第48話 始まる永劫

「……やあ、剛。目が覚めた?」

「イブキ?」


意識が覚醒し、視界に久々な顔が映る。

優しく微笑むイブキだが、その前に頭に別の光景が映し出された。


「っ……ああああああっ!!!」


あの時上げられなかった叫び声が響き渡る。

文字通り何もないこの空間は音を一切反響することなく、地平線へとこの叫びを葬った。


「そりゃああんな死に方をしたんだ、無理もない。落ち着くのを待っておくよ」


イブキなりの気遣いだろうか。

それに甘えた俺は、これまでにないくらい荒い息をもいちどこれまでにない程長い時間をかけて整えた。


「さて、君にはいくらでも繰り返す権利があるんだけど……どうするんだい?」


問いかけ。

あの無惨な死に方の後では心が折れたかもしれないと思ったのだろう。

けど、答えは固まっている。


「やるよ。何度だって」

「……ああ、そう言ってくれるって確信してたよ」

「分かってたのか?俺の答え」

「まぁね。僕は、神様みたいなものだと思っててくれれば良いよ。何でも分かるし、何でも出来ちゃうんだ」

「……ますます分からないな、イブキの事」


神様みたいなもの?

イブキ自身の発言からして全知全能ってのがイメージとしては近い……というかまんまそのものなのだろうか?


「なに、いずれ分かるよ。今すぐ教えても良いけど、君には僕についてよりもっと集中して考えたい物事があるだろう?」

「まぁ、確かにな」

「どうでもいいような事ならさておき、そうじゃない情報を伝えるのには然るべきタイミングってものがある。けど、そのタイミングが来れば教えることは約束しよう。僕はあくまで対等に、お互い損を被る事なく君と接したいからね」

「ひとまず、今の目的を優先しろってことか」

「そういうこと。あと、君の現状に対する直接的な攻略法とかは教えられないルールなんだけど、そのヒントくらいなら教えてあげられるから教えるね」

「そんなのがあるのか?」

「うん。……少なくとも今の君にとって、戦う相手は決してレボルブやその構成員じゃない。それらとの戦いは、所詮真に戦うべき相手と戦うための手段でしかないんだ」

「……前より遥かにヒントが分かりにくくなってないか?」

「これに関してはヒントをあげすぎるのも良くないからね。剛がある程度自分で道を見つけるからこそ意味がある。このヒントは、そのささやかな手伝いだよ」

「そっか。でも、ありがとう」

「どういたしまして。何か他にある?」

「他に……他に……ああ、そうだ」


そういえば、めちゃくちゃ気になってる事があったんだ。


「前もなんだけど、俺が死ぬ前に絶対女の人が俺の目の前に現れるんだ。何か知ってたりするか?」


それを聞いて、イブキは若干俯いて表情を曇らせた。

……何だ?何か関わりがあるのか?


「……さぁ。僕は、何も知らないな。とにかく行きなよ。愛しのお姫様が待ってるよ」

「待っ……」


パチンッ


待ってくれ。

そう言おうとした途端にイブキが指を鳴らした。

その瞬間、俺の意識はプツンと切れた。


「……だから、言ったろう?剛。伝える情報には然るべきタイミングがあるってさ。……それについて知るには、あと百年は早いよ」

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