手のひら返し
50
ここ最近の中では珍しく俺は朝、普通に起きてリビングでテレビを見ながら朝食を食べていた。
メニューは俺だけ別で肉中心。筋肉増強に良いらしいサプリと飲み物はプロテイン。
どうやら昨晩ブラックさんやブルーが言ってた通り、警察が被害を最小限に抑えるために協力してくれていたみたいである。
コメントも比較的まともな事を言っていて、モンスター退治はサイレントや警察に任せ興味本位で近づくなと警告してくれていた。
「へー。テレビって結構まともなこと言ってるんですね?」
このなにげない一言に紫先輩も愛衣先輩もあからさまに不機嫌な顔になった。
「知らぬがなんとやらとは正にこのことだな」
「そうだよ克斗君! 昨日まではずっと克斗君達悪者扱いだったんだからね!」
「あぁ、そうだったんすね」
まぁ、掲示板見てれば自分達がどう思われてるかなんてわかってたし、むしろテレビだけがまともなこと言ってるのかな? なんて思って見てたがそうでもなかったらしい。
「なぁ、克斗。この騒ぎはいつ終わるのか見えているのか?」
「はい、レベル3のボスを倒せば終わりっすね」
ノエルと一緒に戦えなくなるのは少しさびしい気もするが平和が一番なのは理解しているつもりだ。
「そうか……本当にそれで終わるのだな?」
「正確な事は、なんとも言えないっすけど。レベル3のボスを倒すとカネルって人の出来る事ならどんな願いでも叶えてくれるらしいんですよ。それでブルーさんが警察に自首してくれってお願いする予定なんで、それで終わりですね」
「なるほど、ではブラックの望みは国家転覆と言ったところか?」
「なんで分かるんすか! って、ゆーかブラックさんの願いは自分達の事を警察に言うなって事っすよ!」
「そりゃ当然、貴様達がまとっているバトルスーツに戦略的価値があるからさ。量産して兵器転用くらい考えるのが普通だろ?」
「それはこんちゃんだからだよ! 普通は警察に捕まったら終わりでしょ⁉」
「ですよね…」
「戦いが終わっちゃうのがつまんないって気持ちは分かるけど、せっかく良い身体つきになってきたことだし格闘技でもやって発散すればいいんだよ!」
「格闘技っすか……」
相手の攻撃が分かるとか卑怯過ぎてとてもそんな気になれなかったし、そもそもノエルと一緒じゃなければ意味がない。
「だったらなにかノエルちゃんと一緒でも楽しめるもの探すしかないね」
「そうすっね。考えてみます」
*
本日1回目のモンスター発生場所は昨日と同じく南川公園だった。
違うのは発生場所が空中5メートルくらいの高さだという事の他に数が30体。攻撃方法が、突撃に、かみつき、毒もあって動きも早いみたいだ。
さらに半無差別攻撃型ってのもめんどくさそうである。空中を自由に動けるとしたら取り逃がした時にめんどくさいことになる。
そこら辺をブラックさんやブルーだけでなく、なぜか今日も刀片手に現れた柊さんに伝えたところ――。
最悪の場合を考えて遠距離射撃で打ち落とす準備をしてくれるそうだ。
ある意味頼もしい仲間とも言えた。
ちなみにステルスモードを解除してるのは俺だけ。ブラックさんもブルーも他の人には見えていない。
きっと何も知らない人がみたら、俺は誰も居ないところに話しかけている変質者かなにかだろう。
作戦としては、今日も先手必勝。ブラックさんとブルーが跳んで敵を1体ずつ撃破。寄って来てくれたら毒攻撃に注意しながら各個撃破という感じである。
問題は、敵意を向けてくれなかったヤツらである。
そうならないためにも、ブラックさんとブルーには左右に分かれてもらい中央部分に向かって思いっきり敵を吹っ飛ばしてもらう予定だ。
そして予定時刻――。
現れたのは蜂によく似たモンスターだった。違う点があるとしたら大きさがバスケットボールくらいあり、顎がクワガタみたいになってることだろう。噛みつかれて毒攻撃とか食らったらダメージでかそうである。
出現と同時に、ブラックさんの回し蹴りとブルーのバーニングナックルが炸裂。かなりの敵を引き付けてくれたが5体ほどが東の空に向かって飛んでいく。
「ちくしょう!」
反射的に持っていた刀もどきを投げつけていた。届かないかもしれないと思っていたのに回転しながら群れの中心辺りを通過してくれた。
「あれ? 俺ってこんなに力あったっけ?」
【当然。レベル上昇による恩恵と紫お姉さんのおかげ】
なるほど、帰ったら紫先輩にはお礼をしよう。
戦闘時は200%の力が基本になっている以上。基礎的な力が上昇すれば今まで出来なかったことが可能になる。嬉しい誤算だった。
向かってくる敵モンスターに対して、の装備もある。
「ノエル! ソードモード展開だ!」
【了解。外骨格装甲変形ソードモード展開】
あいかわらず切れ味は抜群だった。
敵モンスターを3体撃破したところで残りの2体は空中で制止し本物の蜂なら針のあるであろう尻の部分を俺に向けている。
【警告、敵モンスター毒攻撃を選択】
「ノエル! シールドと同時展開は可能か⁉」
【肯定。昨日得たポイントで外骨格装甲変形機能のレベルを上昇済み】
「だったらシールドも頼む!」
【了解。外骨格装甲変形シールドモード展開】
盾で身を防ぐと毒液がかかっている感触がする。結構な勢いだ。
横目で見えたブルーは結構苦戦しているみたいだった。一番数多く引き付けてくれたんだから当然だろう。早く加勢に行かなければならない。
「ノエル! シールド無しで相手の毒攻撃はどのくらい耐えられる⁉」
【回答。約10秒が限界と判断】
「ちっ」
思ったよりも時間は短い! 空中を比較的自由に飛び回れるブラックさんと違いブルーは地上での戦闘に特化したタイプ。上手く立ち回ってはいるが時間に余裕があるとは思えない!
【報告。敵モンスター毒攻撃が無効と判断。突撃攻撃を選択】
「よし! シールドを収納してくれ!」
【了解】
あれだけ重い物を軽々と飛ばせたんだ! 今の俺だったら2メートルくらいなら跳べるはず!
思いっきちジャンプして敵モンスターを2体同時に刀で薙ぎ払う。近い位置に居てくれてラッキーだった。
着地と同時にブルーに向かって、猛ダッシュ!
背中ががら空きの相手をジャンプして3体連続で撃破。
「ブルーまだ余力はあるか⁉」
「あぁ‼ まだやれる! 俺が引き付けてる間に片付けてくれ!」
「分かった!」
どうやら今回のモンスターの特徴として一度狙った獲物は徹底的に狙う習性があるらしくひたすらブルーに向かって毒攻撃を仕掛けていた。
そして、そのタイミングは空中で制止している的でしかない。俺はひたすらジャンプを繰り返し残りを撃破。
それとほぼ同時にブラックさんも最後の1体を撃破していた。
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