた方がいいと思うの。

私が幼稚園に通っていた頃、公園で近くに住む子たちと遊んでいたらしくここにいたい。私はずっとこの街にいるんだと両親に訴えたみたいだ。

そしてこの街に残ることになりパパは家族のことを考えて明富町にある製紙会社に転職をして2時間かけて通うことを決めた。


小学校入学

私は必然的に下村小学校に入学した。家からも近く同じ幼稚園で仲のいい茅川智恵実(かやかわちえみ)といることが多かった。クラスも1クラスしかなくずっと智恵実と一緒にいた。

智恵実は花蓮ちゃん、今日ウチにおいでよ。この街何もなくてつまらないからママにお強請(ねだ)りをしてマンガを買ってもらったんだ。一緒に読まない?

私はマンガを読むのは家ではなくてマンガ喫茶で読むものだと思っていた。智恵実ちゃん、マンガ買ってもらったんだ。いいな〜、遊びに行くね。

授業が終わって私はランドセルを背負ったまま智恵実の家に向かった。思わず智恵実ちゃんマンガ沢山持っているね。まるでマンガ喫茶の様だよ。

すると智恵実はそれはパパもママもマンガが好きでそれで私も好きになった感じかな。クッキー持ってくるから好きなマンガ読んで待っていて。

私は智恵実の部屋にある少女マンガを読んでいた。このマンガ面白いな、1人でクスクス笑いながらいると智恵実がオレンジジュースとクッキーを持ってきた。

花蓮ちゃん、このマンガ面白いよね。なんか友達と話題を話し合えるって嬉しいな。とりあえずオレンジジュースとクッキーを食べながら話し合おう。

2人でひがくれるまでずっとマンガを読んでいた。私は暗くなったしまた遊びに行くね。またマンガを読ませてもらうよと智恵実の部屋を出ようとした。

花蓮ちゃん、続きが気になるならマンガ借りていってもいいよ。読み終わったらまた返してもらえればいいもんでさ。

私は智恵実ちゃんホントにいいの?嬉しい。どうして智恵実ちゃんはこんなに仲良くしてくれるの?

智恵実はどうしてか……?幼稚園の時から仲良くしてれている中でずっと傍にいてくれたからかな。花蓮ちゃんはどうしてなの?

私は人見知りで幼稚園でも孤立だった時に1番はじめに声をかけてくれたのは智恵実ちゃんでこの子になら自分のことをさらけ出しても大丈夫かなって思ったからかな。

智恵実はそう言ってもらえて嬉しい。家でも幼稚園でもごっこ遊びをしていたよね。私も中々幼稚園で馴染めなくて1人で居たのが花蓮ちゃんに勇気を振り絞って声をかけたって感じだよ。

私はそうだったんだ。はじめて知った。智恵実ちゃんも何かあればいつでも話を聞くから相談にしてきてね。あ、もう午後5時だ。家に帰るからまた明日一緒に学校に行こうね。

翌日、私は智恵実と共に学校に向かった。

花蓮ちゃん、その白いシャツかわいいね。私はそうなの、テレビを見ていて花柄でリボンが付いていてかわいいから欲しいって言ったらパパが会社から帰ってすぐに車で服屋さんを探しに周って買ってもらったの。智恵実のそのピンクのミニスカートもかわいいよ。花蓮ちゃんありがとう。

私は昔はこんな寂れた街なんてイヤだな、遊びに行くところもないし電車を乗ってどこか行こうにもまずは周遊バスに乗って隣街まで行かなきゃ行けないって思っていたけれどその中で1ついい所を見つけたよ。

智恵実は思わず花蓮ちゃんそれって何?

私はだって人が少ないし学校も1つ、クラスも1つってことはずっと智恵実ちゃんといられるって少し大きい街になったら絶対に有り得ない話だよ。

智恵実は確かにそうかもね。今日も学校が終わったらまた遊ぼうよ。

私はいいよ。今日は私のウチにおいでよ。智恵実ちゃんみたいにマンガが沢山あったりする訳じゃあないけれどよかったら来てね。

智恵実はうん、分かった。授業終わったら遊びに行くね。5時間目が午後3時に終わってそのまま私の家に向かった。

智恵実はお邪魔しますと私の部屋に入った。私はたまにはごっこ遊びでもする?智恵実はお姫様ごっこでもしようよ。私はじゃあお菓子とジュース持ってくるから智恵実ちゃん、箪笥(たんす)から好きな服を選んでいいよ。ちょっと待っていて。

私は冷蔵庫からお菓子とジュースを持っていくと智恵実は花蓮ちゃんが持っている服かわいい服ばかりで目移りしちゃう。羨ましいな。

私は気に入ったのがあればどれでも好きなの使っていいよ。どれか気になるのある?

