第3話

俺が五歳になってしばらくして、義母バイ子が男児を産んだ。

その男児には、スネリオという名前が付けられた。


まさか……。

これほど早くに男児が生まれるとは。

普通、何人か女児を挟むもんだろ。常識的に考えて……。


『父の唯一の子供』という地位が覆されるのはしょうがない。

健全な夫婦の下に、子供が産まれるのは必然だし、喜ばしい話だから。

俺の心はそこまで狭くはない。


だが、男児となると、ちょっと待てと思う。

女児になる確率も五割程度あるはずなのに。

なぜ、こんなにも早く男児が生まれてしまうのだ。


俺のヒキの悪さを呪うしかないということか。

そういえば、前世でも、俺のヒキって悪かったわ。

そもそも、こんなクソな家に転生すること自体、俺のヒキの悪さを証明している気がするし。

くそー。テンション下がるわー。


まぁ、そのつまり。

男児が産まれてくると、俺にとってどんな悪いことが起こるかというと。



そのうち廃嫡されるってことですね。うん。


スネリオが身体が不自由だとかの特殊な事情がない限りは、そのうち俺は廃嫡されて、彼のスペアに回される。

日本の会社で例えるなら、次期社長と目されていた副社長が、常務執行役に降格されるような感じだ。


はぁー。

冷や飯きたわー。



そして、スネリオの誕生を機に、屋敷のなかでの俺の扱いはグレードが下がった。

思ったとおりだな。


それまで俺に家庭教師としてついていた先生が、ほとんどいなくなってしまった。


なぜ家庭教師をつけるのかというと、貴族の嫡男たるもの人の上にたつための学問を修めなければいけないことに加え、成人前に通う王立学院で恥をかかないようにするためだ。

もし、王立学院に通った嫡男がアホであることが判明した場合、その家は将来的にいろいろ不利益を被ることがあるからね。


一方で、嫡男でないということであれば話は変わる。

高額な教育投資との見合いの観点から、スペアにはそこまでの教育をしないという選択も可能となるわけだ。



……まだ、俺、廃嫡されてないんだけどなぁ。

すでに廃嫡が決まったかのような措置がされると、地味に凹むわ。



まぁ、とはいえ、ここまでは起こりうる想定の範囲内だ。

男児が産まれるか、女児が産まれるか、いつ頃産まれるのか。

そういうことをパターン分けしておけば、心の準備が前もってできて良いですねってお話です。



だが、俺の冷や飯街道はこんなところでは止まらなかった。



スネリオを産んで、ほどなくして義母バイ子が再び妊娠をしたのだ!!

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