第4話 イルミの誘い

 「新人ちゃんちゃん、この箱をその棚に!」

 

 『はっ…はい。』


 モノクロはキラから誘導され、ある倉庫に来ていた。視界は暗く、赤髪のイルミが角灯ランタンを片手に作業している。


 「君、器用だね…奇妙だねぇ。」

 『そうですか?』


 俺は器用ではない。

 ただ、消しゴムとして発送されら前に、よく倉庫整理をするおじちゃん達を見ていたから、ある程度の動きはお安い御用だ。


 「んで、新人くんくん…例の少女救いたいのん?」


 『はぃ?』


 あまりに突拍子もない問いに、間の抜けた返事になってしまった。


 「あの子、生きてても救えないと思うよ。」


 さっきまで冗談を言っていた彼女とは一変して、口調も淡々としている。


 『なんでそんな事、分かるんですか。』

 

 モノクロが俯くと、イルミが右肩にとんと手を置いた。

 

 「揉め。」

 『ん?…今なんて言いましたか?』


 「揉めよ……肩」

 『肩…ですか。』

 「嫌か?…それか、揉むか?…胸。」

 『いやいや…いいです!』


 イルミは小馬鹿にする様に、ニヤついている。

 「イヒヒッ。」


 モノクロはダンボールを冷たい床に敷き、イルミの肩を揉み始めた。

 

 「さっきの話の続きだけど、今の新人くんには救済できない理由が三つある。」


 『三つも有るんですか?』


 「ああっ。一つ目は、所在が特定できない。二つ目は、冒険者じゃない。三つ目は、君が弱すぎる。」


 『そんなに…。こんなに助けたいのに。』


 「だけど、諦めるのはまだ早い。」


 『でも、俺には無理だって…。』

 

 イルミが肩を揉むモノクロの手を握った。


 「言ったでしょでしょ。今の新人君にはってって〜。」


 『いきなり、口調変わるなぁこの人。』

 「ズバリ問おう…冒険者にならないかねかね、新人きゅん。」


 イルミが目を輝かせている。

 モノクロは一瞬迷ったが、口が勝手に先走っていた。


 『冒険者になりたいです…そして強くなって、バルバラを救いたい!』


 「よし、よくぞ言ったった。」

 『それじゃ、さっそく…』


 イルミが意地悪そうに、人差し指を突きつけて、左右に揺らした。



 「チッチッチ。甘いぞ新人ちゃんちゃん。後で、リーダーに相談するからまずは、この目の前に積み上がった木箱を五百箱、あの棚に積載してね!」


 『本気ですか?!』


 「まぢまぢ…ガチファイトボーボー!」


 『何言ってんだこの人。』


 この後、ようやく積載地獄を終え、イルミがキラに相談を持ちかけてくれた。次の日、モノクロが目を覚ますと、すぐそばにイルミが待機していた。


 『朝から何の用ですか…イルミさん。』


 「新人くんくん、ギルドへいざ参ろうぞ!」

 

 『今からですか?!』


 「そそ。服は私が用意したから、早く支度してしてぇ!」


 モノクロは言われるがまま、早急に身支度を済ませ、謎の建物から出た。

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[水曜投稿]消しゴムだった俺が人間になった理由。 いろ蓮 @yamai-nakabu

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