外交

 壮年の男は、複数人いる村の長のうちの一人らしかった。

 絶対に暴力を振るわないようにと部下に厳命げんめいしたイェードにアザトは、村の中心部の施設へと案内される。

 建物の中には動物の骨や牙などが飾られており、今でも狩猟生活をしていることがうかがえた。

 イェードがアザトを示し、最も重要な人間を説明する。

「こちらはアザト国王。

 国という、大規模な集団の長を務めている、大変立派なお方です」

「頭の良さそうなお顔をしていますな」

 長はアザト国王を見て一礼し、イェードに向けて話しかける。

「私も話せるぞ」

 流暢りゅうちょうかつ、なまりまで再現した北方の言葉でアザトがそう言って、長が目を開いて驚く。

「これは、驚きました」

「そこのイェードも、元はこの辺りか、さらに奥地からの出身だ。

 肌の色などでわかるだろう」

 白い肌に碧眼へきがんのイェードはより丁寧に説明する。

「かなり様変わりしていて、生まれ故郷がどの辺りか、もはやわかりませぬ。

 この眼で再びみれば違うのかも知れませんが」

 イェードはややしんみりした様子だった。

 談話もほどほどに、話が進む。

 イェードが口を開く。

「我らがゼロ国は、屈強な軍隊を持っています。狩りや戦いを専門に行う者たちです」

竜害りゅうがいなどは、その力があれば防げるかもしれませんね。イェルダントも、最近は特によく見かけるようになりました」

 長がそう言う。

 アザトも自信たっぷりに言う。

「我らは猛獣もうじゅうや魔獣を駆逐くちくし、より人類が住みよくなる世界を作るつもりだ」

「それが本当なら、心強い話ですな」

 長たちはうなずいていた。

「ここもそれなりに大きな集落だが、もっと大きな集落はあるのだろうか?」

 アザトが問う。

「ええ、この集落をいくつもつなぎ合わせたような場所がより北方にあります。

 最近は竜に荒らされていて、戦力が不足しています」

「イェード」

 アザトが言うと、イェードの碧眼がれる。

「わかりました」そう言うだけで伝わる二人だ。

「助けに行こう」

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