19.僕はお前なんて知らない

「今日はどうされましたか?」

別になんもない。

連れて来られただけなんだ‥‥。

ぬぅ…。

「はい。朝から鼻水が出てるみたいで…昨日まで出てなかったんですけど…。」

「ちょぉ~と、お顔触るよぉ~。‥…あっはいはい。出てますね。」

触んな!

ちょぃ。

「あっこら!先生の手を押さえないの!」


「お母さん大丈夫ですよ。私は押さえますんで!久しぶりぃ~覚えてるかなぁ~?

いつみても可愛いねぇ~あーちゃ~ん!」

お前‥…。

誰だ!

知らない!

僕の名前は「あーちゃん」じゃないし。

その臭い手袋も嫌いだ。

触るな!

シャァーー!

「すっすみません!怒らないの!」

「いえ大丈夫ですよ。慣れていますんで。」

「ほんとうにすみません。病院が嫌いみたいで‥…。」

「みんなそうですよねぇ~。」

いやっ‥嫌いじゃないぞ‥‥。

大嫌いなんだ!

そもそも、知らない奴に触られるのは嫌いだ。

僕に対して猫撫で声で話しかける奴は嫌いだ。

匂いのきつい奴も嫌いだ‥…。

お前は3アウト!

ふんっ!


「じゃあ、ちょっと血を抜いて検査しましょうか?準備して。」

「はい。あ~ちゃんちょっと待っててね!」

嫌だって!

ぴょん!

「あっ!あはははは!お母さんによく懐いているんですね!」

「すみません…。ほらっ、そんなにしがみ付いてたら先生お仕事出来ないでしょ?降りて?」

やだ!

僕の仕事は、ママにしがみ付くことだ!

グリグリッ!


「すっすみません。すぐに降ろしますんで。ほらっ!降りて、降りなさい!」

やだもん!

「先生準備が整いました。あら?あ~ちゃん、可愛い!ママにしがみ付いて!」

うるさい。

変なあだ名で呼ぶな…。

なにが可愛いいだ!

そんなに僕の事が可愛いなら、手に持ってる物をどっか持っていけ!

ぬぅ~マ~マ~ッ!

やだよぉ~!

「大丈夫!ママが側にいるからね?ほら?先生の迷惑になっちゃう。」

「大丈夫だよ。ちょっとチクッってするだけだからねぇ~。」

うぅ‥‥。


「偉い偉い、降りてくれてありがとう。では、ちょぉ~と‥‥。」

(チクッ!)

うっ…。

痛い‥‥先生のちょっとは、全然ちょっとじゃない事を僕は知ってる‥‥。

けど…これ以上ママを困らせるのは良くない。

ぬぅ…くずっ…。

「はい!終わったよぉ~!偉かったねぇ~。」

うぅ~痛かったよぉ!

マーマー!


「あ~ちゃん!すごい、よく頑張ったねぇ~。」

ナデナデッ。

‥‥…。

お前なんて知らないって僕は言ってるだろぉ!

がぷぅ!


「あぁー!すみません!こらっ!看護師さん噛んじゃダメでしょ!」

ふんっだ!

こいつが横入りするからだ!

僕はなにも悪くない!

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