ちはこの黄色のワンピースかわいい。まるでアニメに出てくるような感じで着てみたい。花蓮ちゃん借りてもいいかな。

私はもちろんだよ。帽子でもスカーフでもこの部屋にあるものなら何でも使っていいよ。

智恵実はありがとう。じゃあこのワンピース着るね。わぁ〜、なんかこれを着ただけで何かお姫様になれたような気がする。花蓮ちゃん、私決めた。

私は智恵実ちゃん突然どうしたの?

智恵実は私もこのワンピース買ってもらうことにする。お姫様ごっこしようと思ったけれど花蓮ちゃんの服があまりにもかわいいのが多いから他の服も着てみたいんだけどいいかな?

私は気に入ったのがあれば着てもらっていいよ。でも智恵実ちゃんはオシャレだと思うけどな。

智恵実は花蓮ちゃん程ではないよ。じゃあこのシャツとこのスカート、あとこのワンピースもいいな〜、ホントに全部着させてもらっていいの?

私はなんか智恵実ちゃんに喜んでもらえて私も嬉しいよ。2着あるのでよかったら智恵実ちゃんにあげようか?この前マンガも貸してもらったしお揃いの服で学校やどこか出かけられたらきっと楽しいよ。

智恵実ちゃん、どの服がいいとかある?その服あるか探してみるもんでさ。

智恵実はえ〜、そんな悪いよ。もし花蓮ちゃんがいいって言うのなら、そうだね〜、やっぱりさっき着たこの黄色のワンピースかな。こういう色の服とか持ってないし2着あればでいいんだけどさ。

私は自分の部屋の箪笥(たんす)を漁った。気に入って2着持っていたからどこかにあるはずなんだけどな。あれ?どこに入れたんだっけな……。

智恵実はないならムリに探さなくていいよ。私もママに同じ服を買ってもらうだけだからさ。

私は智恵実ちゃん、この黄色のワンピースは期間限定で売られていたやつだから今は売ってないの。大切な友達が欲しいって言うんだから探すよ。他の部屋にあるかも、ちょっと待っててね。

そしてしばらく他の部屋へ行って探した。あ、こんな所にあったのか。智恵実ちゃん、見つかったよ。もう1着はお姉ちゃんの部屋に置いてあったよ。これを箪笥(たんす)に戻しておくからさっき智恵実ちゃんが着たやつでよければあげるよ。

智恵実はじゃあ明日一緒のワンピースを着て学校に行こうねと智恵実は家に帰っていった。


部活動

私たちは小学校4年生になっていた。

智恵実は花蓮ちゃん、4年生になったら部活動に入らなきゃいけないみたいだけど何部に入るか決めた?

私は何も決めてないよ。この学校って人数少ないし部活動ってまず何があるのかすら知らないんだよね。智恵実ちゃんはもう決めたの?

智恵実はまだ何も決めてないよ。私、運動が得意じゃないから運動部じゃなくて文化部にしようかな。

私は運動苦手だから入るなら文化部に入ろうかな。そうだ、智恵実ちゃん同じ部活に入らない?部活見学でいくつか周って何部に入るか決めようよ。

智恵実はそれいいね。1人だと心細いし花蓮ちゃんが一緒にいたらきっと楽しいだろうし。

私はじゃあ決まりだね。智恵実ちゃんとずっといられるって嬉しいな。何か2人に合う部活があればいいね。

放課後、2人で文化部を見ていた。だが文化部は美術部とパソコン部しかなく、どちらの部活も多くて2人しかおらず唖然(あぜん)とした。

智恵実は目が点になり私に声をかけた。花蓮ちゃん、どっちの部活に入るか決めた?正直私は絵を描くのもパソコンも得意じゃなくてさ。

私はじゃあ智恵実ちゃん部活動に入らないの?

