第14話 Memorise remembered ~ 思い出は消えない ~

それから1ヶ月が過ぎ ――――




~ 尋斗 side ~




俺は一人海にいた。




「…エリカ…俺…一歩踏み出せねーよ…アイツの想いに気付いてるけど……お前との思い出がありすぎて……その思い出をかき消す事になりそうで……お前を忘れそうで……」




[思い出は……消えない…]

[ずっと……心にあるから…]




エリカにそう言われた気がした。




「…エリカ…?」




「ワウワウ」



遠くで犬の吠える声がした。


俺は振り向く。


見覚えある犬が走って来る。


ふうがだ。


飼い主の志須霞は、砂浜に足をとらわれたのか犬の力の勢いで転んだのか置いてきぼりされている。




「………………」



「馬鹿、ふうがっ!」



私はふうがに向かって叫ぶが全くお構い無しであろう。


相手は動物だ。




私はゆっくりと立ちあがり尋斗の元に向かう。




そんな志須霞を見ていると俺に向かって、ふうがは飛び掛かり、俺も勢いで倒れ込んだ。




「うわっ!」



ドサッ



「お前相変わらずだなぁ~」

「…ごめん…尋斗…大丈夫だった?」

「お前こそ大丈夫か?」

「何とか…」




尋斗は立ち上がる。


ふうがは私達の廻りを走り回る。


そして、そこから去るふうが。




「あっ!ちょっとっ!ふうがっ!」



「なあ、志須霞」

「何?」

「お前、俺の事どう思う?」

「えっ?どう思うって…言われても別に」

「まあ、見てて分かるけど」


「えっ?」

「お前、俺の事好きなんだろう?」




ギクッ

図星だ。



「………………」



「べ、別に好きじゃないし!」

「相変わらず意地張るんだな?お前」

「違うし!」



グイッ

抱き寄せるとぎゅうっと抱きしめる尋斗。


ドキン



「素直になって良いから」

「尋斗…?」

「俺…お前と向き合おうと思う」

「えっ?」

「意地張らなくて良いから。お前の全てを受け入れたいんだ」




抱きしめられた体を離す。




「俺…前の彼女の事があって正直踏み込めなくて…だけど…このままじゃ駄目だって思って…」


「…尋斗…」


「俺と…付き合って欲しい…」



ドキン

尋斗の意外な言葉に胸が大きく跳ねた。



「…えっ?尋……」



スッと私の片頬に触れる。



ドキン



「え、えっと……」



私は尋斗を押し退け、背を向ける。




≪つ、つまり……尋斗と相思相愛って事?≫

≪いやいや……まさか……そんな事…≫




スッと背後から抱きしめられる。



ドキン




「志須霞…今の自分の気持ち正直に話して欲しい」


「…私は…」


「うん…」


「正直…尋斗が…私の事を好きだって事が…信じ…られなくて…」


「うん」


「だけど…正直…嬉しいっていうか…」




振り返らせる尋斗。


顔をあげると同時に尋斗は私にキスをした。




ドキン


唇が離れる。




「お前の事が好きだから…付き合って欲しい。志須霞…」

「…尋斗…」



片頬に優しく触れる尋斗。



ドキン



「付き合ってくれる?」

「…尋斗…うん…」




私達はキスをし、抱きしめ合った。



























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