ジュブナイル

六塚

第1話

生きることに疲れてしまった機械がいました。


彼は世の中を憎んでいました。それは決して世の中せいではなく彼自身の欠落のせいだったのですがそれを受け入れることはとても酷なことでした。


彼には欠けている部品がありました。その部品がなければ機械の寿命は長くはありませんでした。

周りよりも長く生きられない自分を毎日呪って生きていましたが、そんな生活にも嫌気がさしてきました。


機械は書庫で見つけた「自死」というものに縋りました。遠い昔、人間は追い詰められると自分で自分の命を絶つことがあったようです。


機械は風呂場からタオルを一枚持ってくるとそれで首を一括りにし両端を掴んで思い切り締め上げました。


首のボルトが圧迫され軋みます。


胃などないのに胃液が込み上げるようです。


これでは死ねない。


そう思いました。


ただ、苦しいだけです。


今を生きる痛みと同じだけの痛みがそこにはありました。


機械はもう少しだけ生きてみようと思い、タオルを首から解きました。

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ジュブナイル 六塚 @murasaki_umagoyashi

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