第2話 ママしゃんを守るために。

「キッちゃん、おはよう!」枕元で一緒に寝ている僕に、目を覚ましたママしゃんがおはようのキスをしてくれた。

僕はまだ眠くて目が閉じそうになる。すると、ママしゃんは僕に毛布を掛けてくれた。


「まだ寝てていいよ、キッちゃん。」…はっ!ダメだ!!僕はママしゃんを守ると決めたんだった!!大好きな人を守る為に起きなければ!!


「キャンキャン!!」「え?起きるの!?」部屋を出ていこうとするママしゃんに、僕は「起きたよ」の合図。「キッちゃん、ご飯にしよっか!」やったぁ!!ママしゃんが作るご飯は世界一美味しいんだから!「キャンキャン!」「はいはい(笑)一緒に下に降りようね!」ママしゃんは僕をだっこしてくれ階段を降りる。


「待っててね。」僕は待ちきれずにオモチャをブンブン回し、「フガッフガッ」と言いながらごはんを待った。


「キッちゃん。待て!」シーーーーン。沈黙の儀式。「よしっ!いいよ!!」バクバクと食べ出す僕の頭を撫で、嬉しそうに笑うママしゃん。全部食べると喜んでくれるから、今日も僕は残さず食べる。


「わぁー!キッちゃんおりこう!!よし!お散歩行こうかっ!!」「キャンキャン!!」やったぁ!!我慢していたウンチもおしっこも…そして見知らぬお友達の匂いも。外は誘惑がいっぱい。最近はお散歩が大好きでたまらない。


お散歩の時間帯は「夕方の4時」と決まっている。

この時間帯は、僕にとって幸せなご褒美の時間なのだ。


あっちに寄り道してはこっちに戻りの繰り返し。長い時間の散歩でも、ママしゃんは嫌な顔1つせず、僕がテクテク歩きながらチラッとママしゃんの顔を見ると、ママしゃんはいつも僕に笑顔だ。


そんなママしゃんが大好きなのに…。


「ごめんなさい…」「このクズ女!!」「痛いっ!!ゆうたさん、辞めて!!」今日も僕はケージの中。

ママしゃんは男の人が帰ってくると、直ぐ様僕をケージの中に入れる。

僕はママしゃんを守りたいのに、僕がママしゃんに守られている。

僕が、男の人に蹴られたりしない様に…。


男の人は、ママしゃんの髪の毛を引っ張り、ママしゃんは床に倒れる。

男の人はママしゃんの顔を何度も叩き、ママしゃんのお鼻から赤いものが出る。


「ギャンギャン!ギャンギャン!!」僕は吠える事でしか男の人の気を引く事が出来ない。

ママしゃんを守れない…。


僕はある事に気が付いた。男の人は何かを飲むと更に人格が変わる。ママしゃんへ対する扱いが酷くなる。


そして、今日もママしゃんは泣きながら僕をケージから出し、「ごめんね、キッちゃん。」と謝る。

ママしゃんは悪くないんだよ!?

悪いのはあの男だっ!!次こそは噛みちぎってやる!!


「クゥーン…クゥーン」ママしゃん、大丈夫!?僕はママしゃんの涙をペロペロと舐めた。

すると、ママしゃんは笑顔に戻り「ありがとう、キッちゃん。大好きだよ。」そういって僕のお口にキスをしてくれた。


ぼ、ぼぼぼ僕の初めてのファーストキスだった。

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