心に咲くプリムラ

☁︎︎

11月2日

夏から秋、秋から冬へと変わるこの時期が

私は好き。秋でも冬でもないこの感じ…

夏は暑さに耐え秋に心身を休め、冬は静かな冷たさと向き合う。

リラックスした心と体に、冷たい北風は心地よい何かを目覚めさせてくれる。

外に出るのも、窓から外を眺めるのも、何一つ変わっていないはずなのに、ゆったりとした気持ちでいられる。


「まーちゃん。温かいお茶飲むかい?」

「うん、飲む。」

「今いれるからこっちおいで。」

おばあちゃんは楽しそう。それを見てるだけで、私も楽しくなる。

「はい。好きな番茶だよ。熱いからね。」

「ありがとう」湯呑みの底に、手を添えて持つのが一番熱くないと知ってから常にその持ち方。熱いうちに、まず一口。

おばあちゃんは急に笑いだした。

「がはははっ。お茶菓子のひとつも無いのに、幸せそうな顔するねぇ。その顔だーいすきだよ。」

また豪快に笑うと、目尻に沢山皺が寄る。

私も笑った…つもり。

心では笑ってるはずなのに、少しだけおばあちゃんの顔が悲しそうに見える。


「…まーちゃんは、パズルのひとつのピースなんだよ。たったひとつ無くしたら完成しない、大事なひとつ。だけどね。それは、全体を見たらの話でさ…。まーちゃんからしたら、見つけてもらえない葛藤がある。周りばかり気にしてたら自分なんかちっぽけでしかないけども、自分からしたら似たようなのしかない中で、なんで自分だけ?と思うのよね。

それは、自分の視点でのこと。他にも、同じ気持ちを感じてるかもしれないけど…そこまで考えてたらパズルじゃなくなっちゃうねぇ。がっはっは」

「おばあちゃんは?」

「ん?…あぁ、私?私もまーちゃんと同じかねぇ。でも、寂しいとか考えちゃいないよ。これでいいんだー!これが自分なんだー!って、胸張ってればなぁんにも怖くも辛くもない。」


たまにおばあちゃんがする話に、私は聞き入った。話す内容は似ていて、前はぬいぐるみ。その前はお茶。

今思えば、比較しつつ、否定をしないことを教えてくれたのかな?と思う。

新品のぬいぐるみと黒ずんだぬいぐるみ

味と香り共にいいお茶と、出がらしや安いお茶

どっちが良いかなんて言わない。

それぞれに思う事を、遠回しに教えてくれるおばあちゃん。

私はそんなおばあちゃんが大好き


「おばあちゃん、本読むの好き?」

私は、おばあちゃんの後ろにある本棚を見て言う。

「本はあまり読まないねぇ…。嫌いではないけれど、目が疲れちゃってね。これの殆どは日記。他愛もないこととか書いてたら、なんだかんだやめれなくなっちゃってさ、はっはっは」

「…私も書いてみたい。」

おばあちゃんは、お茶を一口飲むと

「まーちゃんが良かったら、文通みたいにお互い書きあうかね?」


「やるっ!」


「がっはっはっは!そうこなくっちゃ!

じゃあ、私が先に書くから、書いたらまーちゃんに渡すね。あぁ、なんだか楽しみだ。」



メモ※塗りつぶされた事により、白紙である裏の筆圧より解読。読み違いの可能性有り



11月2日 トキ 天気くもり

まーちゃん、初めての事に何を書いていいか分かりません。

今日は、風が冷たく、時折雨が降ってました。

その後にちーさな虹が出ていたのわかりましたか?きっとまーちゃんの部屋からはよく見えたかと思います。

虹は、人や角度で色が変わって見えるそうです。

おばあちゃんには、やさしげな色に見えました

何色に見えたかな?

お返事楽しみにしています。



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