智恵実はそこでなんだけど花蓮ちゃんと2人で新しい文化部を作るっていうのはどうかな?

私は耳を疑った。智恵実ちゃんそれってなに?マンガ部なら同じ趣味でいいかなって思うけれどそんなの先生たちが許可なんて出ないと思うよ。

智恵実は花蓮ちゃん、違うの。図書室で読んだ小説が面白くて私も書いてみたいと思うの。花蓮ちゃんどうかな?

私は智恵実ちゃん小説読むの?スゴいね。とてもじゃないけれど難しくて私には読めないよ。その上、書くなんてとんでもない。

智恵実はそんなことないよ。国語の教科書に山椒魚の話があるでしょ?あれも小説の1つだよ。国語の教科書にはふりがな振ってあって読みやすいけれど図書室においてあるやつは全部漢字書かれていて難しいけれど何度も読んだら分かりやすいよ。

私は智恵実ちゃんの様に勉強出来る訳では無いし文学には難しいな。それならパソコン部にでも入ることにしようかな。

智恵実は花蓮ちゃんがどうしてもっていうなら止めないけれど小説って山椒魚みたいな文学だけじゃあないよ。ライトノベルっていってもっと読みやすいやつもあるよ。1人で書こうとしないで一緒に私と一緒に書こうよ。アイデアを提案くれるだけでもいいからさ。花蓮ちゃん、お願い。

私は智恵実ちゃんの足手まといになるけれどそれでもいいならお願いします。そうと決まれば先生にお願いに行かないとね。

私たちは担任の先生にお願いに行くと実績がないからまずはライトノベルクラブとして活動することが決まり、顧問は担任の先生、活動場所は4年生のクラスに決まった。


新設クラブ

活動するにあたり先生はまず部長と副部長を決めなければというと智恵実が部長、花蓮が副部長と決まった。

先生はいきなり小説を書くのではなくどのような設定で主人公は男の子なのか、女の子なのか、人間と決めず山椒魚みたいに人間じゃないものを主人公にするのか決めようと私たちに意見をくれた。

私は智恵実ちゃん、どういう話を書きたいとかある?私は主人公は王子様みたいな男の子とかいいと思うんだけどさ。

智恵実は王子様みたいな男の子……。それだったらそれに似合うかわいい女の子と付き合う話とかもいいかもね。

私は一目惚れの設定にした方がいいかな。

先生は2人とも色々と意見が出てくるね。日が暮れるから続きは明日にしよう。男の子、女の子の名前を考えてきてね。

私は智恵実ちゃんと家に帰る道中、ずっと名前を考えならがら帰った。だが王子様みたいな名前、ヒロインの女の子の名前が中々思い浮かばなかった。

私はヒロインの女の子としての名前だけど華凛、下水流華凛(しもずるかりん)って名前とかどうかな?智恵実はかわいい名前だね。王子様の名前だけど西園寺龍真(さいおんじりゅうま)って名前とかどう?

私はまるで白馬の王子様に相応しい名前だね。いきなり小説を書こうと思っているから難しいって思っていたのかも。智恵実ちゃん、私を誘ってくれてありがとう。まだまだ拙いと思うけれど智恵実ちゃんと一緒に出来たら嬉しいな。

智恵実は当たり前じゃん。私1人じゃあ絶対に考えつかないことも花蓮ちゃんが思いつくことだってあるんだからさ。先生に伝えようよ。

2人は職員会議から戻ってきて教室に先生が入ると花蓮ちゃんと2人で主人公2人の名前を考えました。王子様は西園寺龍真、女の子の名前は花蓮ちゃん、なんだっけ?

私は下水流華凛です。華も凛も両方共女の子にあったほうがいいかなって思うような感じで考えてみました。先生、どう思いますか?

