幼馴染との甘々なひととき。







「ふわぁぁ!」


 このは、満開の花を咲かせるの巻。

 そんなわけで、俺たちは翌日の土曜にスイーツを食べにきた。

 互いに私服なのだが、このはは清楚なワンピース姿。店の中に入ると、その裾をひらひらと舞わせながら周囲を見回していた。


 最近できたばかりだという真新しい店舗の内装。そして、提供されるスイーツはどれも、一流のパティシエが作ったものばかりだという。

 これを学生でも楽しめる金額で出しているのだから、大したものだった。


「ここ! かずま、ここ!!」

「はいはい。窓際の席が良いんだな?」


 ショッピングモールの一角にあるこの店からは、ちょうどペットショップが見えていた。このはは昔から、もふもふとした生き物が大好きなのだ。

 そんなわけだから、子犬や子猫を見ながら甘いものを食べられる。

 この場所で過ごす時間は至福だろうと思った。


「で、どれが食べたいんだ?」

「これ!」

「そうか、これ――はい?」

「スペシャルビッグパフェ!!」

「………………」



 このはさん? あなた、無垢な眼差しで凄いこと言ってるよ?



「えっと、高さ一メートルのビッグパフェ。ふんだんな生クリームとバニラにチョコ、甘々の極致をお楽しみください――ははは、すごいなぁ。これ」

「ね! 凄いでしょ!!」

「……うん」



 いいや、ここで引き下がるのか橋本和真。

 愛おしい女の子の笑顔を、悲しみに歪めることができるのか!?

 それは――否! 俺は俺として、このはを愛でるのだと決めたのだ!!



「よし、頼もうか」

「うん!」



 笑顔の裏では、戦場に赴く戦士の如く。

 俺は覚悟を決めるのだった。






「ん、思ったより食べやすいな」

「そうだね! わたしも、たくさん食べちゃう!」


 クールな外見のこのは。

 そんな彼女はいま、蕩けた顔でほっぺを押さえている。

 かく言う俺も、思った以上にビッグパフェを食べられていた。これなら、完食も夢ではない。そう思って、ふっと息をついた時だった。



「ねぇ、和真?」

「ん、どうし――」



 不意に、このはに声をかけられて。




「はい、あーんっ!」




 生クリームをすくったスプーンを、差し出された。

 その奥では彼女が優しく、目を細めている。

 天使か、この子は……。



「(って、そうじゃねぇ!?)」



 待て、落ち着くんだ。

 これって、そういうことだよな。そう思い、硬直していると――。



「和真? やっぱり、嫌?」



 このはが、寂し気にそう口にした。




「いただきます!!」




 ――その瞬間、俺はスプーンに食らいついた。

 このはは驚いて目を丸くするが、直後に頬を赤らめる。そして、



「えへへ、ありがとう!」



 そう、感謝の言葉を述べるのだった。


「い、いえ。どういたしまして……」



 あぁ、本当に顔が熱い。





 思わぬ形で訪れたその場所で。

 俺たちは、互いにパフェを食べさせ合うのだった。



 

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