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 昨日適当に書き込んだショッピングセンターの3階に来ていた。

 お目当てはファンシーでカラフルな空間だった。

 巡回している警官も何人か見かけた。

 逮捕案件な気がした。


「あの~。俺……ここに入って捕まったりしないんですかね?」

「案ずるな、ホワイトデーの時なんか彼女にプレゼントするために足を踏み入れる男性だってそれなりに居るんだぞ」

「そうだよ! いくらノーブラの感触が『これはこれでいいもんだって』思ってたって私には必要不可欠な物なんだからね!」


 左腕に感じる確かなふにょんとした感触――最高である。

 でも、もっと嬉しいのは左腕から展開されるシールド。

 あれのおかげで毒攻撃の直撃を受けなかったんだから、やっぱり愛衣先輩のおっぱいには色んな意味で感謝しなくてはならないだろう。


「わかりました、付き合います」

「何か勘違いしとるみたいだが選ぶのは克斗…貴様だぞ」

「え? 冗談ですよね?」

「惚れた男の好みを知らんでどうする?」

「そうだよ克斗君。すっごいエッチなの選んでもOKなんだよ!」

「……わ、分かりました。心して選ばせてもらいます」


 はっきり言って、何が良いのか悪いのかさっぱり分からなかった。

 上だけの物もあればあ下だけのもあるし上下セットじゃなければ買えないものもある。

 そこで想像してみることにした。


 眼つきのキツイほっそりとした美人が満足げな顔で俺を見ている。

 部屋に置かれたファンシーグッズと対象的な大人びた貫禄。ゆえに大人びた下着を選んで買い揃えてきたのだろう事はなんとなく分かった。

 でも、違うと感じた。

 脳内のフォルダを開けば綺麗な裸体が先輩と重なる。

 純粋に美しいと思った。今見ても性的な興奮よりも感動の方が遥かに大きい。

 そこにしぶめの下着を合わせると確かに似合ってはいるし、かっこいいと思う。


 ――でも、やっぱり違う!


「どうした。ほれほれ、さっさと選べ」

 

 きっと顔を赤らめた俺が面白くて悪い笑みを浮かべているのだろう。

 だから素直に――自分の心に従って白をベースにピンクのチェック柄をあしらったキュートな感じの物を手に取って渡した。

 やや、大きめのリボンもチェック柄で、幼い感じもするが良く似合っていると思った。


「じゃあ、コレにしましょう」

「は? 確かになんでもいいとは言ったがソレはさすがに似合わんぞ」

「そんな事ないっすよ! 絶対似合いますって!」

「ほー、ではなにを根拠に絶対だと言うのだ?」

「や、だって紫先輩は可愛い系の方が似合いますから!」

「は…?」

「だから、こういった下着の方が先輩は可愛く見えるってことですよ!」

「か、可愛い? 私がか?」

「はい、絶対に可愛いです! だから今日はコレにしましょう!」

「ぁ、うむ、わかった。ここで引いたら私の負けだからな」

「こんちゃん! 試着室空いてるよ?」

「んぐ……」

「まさか、せっかっく克斗君が選んでくれたのに見せてあげないとかありえないよね?」

「スマン時間をくれ。よもや肌を見られる以上に恥ずかしいものがあるとは思わなかった」

「すごいよ克斗君! こんちゃんがこんな顔するの初めて見たよ!」


 普段悪い笑みばかり浮かべている紫先輩が照れて下を向いているのだ。


「愛衣先輩が見たことないなら、相当レアなんでしょうね」

「うん! こういうのを自ら墓穴を掘るって言うんだよ!」

「言ったな愛衣! 貴様とて同じ思いをするやもしれんのだぞ!」

「私は平気だもん! 克斗君がどんな性癖持ってても大丈夫だもん!」


 この際、性癖とかは関係ない。なぜならば最大の感謝をもって選ばなければならないからだ。

 なにせおっぱいに助けられた命である。中途半端な気持ちでは選べない!

 そこで手にしたのは、ちょっとしぶめな大人びた感じのするものだった!

 ――のだが……却下された!


「私もこんちゃんみたいに可愛い系のがいい! ずっとそういうのに憧れてたんだよ! だからお願い! 今日だけは可愛いのにして!」

「おいおいどうした愛衣。私が見てもその黒薔薇の模様は良いと思うぞ」

「せっかくなんだ、付けて見せてやればいいじゃないか?」


 可愛かったのは少しの間だけ。いつもの悪い笑みを浮かべている。


「う~! わかったよ! それも買うからお願い克斗君! 私にも可愛いの選んで!」


 ぐいぐいと押し付けられるふんにゃりとした感触に負けたわけではない。

 感謝の気持ちを込めて再度選び直しただけなのである。フリルをたくさんあしらった可愛い物を。


「えと……これは、さすがに可愛すぎかなって思うけど……うん、付き合って」


 言われるまま試着室に引きづり込まれてしまった。

 そこには大きな姿見があって、思った以上に広い空間だった。


「んとね、特に上は店員さんからアドバイスもらいながら選ぶことあるからちょっと広めなんだよ」

「へ~。そうなんですね……」


 会話しながらも愛衣先輩は、一切のちゅうちょなく俺の見てる前で着替えてしまった。


「えへへ。やっぱり可愛すぎかな?」

「そうですね、ちょっと幼く見えちゃうかもですね」

「でも、こういうのに憧れてたのも事実なんだよね」

「だったら、色違いも試してみます?」

「ん~ん、いい全部買ってくから」

「ちょ、ちょっと待って下さいよ! 結構な値段になりますよ!」


 俺は知らなかった、正直値札見てビビッていたくらいである。


「だって克斗君、ピンクも黄色も青も見てみたいって思ってくれたでしょ」

「実際に見てみないとどれが一番いいか分からないですし……」

「お金の事は気にしなくていいんだよ。近々臨時収入が入る予定だから」

「そうなんですか?」

「うん! だから今日は散財目的ってのもあるんだよ!」

「まぁ、愛衣先輩がそれでいいなら…いいですけど」

「えへへ。ありがとね選んでくれて」

「こちらこそです、これからも愛衣先輩のおっぱいには、お世話になる予定ですから」

「ふぇ? ゴメン今の意味分からなかった」

「いや、実はですね……」


 理由を説明すると、それはそれで満足してくれたみたいで。愛先輩は上機嫌だった。


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