先生は2人ともセンスいいね。特にヒロインの華凛って名前はまるで花蓮ちゃん、智恵実ちゃんを絵に掻いたようなかわいい名前だなって思うよ。じゃあ次は話を考えようか。

いきなり何万字も書こうと思わずこの2人がどのようにして出会ってどのような展開になるのか先生も含めて3人で意見を出し合おうか。考えたことを文章にして書くのでもいいけれど単語でもいいし、箇条書きでもいいから書き出してみよう。もし思い浮かばないようなら図書室に移動して参考にしてもいいよ。

私と智恵実ちゃんは先生にじゃあ何か参考になるかもしれないので図書室に移動していいですか?それでもダメなら隣街の図書館に行って参考になりそうな本を探します。

私は下校時間ギリギリまで色々な本を読み漁り使えそうなワードを自由帳にメモをした。後はこれを文章にするだけなのか、だけどそれが意外と難しい。

「キーンコーンカーンコン下校の時間です」先生は2人とも今日はここまで。続きはまた明日と私は智恵実ちゃんと意見を言いながら歩いていた。

智恵実は花蓮ちゃん熱心にメモしていたね。私はでもね、メモはしたけれどそれをどうやって文章したらいいか分からなくてさ。智恵実ちゃん、一緒に考えてもらえないかな?

智恵実はもちろんだよ。花蓮ちゃんが思っているほど私、巧(うま)い文章考えられないよ。拙い文章でもよければ。

翌日、私は智恵実ちゃんに自由帳を見せると花蓮ちゃんスゴイね、早速考えてみよう。

「華凛はある日やって来た転校生の龍真のことが気になっていた。クラスの女の子はみんな龍真に釘付けで華凛もその1人だった。誰がこの龍真と付き合うのか争奪戦になっていた」

私はこの文章を見て智恵実ちゃん、単語や箇条書きだけで文章がかけちゃうなんてスゴイね。智恵実ちゃんに便りっぱなしじゃなくて考えないとね。こんなのとかどうかな?

「この誰もが羨む龍真から下水流、ちょっと話があるんだけどちょっといいかな?放課後、桜の木の下に来て欲しい。 そして華凛は不思議そうな顔をして放課後向かった。実は前から下水流のことが気になっていて俺と付き合って欲しい」

智恵実は花蓮ちゃんいいじゃん。何か続きが気になるよ。この先の展開だけどどうする?

私は美男美女が付き合ってずっと行くのもいいんだけどそれだとベタなんだよね。だもんで実はこの龍真がイケメンだけど実は見た目だけで勉強も何も出来ない様な感じとかどうかな?

智恵実はでもさ、私も花蓮ちゃんもそうだと思うけれど見た目だけいい人に惹かれたりする?

私はだったらスポーツは出来るけれど勉強が出来ないとかはどうかな?

智恵実はそれならいいかも。とりあえず放課後先生に見せに行こうよ、こんな感じでいいのか。

放課後、私と智恵実は先生に単語や箇条書きにした文章を見せると2人ともスゴイね、先生もこの先の展開が気になるよ。もう先生がとやかく言わなくても2人で考えて文章がかけそうだねと笑顔で私たちの頭を撫でた。智恵実は花蓮ちゃん、続き考えようか。

私は先生にこの後の展開ですが華凛と龍真はどういう風になれば面白いと思いますか?

先生はそうだね~、華凛が龍真に勉強を優しく教えてもらって恋に落ちる。そして付き合うけれどビックリするほど何も出来なくてその上束縛が酷くてイヤになるっていうのはどうかな?

私は参考になります。智恵実ちゃん、今の話も取り入れつつ話を考えようよ。

「華凛は龍真と付き合うことになった。これで私も誰もが羨むようなイケメンと付き合うことが出来る、そう考えていた。だが実際は思い描いていた感じには程遠かった。龍馬は私に対しての束縛がスゴくなんだか思っていた。我慢に我慢を重ねたが華凛は別れを告げると泣きながら俺にはお前しかいないんだ、頼むとせがんできた。それを見て華凛は龍真に一言、そんな人だとは思わなかった。サヨナラ……」

花蓮ちゃん、こんな感じで書いてみたけれどどうかな?

智恵実ちゃん、もっと続き読ませてよ。気になる。その続きどんな感じがいいかな?考えてみよね。

「翌日、華凛が学校に行くと龍真のウワサは広まっていて昨日まで目をキラキラ輝かせていた女の子たちは龍真のことを見向きもしないような感じだった。華凛はその光景を見てまるで台風一過のような感じだね。やっぱり人間外見ではなくて中身が大事だと女の子全員がそう悟った」

私はこんな感じで書いてみたよ。先生、どうですか?

