第13話 アイスゴリラとの戦闘


「魔力反応が近づいてきたから、ここから歩こう。慎重にな。」


身体強化を解除して足音を殺して近づくことにする。


情報が少ないので相手にバレずに観察することが大事!情報大事!命大切に!


そもそもアイスゴリラなのかも不明だしな。


「ネフィ、魔力は大丈夫か?」

俺は、後ろを振り向いてネフィを観察する。とりあえず、魔力切れ寸前ではないのはわかる。


「うん、大丈夫。半分は残ってる。」

ネフィは、目を閉じて自分の魔力を測定した。


この距離で半分使うのか。

帰りは、念のため一時間以上かけて帰ろう。もう一体いるかもしれないからエコで行かなくちゃな。


「しっ。...いるぞ。」


遠くの方に対象を見つけた。目を凝らしてみる。


白い体に、ずんぐりとした体だ。体長2Mはあるな。

顔は、鼻口が長く前に突き出ていて、鳥の口ばしのようだ。

目は...、あれは目とは言えないな。目はほぼ岩だな。

口の周りに赤い点々が無数にあるから、蛇でいうピット(熱感知器官)かな。それが180度ぐるっとあるから死角は真後ろくらいか。

毛は長い。下が鱗なのかはわからん。


「ネフィ、とりあえずアイスゴリラっぽい。だが、燃えた後がない。違う個体か、もしくは異常に再生能力が高くて毛がもう生えたのかわかんないけど。

とりあえず鱗があるか確認するために燃やすな。木の影に隠れるぞ。」


『燃焼カンバッション』

しゅっっと指先から魔力を出して、未確認生物に当てる。


ブワッ!!ゴォぉぉ。


未確認生物の毛がすべて燃えた。


だが全く効き目はなかったようで、苦しむリアクションもなく歩き続けている。

毛が燃えたことはわかったのかキョロキョロと周りを見渡し警戒している。


燃えた後に、白色の鱗が全身を覆っているのが確認できた。


間違いないアイスゴリラだ!


「ネフィ、とりあえず火は耐性あることがわかった。手あたり次第魔術を展開するから足止めしてくれ。」

ネフィがうなずく。


互いに身体強化をかけて一気にアイスゴリラとの差を詰める。

アイスゴリラの真後ろに音もなく素早く走りこみ、ブレーキをかける。


たたたたたたっ.....。

ざっ!


すかさずネフィがアイスゴリラの体にブルウィップを巻きつける。


ビュンっ! ギュルギュルっ、ピッシーン!!


鞭をピンっと張ってアイスゴリラを拘束し、動きを止めることに成功した。


それを確認するか早いかアレックスは魔術を展開する。


『重量増加グラビティ』


ドシャッ!


どん!と、G(重力)がかかってアイスゴリラが膝を突いた。

だが、力強く抵抗されて、ググッと徐々に体が持ち上がってきた。


嘘だろうっ、パワーがありすぎる!

まずい、重力負荷が足りない。


『重力増加グラビティ...2G!...(まだ足りないっ!)3G!...(もう少しっ!)3.5G!!』


徐々に負荷を増し続け、ようやく地面に縫い付けることに成功した。


「ふぅー、馬鹿力だ。

次は、水でも試すか。

ギルドで効かないって聞いたが、特大の水魔法ならどうにかなるかもしれな....っ!!!

っ『防御壁展開っ!』」


ズドドドドドドドドっ 

パキパキパキパキパキパキパキパキ


無数の鋭利な氷柱つららが上空にいきなり現れて、矢のように降り注いできた。

咄嗟に防御壁を展開して防ぐ。

防御壁に当たると、当たったところから円形に霜がおりた。


「そういえば、魔法使うんだった。」


ネフィは無事か?と後ろを振り向いたら、枯れ木を組んでキャンプファイヤーの準備の真っ最中だった。


俺は脱力した。


「ネフィ、氷柱が当たらないようにしろよ。」


「もちろんだよ、これから焚き火をするのに鎮火しちゃうでしょ?」

ルンルンしながら、着火した。


『着火イグニッション』


「アレク〜、今から私料理するからね〜。チーズパンを作るよ。出来たら分けてあげる♪フフフン、フフン。」

パンとチーズに串をさしながら鼻歌歌ってご機嫌だ。


「はぁ、図太い令嬢だなぁ。

俺はやるべきことをやろう。

まずは、氷!

深淵魔法『嘆きのヘルニダルク(氷の女神) コキュートス!』」


空が一瞬のうちに真っ暗になり、一寸先は闇になる。

アイスゴリラを囲った魔法陣の光だけが見える。

魔法陣が寒々しく輝きだすと同時に眩い閃光が空に突き抜けた。


光が収束すると共に、ダイヤモンドダストがキラキラと舞う。

天気も元の明るさに戻った。


アイスゴリラは特大の氷塊の中に閉じ込められた。


効いたかな?


