国王、アザト

 複数の都市ポリスを持ち、巨大化していくゼロ国をより強固にまとめるべく、アザトは自身と後を継ぐ予定の息子、ゼロに向けて国長くにおさから新しい称号を考えた。

『王』あるいは『国王』

 ゼロ国もゼロ王国と呼ぶように広め、王権国家がここに誕生した。

 賢王けんおうによる治世が、しばらくの間は続くことになる。

 イェードも結婚し長女と、次に長男をもうけた。

 アザトの息子、ゼロはある程度落ち着きがあると同時に、大変に努力家の子どもだった。

 今年で一〇歳になる節目を迎えて。者共ものどもみな喜んだ。

 アザトはそのあまりに高い知性から当初はゼロにかなり厳しく当たったが、その教育態度を見たイェードからそれは厳しすぎるむねと、一般的な知性とはなにかを滔々とうとうと伝えられてからはかなり粘り強く読み書き計算、その他を教えていった。

 次男、ドレッドも学ぶ年になり、頭脳はこちらのほうが若干良い気がしたが、あまり我慢強いとは言えなかった。友人と飛んだり跳ねたりの冒険ぼうけんをするほうがお気に入りのようである。

 いずれにせよ、良き教育者に恵まれたゼロとドレッドは幸せな子どもだったろう。

 ゼロには、新王となる重圧はあったものの、アザト自身が人を見抜く目は確かであり、文官のようなものはかなりそろえていた。

 ゼロは十分な補佐を受け、見聞を広めていった。

 アザトがゼロに対し治世の場での発言を許すようになると、ゼロはじっくり考え、補佐の者と大変に相談してから言葉を選び、アザトに進言した。

 アザトはそれを戯言とは受け取らず、治世に反映するべく考えた。

 アザト自身が考え決断し、行動してしまうのが一番良いとは、アザト本人でさえ思っていたものの、そのじっくり考えた発想は治世の良き改善策となった。

 アザトよりも一般的なものの見方をするゼロで、完全に為政者いせいしゃに向いているわけではないが、頭の良すぎるアザトからすればある種の凡人が徹底的に考え抜いた考えは宝物のようだった。

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