10話①編

ミュー「ツェリさんに神妙な顔をされると、思わず身構えてしまう」

アディ「何かやらかした心当たりでもあるのか?」

ミュー「お前はワタシに対する発言、もうちょっと気を配って?こんなに頑張ってるのに!」

アディ「頑張りつつアホもやるだろ」

ミュー「言い方!!言い方ってもんがある!」



ミュー「褒めた後に現実を突きつけてくるツェリさん、マジツェリさん……」

アディ「お前、まさか本気で気づいていなかったのか……?」

ミュー「悪かったな!気づいてなかったよ!ステップ覚えるのに必死で!!」

アディ「アホだろ」

ミュー「うるさーい!ワタシはワタシなりに頑張ってるんだ!」



アディ「しかし、このデフォルメのドレス姿だが……」

ミュー「なんだよ。言いたいことがあるならハッキリ言えよ」

アディ「ちんちくりんだなと」

ミュー「お前は本当に、ワタシが相手だと発言に遠慮がないなぁ、この野郎!」

アディ「お前もだろうが」

ミュー「うぐ……ッ」



ミュー「この、頑張りましょうねっていうツェリさんの顔が、死ぬほど怖い。圧が凄い」

アディ「女官長は淑女教育のプロだからな。腕が鳴るんだろう」

ミュー「鳴ってくれなくて良かったのに……」

アディ「諦めろ。お前を本番までに仕上げると意気込んでいたからな」

ミュー「他人事だと思って!」



ミュー「ライナーさんからぶっ込まれる情報が多すぎて、処理が追いつかない」

アディ「あ?」

ミュー「踊れるとか、貴族だとか、その辺全然知らなかったから」

アディ「お前、時々妙に情報がちぐはぐだな?」

ミュー「アンタとアンタの旅の仲間以外の情報は希薄なんだよ。ライナーさんモブだし」



アディ「この転んだのは素か?変な気配が気になってなのか?」

ミュー「……両方」

アディ「お前は本当に、運動が不得手だな……?」

ミュー「ワタシは引きこもるタイプのオタクなんだよ!アクティブなオタクじゃないの!!ダンスを完コピする系のアイドルオタクでもないの!」

アディ「何だそれは」



ミュー「至近距離でライナーさんの顔面偏差値を確認するの、普通ならトキメキとかドキドキが出るんだろうけど、それどころじゃなかった」

アディ「背後がアレだな」

ミュー「もうこれ、エフェクトが天と地って感じすぎてやばくない?主にワタシの胃が」

アディ「そんな軟弱か?」

ミュー「言い方!」



アディ「生まれてこの方感じたことがないというのは?」

ミュー「あんな明らかな嫉妬の視線、ワタシに縁があるわけないだろがい」

アディ「そうだな」

ミュー「言ったワタシもワタシだけど、納得するアンタもアンタだと思う」

アディ「お前がそういうのに無縁そうなのは解る」

ミュー「ほっとけ」



アディ「あいつもなぁ、家柄や能力、外見と性格を合わせれば嫁の来ては山盛りなんだろうが」

ミュー「そういう浮いた噂とか婚約者とかないの?」

アディ「ないな。アレは俺と一緒で仕事に忠実だ」

ミュー「自分で言うんじゃねぇよ、国主。アンタは貴族よりもっと結婚に関して真面目に考えて」



アディ「俺の仕事の邪魔をしない女なら、妃に迎えても良いと思ってるぞ」

ミュー「そこはブレないんだな……」

アディ「俺の仕事を妨げてどうする。国が崩壊するぞ」

ミュー「いや、そうなんだけども。結婚にそれを求めるのもどうなん?っていう」

アディ「国主の結婚だぞ。政治だ」

ミュー「むぅ」



ミュー「まぁ、その話は良いや。とりあえずワタシは、針の筵状態でのダンスレッスンを頑張った。褒めろ」

アディ「そうだな。慣れんことをよく頑張った」

ミュー「……」

アディ「何だ?」

ミュー「いや、普通に褒めてくれるとは思わなかった」

アディ「お前は俺を何だと思ってる」

ミュー「アディ」



ミュー「連日スパルタマダムによる飴と鞭完備のダンスレッスン(お姉様方の嫉妬の視線付き)と戦っていたワタシの、一時の癒やし!」

アディ「お前、本当にシュテファン好きだな」

ミュー「美味しいご飯をくれるからね!ワタシのシュテファン!」

アディ「俺の料理人だ」



ミュー「そんなわけで、続きはワタシが優しいシュテファンに癒やされることになる、はず」

アディ「予定は未定」

ミュー「未定じゃないよ!ちゃんとそうだよ!おやつタイムだもん!」

アディ「相変わらずの食い気だな」

ミュー「毎回横取りするお前が言う!?」


以下、口論が続くので割愛!

(終)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る