出発したときと比べてわずかな軍人の数に、国民は不安がっていた。

 最初は北方に隊を残してきたと迎えた国民には言ったが、ゼロやアルルたちにうそくわけにはいかなかった。

「アザト国王は、雪崩なだれに巻き込まれて亡くなりました。

 他の三〇〇人近い軍人も同様です」

 イェードは暗澹あんたんたる思いで、様々に予想していた通りの反応が帰ってきた。

 ゼロにドレッドは、まだ一〇歳を少し過ぎた程度の子どもだが、イェードの前では気丈に振る舞っていた。怒鳴ることすらしないが、悲しんでいるのは明らかだった。

 アルルは「いつかはこうなるとはわかっていました。少し、早かったですが」

 残念そうに言うと、三人きりにしてくれるように言われ、イェードはすぐに王室を出た。

 出るころには、ゼロやドレッドたちの泣く声が聞こえてきた。


 不甲斐ふがいない、そうイェードは思った。

 ある程度覚悟はしていたが、実際に王かつ、親友を失ってみるとここまで悲しくなるものなのか。

 部下の手前、涙は流すまいとこちらも気丈に振る舞っていたが、ついに決壊した。

 しばらくして気付くと、部下たちはだいぶ離れた場所に居た。

 自分は、理解ある部下にめぐまれたのかも知れない。

 涙を流して落ち着くと、イェードはアザトの遺志いしを引き継ぐためにも行動を起した。

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