文明開化の風が薫る、異人講師×大和撫子の伝奇浪漫・恋愛ファンタジー。

 開国まもない日本国の帝都を舞台に、悪魔殺しの異人青年と心優しい女学生の恋愛譚を描く、歴史浪漫風ファンタジー。
 作中で描かれる文化や習慣のみならず、綴られる語りの文すらも「明治時代風」に仕立てあげられた、こだわりの逸品です。

 帝都の寄宿女学校に通う士族令嬢・月乃は、父を亡くしてから、義妹の亜矢に虐げられる日々を送っていました。ある日、義妹の「お醤油がほしい」という我がままのせいで、夕暮れ時だというのに外へ買いに行く羽目になります。
 時刻はいわゆる「逢魔が時」。急ぎ帰る月乃の前に現れたのは、傷ついたフクロウと異形の影。そして漆黒のマントをはためかせる異人の男性――。

 運命的な出会いを果たした二人の関係と、二人の周りで起きる吸血鬼事件とが絡み合い、物語は進展していきます。ドイツ語を話すミステリアスなフリッツ氏と、亡くなった父が医師である月乃との間には何か縁があるようで……?
 丁寧に描かれた世界観と魅力的な人物たちが織りなす、明治文化風・恋愛浪漫譚。ぜひご一読ください。

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