第24話 その6

 放課後、両親に家庭訪問があることをメールして、しじみを迎えに行く。今日はたてはは来てなかったので、保育士さんにもし来たら先に行ったと言伝てをして帰る。


 家に着きルーチンワークをしている時に、たてはが帰って来た。今日は友達のところで遊んできたそうだ。


「姉ちゃん、いつもより忙しそうだね」


「夜にお客さんが来るからね、少し早目に家事やってんの」


ふーん、と言っただけで部屋に戻っていく。忙しいと言ったんだから大人しくしとけよ、と思ったが、どうしてどうして、ちゃんとしじみと大人しく遊んでいるわ。さすがお兄ちゃん。


 両親ともに早く帰るとメールが返ってきた。

 あたしはたては達の夕食とともに、別の料理も作っているとチャイムが鳴った。


ピンポーン


エプロンで手を拭きながら玄関を開けると、そこには葵先生がいた。


「おっじゃまっしま~す」


「はいはいどうぞ、今日は何で来たの」


「家庭訪問」


「じゃなくて、クルマで来たかって聞いてんの」


葵先生は言葉で返事をせずに、手荷物から缶ビールを取り出し見せる。はいはい、呑んでいくからクルマじゃないってことね。


「ツマミは作ってあるから」


「ありがとー、さすがあげは。姉さん達は?」


「連絡済み。早目に帰るって」


「あ、そう。じゃ、先にひとりではじめるか」


会話の内容でお解りだと思うが、葵先生ことさんごちゃんは、あたしの叔母である。細かく言えばお母さんの妹だ。ついでに言うと34歳独身。


「たては~、しじみ~、ひさしぶり〜、お土産だよ~」


「わあ、プリンだ。ありがとう、おばちゃん」


「あげない~」


「ありがとう、さんごさん」


「よし」


「そんな事にしても、間柄は変わらないでしょ」


「あげはも、この歳まで独り身になると判るわよ」


それはあたしがその歳まで独身だ、と言いたいのだろうか。


「さんごちゃんは当たりが厳しいんだよ。今日だってそうじゃない、二重人格かと思ったわよ」


「ちゃんと公私の区別をしているだけじゃん」


たては達がプリンを食べた後、歯を磨かせて部屋で寝るように追いたてる。


「さてと、お母さん達が帰ってきたら話にならないから、今のうちに訊くね。なんであたしにふったの」


「昼間の事? 言ったまんまよ。たかがスカートめくりでしょ、生徒達で片付ければいいじゃない」


「先生が、問題になりかけているってHRで言えばいいじゃん」


「立場上、私からは言えないの。前に言ったでしょ」


なんでだっけ? なんか難しい事を、酔っぱらいながら言ってたのは覚えている。けど、内容は覚えていない。


その事を話すと、やれやれと言いながら説明してくれた。

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