転生したのに何も出来ないから、、喫茶店を開いてみた

序章

1 遭遇

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい



4/9 20:00


場所は都内某所


「おつかれ~」


「おつかれさあああん」


「おつかれさま~」


「おっつうう」


別に行き付けている訳でもないチェーン店

普通の居酒屋



新島 仁 (にいじまひとし)三十路

身長175㎝ 中肉中背のどこにでもいる様なサラリーマン

今日は連休前なので昔ながらの友人とオール覚悟の飲み会だ


「ジンのトコ相変わらずブラック会社なのか?」


古い友人連中からは「ジン」もしくは、、「にんじん」とか呼ばれている


「ん、あぁしばらく勤めて最近はやっとグレーゾーンになって来た感じかな」

(まぁ、後輩は入ってもすぐ辞めちゃうんだけどね)


事実、色々ギリギリだ

顧客の中にはそっち系の方々もいらっしゃるし、方針なんてのもあって無いようなモノ、、決して良い会社では無い

だけど、実際


世界はそうやって回っている訳で


俺も機会があれば、チャンスがあればと何度か考えている


考えてる だけ


『勢い』があるのならとっくに辞めている筈なんだ



「ははは、てっちゃんは結婚してからどうよ」

腰が重く、新しい事を始める覚悟が無いので目線と話を同時に逸らす


「うん、まぁ金貯める事になって来たからしばらくは飲み会参加出来なくなるかな」


「あ~それはしょうがないね~」


「ジンさんも結婚した方が良いですって 絶対!!」

二つ下の後輩 前田 通称マエバだ


「お前が結婚出来てるのが俺には不思議だっつの! 良いんだよ俺は金貯めないといけないんだし」


まぁ、半分が言訳である


「ジンちゃん前から言ってたよね~えっとなんだっけ、、あっ!あぁバー? だっけ!? 開くんでしょ?」

中学からの同級生ヒロだ

そんな思い出さないとってくらいに興味無かったのは少しショックである


「あ、うんそうそう、、いや喫茶店なんだけどね  高校の時から貯金してるから金も結構溜まったんだぜ?  でも伝手(つて)とか探さないとなんだよな~」


「え、マジっすか!?自分不動産系の友達いますよ? 紹介しましょうか?」


「いい、いいっ!自分で周り固めたいから」

(お前にそういうポジション踏まれたくないんだよーーマエバ君!!)


「マジっすか~」


(はいマジです、いいんだよ! 今じゃ  ないんだ)


「ま、まぁ!良いからほら、飲もうぜ! またしばらく飲めなくなるんだし今日は騒ぐぞ!?」



「「「「 カンパーイ!! 」」」」



知識は程々に付けたし金銭だって細々とやれるくらいは必至で貯めた

思いだって! まだ 冷めてない  と思う


、、理想通りになるんだったらやってるさ


勇気が無いだけ


踏み抜けないんだ


組織に多少長く勤めたからこそ


世間ってモノを知ってしまったからこそ





・・・・・・





20時から飲み始めたから7~8時間は飲んだか?


3~4、5軒目も行ったっけ?


久々に楽しかったけど、金も結構使ったような気がしないでもない


そりゃあ後半なんかほとんど覚えてる訳も無く


別に漫画喫茶とかでも良いとは思ったんだけど俺は帰れない距離じゃない

確か、始発なんて待ってられず一人ふらふらと歩いて帰った











4/10 9:00


(眩しっ!)

「っん˝  ん、う˝ うん?」

カラカラの口内で咳(せき)もろくに出ない


「いっつ」

変な体勢で寝た為か?首が痛きゃ背中も痛い


(っつ~か  喉 乾いたな)

男は瞳を開き、いつも通りの布団で目覚める



筈だった



(    ドコ    ココ    )


のどかな、、道端?  で寝ていた様だ


(え? え、コンクリートでもなく土?  嘘、何?どこ? どゆこと? 田舎?)

寝ぼけながらに昨晩の事を思考する

(ん~ちょっと待て?え~っと? 昨日は~連休前で~飲みに行って、3軒目はなんかガールズバー行ったんだっけ?)



