7月18日


 生まれて初めてのカノジョに、一緒に帰ろうって声をかけたら断られた。

 心なしか元気がないように見える。

 なんだろう、気になるので、夜に電話をしてみた。



「もしもし」


『……こんばんわ』


「あ、出てくれた。今日、どうしたの?」


『……何が?』


「……いや、一緒に帰って、くれなかったから」


『……何でもないわ、そういう気分じゃなかっただけ』


「……何かあったの?」


『……あったけど、あなたに話したくはないわ』


「えっ?」


『……』


「……キミがイヤなら仕方ないけど、僕、一応彼氏なんだし、何かあったなら、話して欲しいな」


『…………ふぅ』


「……」


『あなた、同じクラスに、仲の良い女の子いるわよね?』


「……? ああ、アイツね。小学校も中学校も一緒だから。昔よく遊んでいたし」


『……それは、いわゆる元カノってやつかしら?』


「えっ? ……いや、違うけど」


『じゃあ、身体だけのカンケイってやつなのかしら?』


「だから、なんでそういう発想になるのさ」


『……彼女、私と違って、元気で明るいわよね』


「…………元気で明るいっていうか、バカなだけだと思うけど」


『…………おやすみなさい』


「ちょ、ちょっと、まだ切らないでよ」


『おなかすいたわ、眠いわ』


「それ、雪山だったら死ぬやつだから」


『……』


「…………もしかして、ジェラシー?」


『――えっ!?』


「……いや、僕が他の女の子と話したりするの、イヤなのかなって」


『…………………………………………別に』


「イヤじゃん」


『……そんなことないわ、私、そんなにめんどくさい女じゃないわ。……ただ――』


「ただ?」


『あなたが彼女と話しているのを見ていると、すごく不安になるの。楽しそうに笑っているあなたを見ていると、私以外の人に笑顔を向けないでって、どうしてもイライラしてしまうの。……こんなこと、初めて、自分でもどうしていいのか、わからないわ』


「……」


『……』


「……ゴメン、ちょっと無神経だったね」


『……そんな、謝らないで、おかしいのは、私だから』


「……いや、おかしくないよ。僕だって、キミが他の男の子と仲良さそうにしているのを見たら、同じ気持ちになると思うし」


『……あなたも?』


「たぶん、ね」


『そう……』


「……安心して、アイツとは、本当になんにもない、ただの友達だから。そもそも、アイツ、同性愛者だし」


『――えっ!?』


「うん、他校に、彼女いるし」


『……そ、そうなのね』


「うん、――あ、よかったら今度、一緒に三人でご飯食べようよ。バカだけど、いいやつだから」


『……わ、わかったわ。ちょっと怖いけど』


「――それよりさ、今週末、また遊びに行かない? 前に、おいしいとんかつのお店を見つけたって言っていたじゃない」


『ああ……、ごめんなさい、今週末は難しいわ』


「……えっ? 何か予定があるの?」


『ええ、お兄さんと、買い物にいく約束があるの』


「……お兄さん、いるんだ」


『ええ』


「……仲、良いんだ」


『……ええ、まぁ』


「…………フーン」


『……』


「…………おやすみ」


『……えっ、どうして急に切ってしまうの?』


「………………別に」


『……』


「……」



『もしかして、ジェラシーかしら?』


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