第12話 戦い2

 まずいわね...思ったより、下っ端が多い。

 それほど、この“ウワサ”は力をつけてきたのだろう。

 ...暁月さんは大丈夫かしら?


 チラッと様子を見ると、体力が少なくなってきたのか動きが鈍くなってきている。


「朔来、朔磨、啓、暁月さんの動きが鈍くなってきたから危ない時はよろしく」


 そう声をかけるとオッケーとの合図がくる。


「三來ちゃん...ごめん、ありがとう!」

「体力が少なくなってきてるのはみんな同じだからあと少し頑張って」

「うん!」


 所々擦り傷を負っている彼女を見るのはすごく心苦しかった。

 だけど、後もう一踏ん張り。

 ハンマーの音と衝撃が走る。

 それに加え、奴らの苦しい声が聞こえてきた。


「最後は俺らだ!!」


 トドメの攻撃、というべきなのか。かなり範囲が広そうな攻撃なため少々遠くへ暁月さんと朔来を誘導。終えたその瞬間、流れ星のように弓矢とポーションが降り注いだ。

 ざっしゅざしゅと突き刺さるような音と、ジュっという何かが溶かされているような音が次々と聞こえてくる。


「...暁月さん」

「三來ちゃん...」

「...どうだったかしら?」


 ワナワナと震えている彼女。あんな地獄絵図は滅多にないが、今回ばかりはものすごく刺激が強すぎた。震えてしまうのもなくはない。

 私の手には一冊の本。あいつらを倒した後に回収したアイテムだった。


「...無理はない。あんな姿を見たら、誰だって怖がってしまうよ」

「いつもああいうやつらと戦っているわけじゃぁないが...今回はマジでヤバかったなぁ...」

「まさしく現代の地獄絵図、ね」


 ワナワナと震えている彼女を、私は抱きしめた。


「ごめんなさい...怖い思いをさせてしまったわ」

「三來ちゃん...私こそごめん。足を...引っ張ってしまって...」


 足を引っ張られたとは全く感じることはできなかった。

 こんな状況で、尻尾を巻いて逃げず、体力が少なくなっても一人だけ休まず、最後まで戦ってくれた、そんな彼女は謝らなくていい。むしろ、良く頑張ったと言えると思った。


「暁月さんは良く頑張ったと思うわ。だから...そんなに謝らなくていい」

「...うん。ライの言う通りだよ」

「お前は頑張った。あんなおっそろしいやつと戦えたんだ。自身持っていいと思うぞ」

「それに、暁月さんのお陰で僕達は“本”を手に入れる事ができた。いなかったらもっと時間がかかっていただろうし、誰かが死んじゃっていたかもしれない」


 暁月さんは、私達を見て、本当?と言う。


「私...みんなの、力になれた...?」


 頷いた。いや、頷くことしかできない。すると、いきなり私達を抱きしめてありがとう!ありがとう!と泣きながら言った。

 ふふ、感謝しなくちゃいけないのは私達なのに、ね。

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