ばっつり途切れてる



たまにやってしまうのも事実

とりあえずは誰もいない家に帰らないと


服は着ている、普段着だ

昨日の格好そのまんま、ジーパンにTシャツ、とちゃんと上着も羽織っている(間違いなく自分の物だ)

手持ちを確認するとポケットにはサイフ、スマホもある、、まぁ電池は切れてるのだが

中身は7666円、カード等も無事だ


(うん、五万は入ってた筈なんだけど  まぁ  しょうがないさ、とりあえず 喉乾いたな)


昨日の酒が残っているのもあるのだが何より外での寝起き

とにかくコンビニを探さないと


「んぉ っと?」

歩き出すか出さないか、半歩の足で何かを軽く蹴った


「あっぶね 何?」

目を擦(こす)り、強めに眉を寄せた


そこには何故か自宅にあったはずの赤いリュックが雑に転がっている


(エ、ナニコレ)


見覚えのあるパンパンのソレを恐る恐る開けると中身は金貨?と紙幣?の様な物が詰め込まれている


(コイン? と札束?  え、外国の金とか?)


・・・


(は?全く覚えないけど!?酔っ払って強盗でもした?  いやいやいや、日本円じゃないしありえない  よな?)



ジクン



訳が分からない状況の中

ふと右足に重みとヌルい温度を感じ、咄嗟に振り向いた


(エ、ナニコレ)


靴から右足首までを得体の知れない液体?  では無い、軟体の様な何かがまとわり付いている


「ぅあああっ!」


某Gブリを急に触れたかのような不快感がした

ので咄嗟に右足を地面に擦りつけてから距離を置く


ドロッとしたその『ヌルいヤツ』は再びこちらへと迫って来る!

様に見えるのだがかなりゆっくりとしたもので、特別俊敏に動く事は無さそうだ


(え、ヒル!? ヒルってこんなんだっけ? うぇキモ)

右足首辺りをさすりながらついついニオイを確認した

問題無い、生臭さでもあるのかと思っていたのだが、べたべたした感じすら残っていない


(大丈夫そうか?)

少しだけ皮膚に暖かさが残っているのだが炎症を起こしてるという訳では無い様子

そんな事なんかより、兎にも角にも気持ち悪い! まず逃げないと!!



ぶにゅ!!



後退る一歩目で踏み抜いたのは二匹目だ


「うえはあああ」

つい、変に高い声が出た


みっともなく手足をバタつかせ

見事に三十路がテンパりながら周囲を見渡すとソレは4個  いや、5個、6個もその辺に散らばっている


(何、どうしようどうしようどうしよう、どうするどうsr)


思考する中


バン!! バヂンッ!  バチン!!


急に破裂する様な音がした


「お~お~なっさけないのぉ、たかがスライムじゃないか」

目をやると真っ赤なポニーテールをした美女が大きめの『何か』を振り回している


ゼリー状だか軟体?の様なソイツらは次々と忙しく飛んだり弾けたり、、30秒くらいか

目の前でべっぴんさんがバッティングの練習でもしている様な状態である



「カカカカ、ほれ!片付いたぞ  んあ~?兄ちゃん変な格好しとるのぉ、どっから来たんじゃ?」

175㎝の自分と同じくらい

いや、少しだけ、少~しだけ高い位置から綺麗な顔がグイグイと近寄って来た


「へぁ は、はぁ あ!ありがとうございます」

恐らく年下なのだが接客業で磨いた咄嗟の低姿勢での完璧なお辞儀を披露する


「ぷっくく、しっかし変な声じゃったのぉ! うえはああって  ぶふぅ、あっはっはっは!」


「あ はは  えぇ、ハハ すいません」

小娘に笑われふと我に返ったがそれでもつい愛想笑いが出てしまう


「あれんなかにゃ毒持ちもおるからの~変な所は無いか?   く、くくっ、ぷくくく、、あっはっは!」


相当だったらしく、しばらく豪快に笑われ

少しだけ間が空いて


気付いた


(え、でもこの娘、よくよく考えると色々おかしくないか)


真っ赤な長髪を一つ縛り

和服に詳しくは無いのだが、着崩した法被の様なコスプレ

胸以外が細身な癖に大きな棒? 所謂(いわゆる)棍棒というやつなのだろうか?

某ほにゃららクエストの初期装備ってこんなんだったっけ?ってくらい大きな武器を携(たずさ)えている


いや、っつかどう見ても『丸太』なんだが


瞳もうっすら赤い、、し  え!? 今スライムって言ってたよな?






夢?


いや これ  もしや









転生なんじゃね!!?

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