第26話 女×3=姦しい
千里と千鶴と凛は健太郎を置いて三人で風呂に入っていた。
浴槽は小さな温泉と言われても納得できるほど大きく、円形のものだった。三人が足を延ばしてもギリギリ収まる程度には大きい。シャワーも二つあり、サウナもある豪華なお風呂だった。
「それにしても、けんたろー君、噂以上に面白い子だねー。最初は少しエロい目で見てきていたし、どうしようもない思春期男子かと思っていたら、超絶美女の私のことをブサイクとか言うし。」
千鶴は楽しそうに健太郎のことを話す。
「もう、千鶴がからかい過ぎなんだよ。千鶴が綺麗でモテすぎるから男子のことを嫌っているのは分かるし健太郎君がHなのも認めるけれど合意もなしに何かをするような子じゃないよ。」
千里は中々酷い評価を健太郎に下す。それでも、彼のことを嫌っているわけではないとわかる優しい声音での健太郎の評価であった。
「でも、凛ちゃんとか千里のことをいきなり可愛いとか言っているのはどうなの?」
「ああ、その原因なら多少はわかりますよ。健太郎って昔から事実だと思うことは平気で言っちゃうんですよね。中学の時なんて学校の成績が学年三位でクラス一位だったんですけど悪気もなく『自分がクラスのなかで一番頭いい』って言っていたんですから。」
「なるほどね。客観的にみて美人だと思ったならば、美人って言えるってことか。って、何で私がブサイクなの?私、今まで小学校の時も中学の時も高校の時も大学入ってからも学年で一番モテてきたし、高校の時なんて学内学外問わず毎日のように告白されていたぞ。」
「ああ、それは同族嫌悪的なところとかもあるのかもしれないですね。悪びれもせずに自分のことを美人って言っていることとか。自分がクラスのなかで一番頭いいとか言っちゃう健太郎に似ていますし。」
「いや、だって事実じゃん。こんだけ告られていて自分のことを綺麗じゃないとかウソになっちゃうじゃん。」
事実は遠慮なく言う所はやはり健太郎と似ていた。ジト目で千里と凛は引き締まった肉体の千鶴を見つめる。
「まあ、でもそうかもね。千鶴ちゃんは凄く綺麗だよね。」
とは言っても、そのプロモーションと日本人離れした整った顔を見てしまえば肯定せざるをえない。二人は羨望の眼差しも向けていた。
「ああ、それと私のせいもあるかもしれないです。」
そして、何かを思い出した様子の凛が珍しく少しだけ自慢するように言う。
「どういう意味?」
「中学の時に学年で一番可愛い子がいたんですよ。人気読モとかもしていた女の子だったんですけど、その子のことも『あんなブサイクの何がいいんだか。あんな奴が学年一モテるとか、世の中って言うのはバカしかいねーな。』とか言っていたんですよ。入学当初は『あの子読モやっているんだって。めっちゃ可愛いじゃん。あんな子と付き合いたいわ。』とか言っていたくせに。」
下手な健太郎の物まねを交えて凛は話す。
「それで余りにも正反対のことを言っているものだから、気になって色々探ってみたらその子が私の悪口を言っていたらしくってそれをみてから人目もはばからずにブスって呼ぶようになったらしいんですよね。だから、もしかしたらその子と千鶴さんを重ねてしまったのかも。」
そう言う凛はここにはいない健太郎を見つめるように目を細めて話す。
「なるほど、なるほど。それで凛ちゃんは健太郎君のことが好きになったと。」
「いや、初めて意識したのは小三の、、、って何言わせるんですか。」
お風呂のせいかゆでだこのように全身を赤らめて凛は叫ぶ。どうやら、珍しく自慢気に自分のことを語っていたために、興が乗ってしまい思わず口を滑らせてしまったようだ。
「ほー、小三の時に何があったんだい。」
「もう、千鶴ちゃん聞き過ぎ。」
その時、ようやく千里が千鶴の耳を引っ張って千鶴をとめてくれる。凛はホットため息をつく。
「でも、あとでお姉さんにだけこっそり教えてね。」
千里と言えど花の大学生である。やっぱり気になったのかこっそり凛に耳打ちをしてくる。
「何もないですから。」
年上の女性たちから逃げるように洗顔しにシャワーに向かう。
(あれ?ホントに千鶴を止めようとしただけなのに何で凛ちゃんにこっそり聞こうとしちゃったんだろう?もしかしてプールの時の晩に言ったように健太郎君のことを自分の王子様とか思っちゃっている?それで凛ちゃんとのエピソードが気になって凛ちゃんに嫉妬しちゃった?
ないない。
あれはきっと酔いが残っていただけ。年下の教え子の男の子だよ。そんな風になっちゃだめだよ。凛ちゃんだってあの様子じゃやっぱり健太郎君のこと好きそうだし・・・
応援しなくちゃダメだよね。幼馴染ってことは、きっと随分前から好きなんだろうし、それに比べたら私のはどう考えても一時の気の迷い。
それに、私なんか、凛ちゃんみたいに素直で可愛らしい女の子でもないし、千鶴と比べると顔も整っていないし。胸だって二人よりもないし。)
そうやって落ち込む千里はプールの晩にみた健太郎のエロ本の好みを思い出してしまったからなのか。女性を象徴する場所の自分の慎ましさを花の女子大生の一人としてな嘆いているだけなのか。
千里は深く深く二人に気づかれないように二人の胸をみながらため息をつく。
女三人よれば
お風呂を出るころには二一時といういい時間だった。
一人寂しく勉強をしていた健太郎が怒ったように拗ねたのは言うまでもない。
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