先生はそういう展開なのか。そうだ、2人ともひと通り書けたら小学生を対象とした短編小説のコンテストがあるからそれに応募してみたら?2人が書いてくれれば先生が手続きとか行っておくからさ。

私たちは互いの顔を見て笑顔で智恵実ちゃんのおかげだよ、いやいや花蓮ちゃんのおかげだよとギュッと抱きしめた。私は智恵実ちゃんに導かれるように始めたのにまさかコンテストに応募なんて思いもしなかった。ありがとう。

智恵実は花蓮ちゃん、お礼を言うのは早いよ。それはこの作品を完成させて入賞した時に改めて言い合おうよ。私は確かにそうだね、下校時間だしお喋りしながら帰ろうよ。


コンテストに向けて

私と智恵実ちゃんは短編小説といっても一体何文字なのか先生に聞いた。

先生は短編小説だけど原稿用紙10枚から80枚くらいかな。2人の書いたやつなら10枚書くのもそう難しいことではないと思うよ。

私は何字必要なのか計算してみた。4000字から32000字の間ってことか。智恵実ちゃんこんなに書ける自信ある?

智恵実はすかさず首を横に振ってとてもじゃないけれどムリムリ、花蓮ちゃんはどう思う?

私は智恵実ちゃんが出来ないことを出来るわけがないじゃん。今ならまだ断れるよ。どうする?

先生はクスクスと笑っていた。2人とも実際に書くのは原稿用紙ではなくてパソコンで打って提出する形だよ。原稿用紙で書こうとすると膨大な量だと思うけれどパソコンだったら意外と書けたりするものだよ。先生も何かあったらその都度言うからさ。

今日はパソコン室で色々と書きながら考えよう。

私はワードを開いて書き始めた。タイトルは後にして智恵実ちゃんにも聞きつつ打ち始めた。先生や智恵実ちゃんの意見を踏まえて原稿用紙80枚分書き終えた。

先生、タイトルですが思い浮かばないです。何かいいアイデアありませんか?茅川さんはどうかな?

智恵実はそうですね……。「プリンセス華凛の王子様探し」そんな変哲もないタイトルしか思い浮かばないです。

私は智恵実ちゃん、それいいじゃん。タイトルだけど「プリンセス華凛の王子様探し」これでいこうよ。なんかタイトルかわいい感じだし。先生はどう思いますか?

先生はいいと思うよ。タイトルはそれにするとして2人の名前はどうする?

私は「七川蓮実(ななかわれみ)」理由は2人の名前から取りました。智恵実ちゃんどうかな?

智恵実はなんかペンネームみたいだからいいね、それにしよう。

私はタイトルとペンネームを書いて1度保存をした。

先生は自分のアドレスを通じて応募をした。よし、応募終わったから後日結果が出たらまた報告するね。茅川さん、七瀬さん今度は共作ではなくてピンで挑戦してもいいかもね。

智恵実は花蓮ちゃんは終始自信なさげだったけれど今回を機に私は花蓮ちゃんが出来ると思うよ。

私は智恵実ちゃんがそこまで言うのなら挑戦してみようかな。そうと決まれば図書室や図書館で本を読まないと。智恵実ちゃん、付き合ってくれる?

智恵実はうん、もちろんだよ。先生、図書室に向かってもいいですか?

先生はいいよ、そうなったら鍵を借りてくるね。

私と智恵実ちゃんは図書室に行って参考になりそうな小説を只管読んでいた。本を書くって智恵実ちゃんとの共作で改めて感じた。

智恵実は不安そうな顔をしている私に声をかけた。花蓮ちゃんなら出来るよ。一緒に頑張ろう。

下校時間になり家に帰って自由帳に箇条書きで書いて文章を書いていた。私は智恵実ちゃんに電話をして互いの近況を伝えあっていた。

1ヶ月後、私たちは放課後に話があると伝えられた。智恵実は花蓮ちゃん、きっとこの前応募した短編小説の結果だと思うよ。

七瀬さん、茅川さんこの前の共作の「プリンセス華凛の王子様探し」入賞だって、おめでとう。

智恵実は花蓮ちゃんおめでとうと抱きついた。

その後も私と智恵実ちゃんは1人で作品を書こうとしていたがどれだけ頑張っても私は作品を書くことが出来なかった。それとは裏腹に智恵実は才能を開花したかのように1作品だけでなく何作も書き上げていて羨ましくも劣等感を覚えた。

私は智恵実ちゃんには勝てない。決して競い合っているわけではないが何か勝てるものはないかと考えていた。

智恵実は小説を何作も書いて驕るところだがいつもと変わらず優しい笑顔で私に声をかけてくれる。

私は智恵実ちゃんに尋ねた。どうして小説を何作も書けるのに優しくしてるの?

