第6話


 あの日から数日たった。二度と忘れることの出来ないあの日から。


 私は人と話すことが出来た。楽しく過ごすことが出来た。


 誰かと笑って話すことが出来たのだ。


 こんな私でも、誰かと友達になることが出来るのだ。


 そしてそれがこんなにもあたたかく楽しくわくわくすると初めて知った。


 私はあの日五年ぶりに外に出た。


 そして、もう一度あの友達に会いたくなった。


 あのホームランをもっと近くで見たいとも思った。


 しかし、お金がないのだ。働かなければ、あの輝きには会えないのだ。


 なら、働けばいいのだ。


 鉛は私を強く否定するけれど、私はもう止められないのだ。


 私が外へ出られないのは、鉛のせいだったのだ。


 私は本当は外へ出たかったのだ。

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