VSデーモン
「ホーリー・ソード」
すかさずセレンが俺とメリアの剣に魔族へのダメージを上昇させる聖なる魔法をかける。
「うーん、そちらの方もなかなか厄介ですねぇ。サモン・インプ」
そう言ってデーモンが指をぱちんと鳴らすと、突如空中に羽が生えた小悪魔が十体ほど出現し、セレンに襲い掛かる。
「ホーリー・シールド」
慌てて防御魔法を展開してどうにかセレンは攻撃を防ぐがそれで手いっぱいだ。メリアもセレンを囲むインプたちに斬りかかるが、インプはちょこまかと動き回ってメリアの攻撃をかわす。こちらの決着が着くのは時間がかかりそうだ。やはりこのデーモンは俺一人で倒さなければならないということか。
「ではあなたはこの私が直々にお相手してあげましょう。どうもあなたは剣が得意なようなので、私もその土俵に立ってあげましょうかね」
デーモンが言い終えると、手元にすらりと長い長剣が現れる。しかし鍔や柄の部分は何かの骨で出来ており、おぞましい気配を放っている。
「舐めたこと言ってくれやがって」
俺も剣技のサポート程度の魔法は使えるが、デーモンが相手であれば下手な小細工はしない方がいいかもしれない。俺は剣を抜くとまっすぐに斬りかかる。
デーモンは一体どんな魔法を使って応戦するのかと思ったが、意外にも普通にこちらに剣を振り降ろす。
カキン、と音を立ててお互いの剣が交差する。デーモンは特に怪力な訳でもなく、普通の剣戟だ。
が、そう思った時だった。デーモンの剣に触れるとセレンが掛けてくれた魔法は解け、さらに触れたところからみるみるうちに俺の剣が黒ずんでいくのが見える。
俺の剣は魔法耐性を高める加工をしている上にメリアの強化魔法まで掛かっている。が、それらを無効にするほどの力が敵にはあるらしい。
「何だこれは」
「この私が使う剣はこれまで数々の魔物や人間を屠ってきました。そのため、彼らの怨念が濃縮され、強大な呪いの力となっているのです」
「何だと?」
俺は慌てて自分の剣をデーモンの剣から離して距離をとろうとする。
「他人が一生懸命作った村を焼いておいて逃げるとは感心しませんね」
そう言ってデーモンが剣を振るう。その言い草はおもちゃを壊された子供のようで、あれほどの村をおもちゃ感覚で作っているというこいつに俺は少しぞくりとする。
動き自体はそこまで大したことないが、少しでも触れれば剣に呪いがかかる。そのため、俺はかわすだけになっていき次第に後退していく。
やがて俺は背後が斜面になっているところまで追いつめられる。
「これで終わりですかね」
そう言ってデーモンが剣を振りかぶる。
が、最後の一撃を決めにいったせいか、そこでわずかな隙が生まれる。
やるなら今しかない。
「喰らえっ!」
そう考えた俺は黒ずんだ剣を突き出す。
が、その瞬間デーモンはニヤリと笑った。そして攻撃の手を止めて俺の剣を受ける。
「まずいっ」
そう思った時にはもう遅かった。デーモンの剣と俺の剣が交差し、俺の剣に呪いが伝染でしていく。そしてボキリ、という鈍い音とともに俺の剣が折れた。
「さて、次はあなたです」
そう言って再びデーモンは剣を突き出してくる。気のせいか、先ほどまでよりも動きが速くなっている。もしや先ほどまでは俺の油断を誘うためにわざと動きを加減していたのだろうか。
「ダークブラスト!」
試しに魔法を放ってみるが、魔法はデーモンの剣に触れるとあっという間に霧散した。アリカの魔法と違い、俺の魔法は剣戟しながらでも使える取り回しの良さがあるが、威力は低く通用しないらしい。
やはり俺は避けることしか出来ないらしい。メリアとセレンがインプを蹴散らすのを待つしかないのか? 徐々に俺の中にあせりが生まれてくる。デーモンの残党の襲撃で殺された村人たちのことが記憶にフラッシュバックする。
が、そんな時だった。不意に後ろからばたばたという蹄の音が聞こえてきたかと思うと、一騎の馬がこちらへかけてくる。その上に乗っているのはギルムだった。
「ギルム!? どうしてここに!?」
「剣が完成したから一刻も早く使えるようにと届けに来た! オンドルによると採掘した玉鋼を採算無視で使ったこの国で最強の自慢の一本らしい! 受け取れ!」
そう言ってギルムは一振りの剣を俺に向かって投げる。
飛んできたのは日の光を浴びてきらきらと輝く玉鋼の剣であった。オンドルがついに打ってくれたのか。
俺はその柄を掴むとデーモンに向かって構える。
それを見たデーモンの表情が変わった。
「くそ……その剣は」
「ありがとうギルム、この剣ならいける気がする!」
俺が剣を振り降ろすとデーモンは先ほどの剣で受ける。
カキン、と甲高い音が響いて二本の剣が交差する。が、次にひびが入ったのはこちらの剣ではなくデーモンの剣だった。
それを見てデーモンはつまらなさそうに折れた剣を捨てる。
「これで形勢逆転だな」
「おのれ人間風情が。まあいいでしょう、かくなる上は上級魔族の魔力を見せてあげましょう」
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