第45話 ローパワー=ハイパワー!

「私は神宝龍カンダカラノオロチイクタマを手札から捨てて効果発動。イクタマ以外の神宝龍カンダカラノオロチと名のつくモンスターを手札に加えるよ」


「純粋なサーチ効果か」


「この効果で神宝龍カンダカラノオロチマカルカエシを手札に。さらにマカルカエシを捨てて効果発動。墓地のイクタマを対象として選んで、場に復活させるよ?」


 空中にくるりと勾玉が弧を描いて飛び、光の軌跡を残して消えた。

 イクタマという玉。それに死者をよみがえらせる力があると伝わるマカルカエシ。えーっと、なんだったっけ。10種類ある日本神話の宝。


 そうだ、十種神宝とくさのかんだから! 鏡、玉、剣から成る神々の宝。それがモチーフとなっているのか! 俺の世界の転生者がこの世界のカード開発に伝わったんだな!?


 これはエンシェンテラーみたいに、厄介そうな匂いがぷんぷんとして来る。少なくともこちらの行動を邪魔してくるモンスターが10体はいるのか。


「効果に対する発動は何もないぞ」


「じゃあマカルカエシの効果で墓地からイクタマが復活。この効果で場に出たモンスターはエンドフェイズに手札に戻るよ?」


 白くて大きめな勾玉を抱え込んで浮遊するトカゲが現れた。体長は幼女のウルティと同じ程度だろう。

 ふよふよとしていて、見た目からはとても高い戦闘能力を持つとはとても思えない。


――――――――――――――――――――

神宝龍カンダカラノオロチイクタマ

コスト

APアタックポイント1000

BPブレイクポイント

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「だけど最後に手札に戻る……そうか、再利用が可能なのか!」


 パワーは問題ではないけど、真の問題はエンドフェイズに手札に戻るというもの。手札に戻ってしまえば、次のターンで再利用が可能だからだ。

 特にサーチ効果を備えたイクタマが手札に戻ってしまうのは避けたいが、俺にはそれを見送ることしかできない。


「うん。そして手札の神宝龍カンダカラノオロチタルタマを捨てて効果発動。このターン、自分の場の神宝龍カンダカラノオロチは戦闘で破壊されず、その戦闘での自分へのダメージは0になるよ」


 この状況で耐性効果? 見る限り低パワーで攻撃なんてしないのだから、発動する意味がないのでは――


「だめ。話は最後まで聞くこと、だよ? さらにこの効果を受けたモンスターが戦闘を行った時、その相手モンスターを破壊して相手に1ポイントのダメージを与える」


「なっ、戦闘もこなせるのか!?」


 まったくの予想外だった。行動制限パーミッション系のデッキだと思っていたら、きっちりとこちらのモンスターを処理しに出てきた! まずい、これだとどんどん差をつけられる。

 ついでに人差し指を口の前にしーっと持ってくるウルティの姿にも心を撃ち抜かれてしまう!


「バトルフェイズ。イクタマでアイアン・ガンナーを攻撃」


 イクタマの攻撃のはずなのだが、アイアン・ガンナーが右腕の銃を連射する。

 しかし、バリアに阻まれイクタマへ攻撃が届かない。そうこうしている内にアイアン・ガンナーは弾切れとなってしまった。

 そうするとリロードするまでの間はイクタマの独擅場だ。抱え持つ勾玉から白い雷が放たれ、アイアン・ガンナーの体は痺れ、軋み、砕けてしまった。


――――――――――――――――――――

朝陽 LPライフポイント5→4

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「うっ、アイアン・ガンナー……!」


「メインフェイズ2へ。私はオブジェクトスキル、神鏡シンキョウ八咫鏡ヤタノカガミを発動するよ」


 ずっしりと重そうな青銅の台座に乗った、鈍く輝きを反射する古びた丸い鏡。だけど、その表面には景色が何も映っていない。俺の方に面を向けて、一体何をその映らない表面で映すというんだ?


「さらにもう一枚。オブジェクトスキル、神宝龍祟カンダカラノオロチタタリを発動」


 もう一枚は顕現する事象がないのか、こちらに表面を向けたカードが場に出現する。

 暗雲から降り注ぐいくつもの雷が描かれていて、どうにも攻撃的なイラストだと感じてしまう。何らかの無効化や攻撃をするカードだろうか?


「だけど、これで今の君の手札は0枚だ! 神宝龍カンダカラノオロチの効果は使えない今がチャンス! 俺はセットしていたカードを発動する!」


「セットカード? さっきの攻撃で使わなかった……」


「伏せカードオープン、ソニックスキル、エレメタルズ・セグメンテーション! このカードは相手ターンでのみ発動できる」


 よし、八咫鏡ヤタノカガミ神宝龍祟カンダカラノオロチタタリは何の反応も見せない。これならセグメンテーションの効果は通る!


「俺はデッキから元素鉄英エレメタルスと名のつくモンスター3種類を選び、相手に1枚ランダムで選ばせる。選ばれたカードは手札に加え、残りの2枚は墓地に送る!」


「むぅ? 私に占いさせるの? いいの?」


 どことなく喜びを感じる声だ。ウルティは今、ブレイク・コードでの敵なのに占いができることで喜んでいる。本当に占いが好きなんだな。


「俺は元素鉄英エレメタルスであるウッド・ハンマー、ミスト・ゴースト、ダーク・アベンジャーをデッキから選択。これをシャッフルして……この三枚からどれか選んでくれ!」


「うーん……じゃあ、こっちから見て一番右のカード」


「右、ね。わかった。じゃあそれ以外は墓地へ送られる」


 ……うん、ウルティの強運っぷりはすごいな。3枚の中で唯一攻撃能力を持たないミスト・ゴーストが俺の手札に加わってしまった。しかも、ミスト・ゴーストは墓地にいないと効果を発揮しない。

 手札を捨てて復活できるダーク・アベンジャーがいるから別に手札に来てもいいのけど、ぞっとするぐらいに的中させてきたな。


「じゃあ私はターンエンドするね。ただし、自分のエンドフェイズに神鏡シンキョウ八咫鏡ヤタノカガミの効果を発動。デッキから神宝龍カンダカラノオロチと名のつくモンスター1体を手札に加えるよ」


「エンドフェイズでのサーチ効果!? 厄介だな……」


「この効果で神宝龍カンダカラノオロチクサグサノモノノヒレを手札に。さらにマカルカエシの効果で場に出たイクタマが手札に戻るよ? これで本当にターン終了」


 あれだけモンスターの効果を発動させたというのに、ウルティの手札は2枚まで回復し、2枚のオブジェクトスキルで盤石の備えを築かれてしまった。

 しかもクサグサノモノノヒレという神宝龍カンダカラノオロチも絶対にこちらを邪魔するカードだよな……。


 こちらのカードは非力なミスト・ゴースト1枚。さて、ドローした後によく考えなければ!

――――――――――――――――――――

朝陽 LPライフポイント4 手札1枚(ミスト・ゴースト確定)

●モンスター

なし

●スキル

なし


ウルティ LPライフポイント

手札2枚(イクタマ、クサグサノモノノヒレ確定)

●モンスター

なし

●スキル

神鏡シンキョウ八咫鏡ヤタノカガミ

神宝龍祟カンダカラノオロチタタリ

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