翔吾の日常

この話は飛ばしても問題はありません。


「ただいまー。」

俺は、家に帰ったら軽く声を張り上げるように挨拶をしている。親が挨拶はしっかりするようにと小さいころから躾られていたからだ。おかげで、先生や地域の知り合いの人と目が合うと、自分から挨拶するようにもなった。

「おかえり。どこ行ってたの、遅いじゃない?」

落ち着くようで少しうっとうしく思ってしまう低いようで高い母親の声が、キッチンから聞こえてきた。翔太が帰宅してから一時間以上過ぎて俺が帰ってきたのだから、心配するのも当然だ。

「うん、ちょっとホームルームが長引いただけ。」

返答するのが面倒くさく感じたので、そっけなく言葉を返し、部屋に向かった。初日は丁寧に扱っていた学校規定のバックを床に投げ捨て、台所で手を洗い、私服に着替えたら、部屋の椅子に座り一息ついた。だいたいその頃に、母親から弁当箱を洗うようにと言われるので、水筒と弁当箱をもってキッチンへ向かう。それが終わると、風呂掃除をして湯を沸かしたらやっと自由の時間が生まれる。部屋に戻るとまた、深いため息と同時に椅子に座った。

バッグからスマートフォンを取り出し、円周率二十八桁を打ち込みパスコードを解除する。プライムビデオを開きお気に入りのアニメの新話確認をするのが俺の日課だ。アニメが更新されていると、その日のうちにすべて見るのだ。たまに、昔に放送されたアニメで面白そうなものが見つかると、その日の自由時間を基本二十五話分すべて削ってまで見てしまう。たまに、三期までにわたる長作を見つけてしまったときは、寝る時間を削ることもある。生憎、今日は何も更新されていなかったので、アプリを閉じて、いろいろなゲームをして遊んだ。

今、君は冒頭で語った俺の意気込みと矛盾していると思っただろう。安心して読んでもらいたい。もちろん、有名大学に進学なんて夢のまた夢の話のことだと思っている。だが、俺は本気を出せば、どんなことでも楽勝なのだ。と言いつつも、第一志望高校に落ちた俺がこんなことを言っても説得力の欠片がないのは承知のことだが…いつか未来の俺が本気を出してくれると信じて、今は、楽しむ……うん…、楽しむことを優先すべきだと思っている…ま、まあ、まだ高校1年生なんだし、大丈夫、きっと。

六時半を過ぎる頃に、親にお風呂に入れと言われるので、鬱陶しい声が聞こえる前に、風呂場に行くことにしている。風呂場ではいつも鼻歌を歌っている。たまに、即興で良いフレーズが思いつく時があるのだが、風呂を出るとすぐ忘れてしまう。風呂を終えると、キッチンのカウンターに母が作った料理が並べられ、それを俺が食卓へ並べていく。配膳し終えると既に父親は食べ始めているが、あとから俺達も席に座り、いただきますと声をかけて食べ始めた。家族の夕食はすごく賑やかだ。母親の職場での面白い人の話や、翔太のアニメ語り、父親の職場での話など色々なことを話す。父親の話だけたまに重い話だったりするが、みんなほぼ楽しい話ばかりだ。

夕食を終えると、部屋に戻りまたスマホを手に取りゲームをしたりプライムビデオを漁ったりする。そんなダラダラとした放課後をすごし、俺の一日は終わるのだった。


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