智恵実はどうしてか……。小説を書くのは好きだからかな。それに書くのは私だけど評価をするのはそれを読んだ人だからね。花蓮ちゃんはどんな時でも私のそばにいてくれるでしょ?だからかな。

私は智恵実ちゃん、ありがとう。大好きだよ。

智恵実はちょっと花蓮ちゃん、苦しいよ。私も大好きだよ。もし好きな子とか出来たらお互いに言い合おうね。その時は見捨てないでね。

私は智恵実ちゃんを裏切るわけないじゃん。昔からの親友をぞんざいに扱うなんてそんなことしないよ、小学校の卒業式って袴着る?

智恵実はどうしようね……?せっかくの機会だから袴着ようかな。花蓮ちゃんはどうする?

私は着たいな。ねぇ智恵実ちゃん、一緒の袴を借りて一緒に着て写真撮ろうよ。

智恵実はそれいいね。今度一緒にレンタルショップ見に行こうよ。ママにお願いしておくからさ。

私はえ、いいの?ありがとう。じゃあ日時決めないとね。智恵実ちゃんのママに日時確認しておいてもらってもいいかな?

智恵実はうん、分かった。じゃあまた電話するね。

2時間後、私の家に電話がかかってきた。

もしもし智恵実です。花蓮ちゃんいますか?

電話はパパが出て私が呼ばれた。

花蓮だけど智恵実ちゃん?なんて言ってた?

智恵実はママがね、土曜日の午前10時にウチに来て欲しいって言っていたから来てもらってもいいかな?

私はうん、分かったよ。じゃあよろしくね。

そして土曜日、私は智恵実ちゃんの家に行って車に乗ってレンタルショップに向かった。

私と智恵実ちゃんは袴を見てこの袴かわいい〜、どれにするか悩んでいた。ピンクもかわいいし水色もかわいい。ねぇ、花蓮ちゃんどの色にする?

私は試着してみて決めようよ。どうかな?

智恵実はそうだね、実際に着てみてどの色にするか決めようか。2人は試着室に行って袴を着た。

ねぇ、智恵実ちゃん。私は水色がいいと思うんだよね智恵実ちゃんはどっちがいい?

智恵実は悩みどころだよね。私も水色にする。ママ、この水色の袴を2着予約することにする。

そして私たちは家に戻って卒業式か待ち遠しいねと話し合っていた。

私は寂れた街だから小学校を卒業しても智恵実ちゃんと同じ中学に通えるって嬉しい。でもさ、前に中学校の紺のセーラー服試着したやつかわいかったね。中学生になったらあの制服を着て通うのか。

智恵実はそうたね、早く中学生になりたいね。

そして月日が流れて卒業式を迎えた。

私と智恵実ちゃんは水色の袴を着て体育館で送辞や校歌、卒業生の歌を歌っていると涙が溢れてきた。

楽しい思い出、悲しい思い出沢山あったけれど充実した小学校生活を送れたと感じている。

そして私は智恵実ちゃんと写真を撮ってお互いのママと共に車で隣街に行ってランチを食べて小学校時代の思い出を語り合っていた。

私は中学校もみんな同じメンバーだが小学校を卒業という1つの区切りに名残り惜しい気がしていた。ママ、智恵実ちゃんとこの後カフェに行きたいと思っているけれどダメかな?

今日は袴を返さなきゃ行けないし智恵実ちゃんも疲れていると思うからまた別の日にしな。卒業したから明日以降でもいいでしょ?

智恵実はお母さんも行っていたけれど今日は袴を返さなきゃ行けないから明日でよかったら一緒に隣街のカフェに行こうよと話が決まった。

翌日、私は智恵実ちゃんとともに周遊バスと電車を使いカフェに向かった。2人で下村市にも電車が通っていれば楽なのにねと嘆きつつ数件カフェ巡りをして再び下村市に戻った。その後、私と智恵実ちゃんは互いの家に行きあい気がついたら翌日、4月1日中学校の入学式を迎えることになった。

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