衣・食・銃 全16話+おまけ

旧14話：到着

　ケイジが住む地区に着いた。

　が、門を通る時点でさっそく警備の者と悶着が起きた。三人の外見から、高リスクと判断したのだ。

　これに対してまずケイジが反論する。

「僕はここに住んでいます。普段はバスで通るところを、今日は歩いて帰っただけで、連絡したらわかりますよ」

　電話番号を渡したら、すぐに確認がとれた。

「失礼しました。残りのお二人も同様でしょうか」

　これに対してはレタが口を開く。

「私は運び屋ギルドで、彼を自宅まで送り届けるために来た。そして、こっちのスクシは私の助手」

　レタのドッグタグを機械で読み取る。これも確認ができたので通る許可を出す。ところがスクシは、住民ではないし、運び屋ギルドへの所属もしていない。助手と紹介されるのみで通行させて、もしトラブルが起これば、糾弾されるのは警備員だ。給料をわずかに減らされるだけで生活が破綻する、いわば人質を取られた状態だ。その背景では、スクシを追い出すほうがリスクが小さいので、警備員はそのようにした。

「いいよ、俺はここまでだ」

　スクシは早々に諦めて、しかし清々しい顔で言った。

「レタ、楽しかったよ。次に会えるなら、同業者になっていたいな」

　ケイジも、レタも、程度の差はあれど寂しさを顔に出した。

「ここまでありがとう。語り合う相手ができて楽しかった。また会う日のために、話題を蓄えておくね」

「おかげで助かった。ありがとうね。生きてまた会おう」

　三人とも、ここで言葉を切り上げて、逆の方向へと進んだ。

　門を通ってから先の景色は、地面は歩きやすく舗装されて、植物が規則的に並び、どこよりも綺麗に整っている。ここにいたら災害があったとは信じられないだろうし、何が起こっても対処できそうに見えた。

　すれ違う人の服装も、動きやすさ以上に優先する基準を持っているようだ。武器が見えない程度に無防備でも平気な環境とわかる。

　ここからケイジの自宅まで、道の選び方は本人に任せて、レタは黙って後ろを追った。友人らしき人物とすれ違うときに、軽い挨拶をしている。相手はケイジの成長に驚き、何があったのか質問するが、ケイジは先に家へ向かうと答えた。歩く方向も違うため、次の機会を楽しみにすると言い残して別れた。

　いよいよケイジの家が見えた。道路の突き当たりで、直角に曲がる道を直進した先だ。ちょうど母親らしき女性が扉の前に出てきている。足を進めるほど姿が大きくなっていく。

　ケイジの歩みは落ち着いていて、もし左右の家から子供が飛び出しても衝突を防げる備えがある。確実に足を進める。最後の最後が過ぎ、完了するまでは決して気を抜いてはいけない。

　内側から門が開けられる。母親らしき女性は扉と門の間で、荷物も遮蔽物もなくして、到着を待っている。

　ついに、公道と私有地の境目を踏み越えた。

「おかえり、ケイジ」