第25話 その7

 あたしが通う私立聖真津洲留高等学校は、以前女子校だったのだが、その頃にさんごちゃんは通っていた。

つまり、あたしの先輩にあたるわけでもある。


ついでに言うと、あたし達の現担任である北方先生は、さんごちゃんが3年生の時の担任だ。


「あたし達の事は知っているの? 親戚だってこと」


「たぶん知らないと思う。名字が違うし、姉さんは違う高校に行ってたからね。それで、うちの高校は学園グループのひとつで、私の所属は本部なの。つまり先生じゃないんだ」


「え、でもたしか教員免許持ってたでしょ。大学も教育学部じゃなかったっけ」


「そうだけど、先生として教鞭をとる方じゃなくて、学校経営の方の立場なの。つまり本部から母校に、監査役として来ているのよ。ほら、あげはの好きな刑事ドラマで、眼鏡かけてラムネ食べてる人いるじゃない。あの人と同じ役割りよ」


「つまり、先生や学校のお目付け役ってこと?」


「そういうこと。だから私が積極的に動くと公けになっちゃうからね。あとは個人的に母校がかわいいから、大ごとにして本部に目を付けられたくないのよ」


それで丸投げか。大人め。


「ちなみに今んとこ、どうやるつもりなの」


あたしはシューガール達と共に、生徒会に働きかける話をした。


「ま、それが妥当ね。ほら見なさい、出来るでしょうが。結果が出たら、すぐに廿日さんに連絡するわ。それで解決ね」


そううまく解決してほしいな。


「ただいまー、さんごちゃん、久しぶり、元気してたかい」


「お義兄さん、お久しぶり。先にやらせてもらっているよー」


そのまま乾杯しそうなお父さんに、まず風呂に入るように叱る。それを見て、さんごちゃんがケタケタと笑う。

お父さんが入浴中に、お母さんも帰ってくる。2人とも早く帰れるじゃん、まったくもう。


「さんごちゃんは、泊まっていくんでしょ」


缶ビールと一緒に持ってきた大荷物を見て、そう訊くと、よろしくねと返事が返ってくる。

リビングに料理と晩酌の用意をしたあと、自分の部屋に客用のお布団を敷いて用意する。


階下に戻ると、すでに飲み会が始まっている。


「あらためてさんごちゃん、ひっさしぶり~、あげはの入学式以来だっけ」


「違うわよ、正月に実家で会ったじゃない」


「お義兄さん、私のこと見てないでしょう。昔から姉さんのことばかり見てたもんね」


「うん」


 普段は頼りない感じのお父さんだが、ひとつだけ尊敬というか感心するのは、お母さんにずっとベタ惚れなところだ。

もし結婚するなら、いつも好きだと言ってくれるそういう人がいいなと思う。


もうすぐただの酔っぱらいになって、幻滅するだろうけど。


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