7 アフマド


受付のにいちゃんの名はアフマド。

アフマドが持ってきた携帯、ガラケー31台。

「電池は全て新品に取り替え、一晩充電しておいた。全てシムいれて通話確認し、国外に通話できないかも確認した。一台一台な。さあ、どれでも確認してくれ」

俺は一台だけ取り、他の携帯にかけてみた。携帯の裏にその番号のステッカーが貼られている。

ちゃんと通じた。日本への国際通話を試してみた。ペルシアのあと英語で国際通話がキャンセルさているとのアナウンスが流れた。

「更に!電話帳を見てみろ、全ての電話番号で登録してある。番号を名前に変えればいいだけにしたんだ。大変だったぞー」

「おお、すごいな、、、コレは凄い、、ありがとうアフマド!!おまえ、凄いやつだな!!」

「へへ、、いや、なんてことないさ、、」

おお、”のっったっとーる”、初めて生できいたわ、、

一台だけの確認で、俺はアフマドに全額払った。


こういう、信頼しているからな?、というのを見せつける場合が必要なときにはやるのだ。いつでもいいというわけではない。そして、相手もそれをわかっている。それが大事なことだ。



ジープは宿に置いて、全員トラックで行く。

宿でデカイペットボトルの水を人数分買って配布。

彼女たちは今日も顔にもスカーフを巻いている。日焼けよけにもなるし、と前向きにやっているのが助かる。


トラックはアフマドが運転するという。

「うちにもっとデカイトラックあるんだよ、たまに親父に頼まれていろいろな街に仕入れに行ったり納品にいったり、さ。」

なにをやってるんだろう?こっちの連中はできる者達はなんでもやるからな。




出発後、ほどなく遺跡入り口の駐車場に到着。

チケットは俺達の分だけでいいそうだ。

「俺は街の人間だからいーんだ」とのこと。


遺跡の地図を人数分貰った。

「俺が案内するから全員で回ろう!」とアフマド。


ゆっくり、全員で見て回った。

言われていたとおり、壊滅に近い。

それでも直そうとしているのが凄い。


女子達も、あまりの惨状に声も出ていなかった。

地震国の者だから、その怖さがわかる、ということもあるだろうな。


でかいから回るのに結構疲れそうだが、彼女たちがグロッキーする前にアフマドが、、

「今日はこの辺でかえるか?皆疲れたろう?」と言い出した。


こういう場合は突っ込まないのが礼儀。

「そうだな、ありがとう、んじゃ引き上げよう。」と俺。

アフマドも俺がアフマドの顔を立てた、とわかっているのだ。


帰りに、アフマド推奨スイーツの店に寄った。

女子は女子部屋で食べる。

俺らは外のベンチ。

彼女らに結構な額を渡してあるので、実質食い放題になっているはずだ。一時間は軽く越えるだろうと思う。

それは予測できたことなので、1班班長に「焦らずゆっくり食べればいい。俺らは小一時間散歩でもしてくるから」と伝えておいた。


ナッツが旨いと聞いたが?とアフマドに振ると

タクシーを捕まえて市場に連れて行かれた。

「トラックを停める場所ないからタクシーだ」

とのこと。


建物の中のバザール。ヒンヤリしていて気持ちいい。

歩き回っているとアメ横のような匂いがしたりする。


ナッツ、木のみ、乾燥果物などの店屋がある。それの専門店。

「ナッツの専門店なんか日本や外でも見たこと無かった。」

と俺が驚くとアフマドは喜んだ。


「食ってみな?」

と山からひと粒とってアフマドが差し出してくる。店員を見ると頷く。

食べてみる。

アフマドは次から次へと差し出す。

・・

「ありがとう、もう大体ほしいの決まった、、」と、そこそこにして遠慮する。

10種類くらいを、2キロずつ。男2人いるので余裕で持てるだろう。

ナッツなので流石に安くはなかったが。

でもこれは、ここまで来られた女子達を慰労する一部にはなるだろう。


次にアフマドは俺を服屋に連れて行った。

それも女性向けの。


「ゴロー、君の部下たちの服は一着づつしかないだろう?」

流石に気づいたか、、全員昨日と同じ服だし、衣服らしい荷物ももっていない。

着の身着のままで逃げてきたからな。


「こっちの服は大まかなサイズで済むものもある。下着もだいたいだろ?

だから君は君の部下たちの服を揃えなければいけない。」

・・

「あの、彼女たちをここに連れてくるのはだめなのか?」

「それでもいいが、また長くなるぞ?」

流石イランの男、妻や娘に結構あまいっていうらしい。

普通、こちらの男たちは”待つ”のだろう、こっちは皆結構気が長いし。

なので、待たないように工夫することをしているんだろう。この、俺らが買っいく、というもの、工夫のそれだろうな。

ただ、相手の好みを無視しているというとこがあるが、、


「いや、、でも、、彼女たちにも好みが在るだろう?」

「んー、、隊長がわざわざ買ってきてくれたんだ、そちのほうが嬉しいんじゃないか?」


「よし、君の恩恵のモノを使おう。」

と、携帯で1班長に電話する。

「隊長が買ってくれたモノを着たいです。」

その声の後ろから、

「なにー?隊長何か買ってきてくれんの?服?下着?隊長が買ってくれたんならソレ着ますー!」

わたしもー、わたしもーと、何人も。


「だろう?」

と得意げなアフマド。


なぜわかるんだろう?すごいな、、イラン男って皆こうなのか?それともアフマドが?


店員に手伝って貰って柄を選んだ。サイズは俺の記憶で大体合っているはずだ。皆体が締まりに締まって兵士となっているので、そうそう違いは、身長以外にはないし。




結局、大体合っていて、喧嘩もせずにうまくワケてくれたらしい。

下着は、パンツだけは買えたが、、上はサイズもあるだろうし、、無理だった。

「仕方がないですね、あとで受付のお姉さんに聞いてみます」1班班長。


それから採寸に来て、翌朝にモノを納品してもらっていた。

こっちの者達は働き者か。

いや、商機を逃すな!というやつだろう。


アフマドに、女子に良さそうなボストンバックを用意してもらった。

皆モノが増えるだろうし。

お揃いだと傍から見てわかりやすいのでおそろいに。でも取っ手に色分けリボンで、1班から5班にわかるようにさせた。


「で、航空券は必要ですか?お客さん♪」アフマド

・・・その手があったか、、

「いや、何”その手が合ったか?!”みたいな顔してるの?」アフマド


「・・・なんとなく陸路で行くもんだと思い込んでいた、、、」俺

「・・・まぁ、、よくあることだよ」アフマド

いや、ないんじゃね?めったに無いと思うぞ?俺飛行機嫌いだし。


「フォロー、ありがとう、、、できれば頼むわ、明日とかできるか?ビザが7日しかないんでな、も4日目だ」

「じゃ、延長できるよう、親父に手紙書いてもらうわ」

「いいのか?そこまでしてもらって?」

「まぁいんじゃね?」

「ありがとう、ほんとに助かる!!」


で、女性受付に頼んで1班長に全員のパスポートを持ってきてもらって、俺のとあわせてアフマドに渡す。

航空券買うときは必要なのだ。



夕方遅くに航空券が届いた。



翌朝、アフマドがトラックで空港まで送ってくれた。トラックとジープはアフマドに進呈した。

「トラックは、紋章が書かれているから、一応向こうに返しに行くわ。」

とのことだった。

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