しばらくすると、氷がパリンと割れ無傷のアイスゴリラが現れた。


チッ、やっぱりダメだったか。次だ。


『深淵魔法、憤怒のグラヌス(炎の神) インフェルノ!』


闇の中から魔法陣が輝き、地面からマグマがボコボコと吹き出す。

そのマグマが槍のような形に変化して、対象物を覆うように何百本も突き刺さる。

アイスゴリラの中と外が、同時に業火に焼かれた。


ちょっと黒い煙が出てるから効いたのか?


「アレク〜、コキュートスは全く効いて無かったから、水無効。

インフェルノは、若干効いてるね。

でも深淵魔法でちょっとだけってことは、火耐性半端ないよ。

火魔法はやめた方がいいよ。」

ネフィは、チーズを炙りながらアドバイスする。


「はぁ?なんでわかるんだ?」


「私、転生特典『鑑定』持ち。

忘れてた?HPみたいの見れるの。

あ、でもどの属性が弱いとかはわかんないからあまり使えない鑑定なんだ〜。

ほんと残念特典だよね〜。」

炙ったチーズを温めたパンに垂らしながら話す。


「でも、深淵魔法2回も使って平気なアレクってすごいわ〜。

私が2回使ったら魔力切れで瀕死だね。

特大のショーみたいで、ご飯が5つ星レストランみたい。」

もぐもぐ食べて、幸せそうだ。


「じゃあ、今から適当に魔術使うから効きそうなの教えてくれ。」


土は、攻撃ゴーレムを作るだけ...。これは多分頑丈すぎるから効かないだろう。

光はアンデッドじゃないから効かない...。

後は、風と雷と闇?

最後は時空って感じか?


まず効かなそうなのから、風を試そう。


『ウィンド』


魔力を細ーく細ーく伸ばして.....。回転をかけて...。

鞭のように振り下ろす!


ガキっン!  


少し溝みたいなものができたかな。でも硬い。無駄な攻撃っぽい。次っ!


『雷電サンダー』


ズドンっ!! バリバリバリバリバリバリっ


空に雷雲が浮かび、雷が一直線に落ちた。


焦げた....、効いたかな?


「アレク、雷有効みたいだよ。一番効いてる。」

もぐもぐ、ビヨーン、もぐもぐ、ごっくん。


「わかった。次、闇を使う。効くか見といてくれ。」


魔法陣を浮かばせ、真ん中に悪魔の名前を記す。

ナイフで指を切って、血液を一滴垂らす。


『闇魔法デモデウス《悪魔》 ブラッディシャドウ..。』


血を媒体にして、魔法陣から黒いモヤが勢いよく対象に襲いかかる。


グァぁぁぁぁっ!


アイスゴリラが、絶叫した。


「一番効いてるね。難点は、やっぱり媒体が必要で準備に時間がかかるところだね。

はい、チーズパン!美味しいよ♪」


「ありがとう。もぐもぐ、もぐもぐ。

ネフィ、雷だとどんぐらい効いた?」

腹ごしらえをしながら、検討する。


「うーん、12、3発当てれば死にそうだったかな。」


そうか、そうなると雷で足止めしてグラビティで拘束。

最後に闇か時空かってとこだな。

時空は、死ぬまで時間がかかるからな。

無酸素空間に突っ込むけど、窒息死するまでの時間わかんないし。


「ネフィ、今から時空で殺すわ。HPがなくなったら教えてくれるか?」


「うん、いいよ〜。はい追加のお肉。塩と胡椒振ってるから美味しいよ。」


『結界!酸素除去....98%、99%、完了。維持』


ネフィからの肉をもぐもぐ食べながら待機すること8分。


「アレク、ようやく死んだよ。

すごい肺活量だったね。ところでどうやって解体する?硬いでしょう?」


「風で傷がついたから、切れないってことは無いと思う。ネフィのブルウィップに魔力を通して何回か振り下ろしたら切れるんじゃないか?首だけ切断して後は埋めていこう。」


「了解。じゃあ、ちょっと行ってくる。よっこいせっと。」

スタスタとアイスゴリラに近づいて、魔力で赤く染まった鞭を振り下ろす。


バキっ

バキっ バキっ バキっ ぐさっ バキっ バキバキ


何十回も振り下ろしてようやく首が落ちた。

胴体は、邪魔なので土魔法で体を埋めて討伐を完了とした。


イエティも見れたし、討伐もできたから後はギルドに報告して終わりだ。


もう一体は知らん。

帰りがけに、いたら討伐してやろう。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る