第12話 八月 二十四日


俺は先輩にカラスのやり方を教わった。

大体サラリーマンとか観光客に変装して、隣にビルがあったらそこからみんなを見下ろしたりする。ビルがなかったら近くの角で誰かと待ち合わせているふりをする。

そして、ずっとずっとみんなを観察する。

俺もこうやって観察されていたんだろうな。

お父さんに出世した事をなかなか言えずにいた。

「ねえ、父さん、俺、カラスになったんだよ!」

「よくやった息子よ!」

「好きだよ父さん」

「愛してるよ息子よ」

ぶっちゅー。

変な展開か説教される展開しか思い浮かべられなかった。

それでもお母さんに言う事は出来た。元々サッカー部の嘘が原因でバイトを始めたんだし、せめてバイトだけでは出世した事を伝えたかった。

「えっとー、雨宮はまたさぼってんな」

×。




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