新族長、アザト

 今の族長がそれなりの年齢のため、新しい族長を決める手はずが大きな村で整えられていた。

 イェードをす声もあったが外部の新参者だし、なによりイェードはアザトを推していた。

 穏便に新族長アザト――アザト村が出来ようとしていた。

 イモート退治の件も兼ねて、質素しっそだが晴れやかな宴会えんかいが開かれた。

 うたげの席で、アザトとイェードは面と向かって、村の大規模化について話した。

 子どもを増やすだけでなく、遠くの集落に呼びかけて人を集めよう、という話だった。

 ここは、水の流れが豊かな地で、食料も豊富に取れる。

 凶暴な大型獣なども多いが、最強は人間であることを譲らないイェードだった。

 族長、アザトは副族長にマルス、さらに次なる者としてイェードを指名し、いよいよ盤石な体制を手に入れる。

 最近は、石版用の周囲の岩を取りすぎたため(なにせ湿地帯で、もともと岩が少ない)、塩の交易とは別の方向の、より遠くの村から人や岩などを運んでもらおうという話になった。

 すっかりきずえた(傷跡は派手に残ったが)イェードが、隊を引き連れてその地へと出発する。

 人材に石材を集める。特に後者は、普通は価値のないものだ。

 それが干し肉などと交換できるので、遠くの村は大喜びだろう。

 イェードたちが湿地帯を抜けて、その村にまで進む。

 今回は人に岩を運んでもらおうという話を伝えるためだけだった。

 イェードたちが運んで来るのではなく、運んで来てもらおうという話になる。

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